Vリングとは
Vリングとは回転軸に直接取付けて用いるシール部品です。
例えばスラストワッシャ、シャフトカラー、さまざまなベアリングの隣に設置され、ベアリングに封入されたグリスの流出を防ぎつつ、外部からチリや埃など異物の侵入を防ぎます。
Vリングと類似の役割を果たす部品にオイルシールがあります。オイルシールは回転軸を支えるハウジング側に固定されますが、Vリングは回転軸側に固定するのが大きな違いです。またオイルシールは異物の侵入以外に、潤滑油など機械の内部に封入された流体のシールに用いられます。一方でVリングは主に外部からの異物の侵入を防いだり、グリスのような粘度の高い潤滑剤を保持するのが主な目的です。
Vリングはスウェーデンにあるフォーシェダ (Forsheda) 社が開発しました。そのためフォーシェダVリングと呼ばれるこtもあります。
Vリングの使用用途
Vリングは、回転軸に取り付けられたベアリングに封入されたグリスなどを保持しつつ、外部からの異物の侵入を防ぐために用いられます。特にオイルシールが必要なオイルのような低粘度の流体を封入する必要がなく、工場内で使われる産業用機械など、過酷な自然環境以外の環境で用いられる機械の回転軸部分に適したシール部品です。具体的には産業用機械のスピンドル、ロボット、ギアボックス、OA機器の回転軸などに用いられます。
Vリングでは回転軸の太さは幅広く対応でき、約5mm程度の小型の軸から、約360mm程度の大型軸まで、数ミリ単位で適用可能なほど、豊富なサイズがあるのが特徴です。
Vリングの原理
ここでは原理について、固定とシールに分けて説明します。
まず固定の原理は、回転軸に対するVリング自体の弾性力によるものです。回転軸の軸径よりも小さな内径との締め代の大きさと、Vリングの材質の弾性力によって回転軸への固定力が決まります。
次にシールの原理を説明します。Vリングのシール原理は、リップの先端の回転軸を支えている相手部品との直接接触によるものです。接触圧力は主にVリングのヒンジ部と呼ばれる部分によって発生します。
Vリングはリップ部分が相対運動する部品と直接接触しているため、摩擦力によって動力損失が発生するシール部品です。しかしリップには回転による遠心力が生じ、接触圧力を低下させるように作用します。Vリングによる動力損失は、さまざまな実験によって、シャフト径の大きさに関わらずリップの周速が10~12m/sでピークを迎え、その後減少していくことが知られています。遠心力による接触圧力の低下がリップの高寿命化にもつながるのも、Vリングの特徴です。
Vリングの構造
Vリングは大きく3つの部分から構成されています。まず回転軸への保持力を発生する本体部分、回転軸の相手部品と接触しシール機能を担うリップ部、本体とリップ部を繋ぎリップの接触力を発生させるヒンジ部です。3つの部位がちょうどV字をなすように構成されています。
Vリングのその他情報
1. Vリングの材質
材質は使用環境に耐えうることはもちろん、回転軸へ固定力の発生、ヒンジによるリップの接触力の発生、リップと相手部品との耐摩耗性から考慮されなければなりません。一般的には広く用いられるニトリルゴム (NBR) 、耐薬品性や耐高温性、耐摩耗性などが求められる場合にはフッ素ゴム (FPM) 、その他クロロプレンゴム (CR) 、エチレンプロピレンゴム (EPDM) などが用いられます。
2. Vリングを用いる際の注意点
Vリングを用いる際には取り付ける回転軸、シールする相手部品についても考慮して設計しなければなりません。
まず回転軸の軸径と面粗度です。Vリングとのはめあいによって固定しますが、Vリング材質の弾性が低いため、比較的幅広い設計範囲で使用することができます。
シール機能に大きな影響を与えるのはシール相手面です。リップは弾性力によって柔軟に変形できますが、シール面は回転軸に対して垂直が保たれているほどシール機能を高く維持できます。また平面度も一般的に100mmにつき0.4mm以内とされています。
相手面の面粗度は動力損失やリップの摩耗に大きく影響する因子です。使用するVリングに推奨される面粗度を確認することが大切です。
参考文献
https://www.monotaro.com/s/c-68369/
http://www.tokiwashoji.co.jp/v_ring.html