遮光フィルムとは
遮光フィルムとは、透過する光の量を調節する被覆資材のことです。
15%ほど光を透過するように設計された遮光フィルムから、遮光率ほぼ100%で光をまったく通さない製品まで、幅広く販売されています。主に、野菜・花栽培などで使われますが、畜舎での活用も可能です。
遮光フィルムの使用用途
遮光フィルムは、主にビニールハウスや農業用格納庫、作業小屋などの屋根面や側面に伸ばしながら設置 (展張) して使用します。そのほか、建物の窓ガラスに貼って紫外線対策や日射しよけ、ガラスの飛散防止などに使用する遮光フィルムもあります。
1. 遮光率20%程度の遮光フィルム
遮光率20%程度の遮光フィルムは、夏野菜を育苗する際や、真夏に生育する農作物を直射日光から守るために使います。日射しを必要とするニンジンやコマツナなどの発芽期に使用したり、トマトやキュウリなどの夏野菜が割れるのを防いだりできます。
2. 遮光率が80%程度の遮光フィルム
遮光率が80%程度の遮光フィルムは、育苗期の高温防止・床土の乾燥防止・灌水の省力化が期待でき、暗出芽の作物の発芽に最適です。水稲やタマネギなどの育苗期における出芽・緑化時などに使用されます。
3. 遮光率100%に近い遮光フィルム
遮光率が100%に近い遮光フィルムは人工的に暗闇を作れるので、シイタケの原木栽培などに最適です。また、日朝時間調整を要する菊シェード栽培などにも、遮光性の高い遮光フィルムが利用されます。
遮光フィルムの特徴
長所
遮光フィルムは遮光性と遮熱性を持つため、ハウス内などの温度を下げ、野菜や花などを光や高温から守れる点が長所です。作業場での熱中症予防にも活用できます。
また、遮光フィルムは耐候性と無滴性に優れている点も長所の一つです。長期間に渡り展張したままにできるので、張り替える労力やコストを抑えられます。
短所
遮光フィルムをハウスに展張する作業は一人では難しく、複数名の作業員を要する点が短所です。遮光フィルムは大変薄いので、展張作業の際には遮光フィルムを傷つけないように注意が必要です。
また、遮光フィルムを張る際は高所作業を伴うため、事故防止のためにも慎重に作業を行います。
遮光フィルムの種類
遮光フィルムの種類は多く、各企業から機能性の高い製品が販売されています。
1. 構造による分類
遮光フィルムには、三層のシルバーポリの魔法瓶効果を持つタイプやアルミ粒子層をポリエチレン層で挟んだ多層構造で形成された農POフィルムなどがあります。ほかにも、表が白く裏がグレー系の色などで作られた遮光・遮熱フィルムもあり、内部の温度や明るさを抑えたい作物に最適です。
2. 厚みによる分類
遮光フィルムの厚みは様々で、0.04mmと極薄い遮光フィルムや0.15mm程度などがあり、幅広い活用が可能です。育苗用にトンネル・ベタ掛けで使用する遮光ネットは極薄い傾向にあり、ハウス全体に展張する外張りタイプの遮光フィルムは、0.15mm程度の製品が多く見られます。
3. 幅による分類
遮光フィルムの幅も様々販売されています。一例をあげると、1.35m・1.5mと幅が狭いタイプから12mの幅広タイプまであります。幅広タイプの遮光フィルムは、複数枚のフィルムをつないで製造するため、数カ所のつなぎ目が入ります。経年劣化などによるキズや穴用の補修テープがあると便利です。
遮光フィルムの選び方
遮光フィルムを選ぶ際は、遮光率が対象となる農作物などに適しているかを確認することが大切です。また、保温性の高い遮光フィルムも数多くありますが、開閉作業がしやすいか、物理的な耐久性はあるかなども確認し、作業性の低下を防ぎましょう。
ナスやトマトなどの野菜は色づきが商品価値を高めるので、遮光率が低めの製品がおすすめです。
遮光フィルムのその他情報
遮光フィルムを使用する際の注意点
遮光フィルムは耐久性に優れているものの、長持ちさせるためには以下の点に注意が必要です。
- 表裏がないか確認し、正しく展張する。
- 遮光フィルムを保管する際には融着を避けるため、冷暗所に保管する。
- 夏場の展張時には、たるみが出ない程度のゆるさで張る。
- 冬場の展張時には、夏場のゆるみを想定して強めに張る。
- 劣化を避けるため、ハウス内で硫黄散布や燻蒸は控える。
- 農ビ用のハウスバンドを使用すると破れることがあるので注意する。