超硬ボールエンドミルとは
超硬ボールエンドミル (英: everloy-cemented-carbide ball end mill) とは、超硬材で作られたエンドミル工具の先端が、球状の刃先をした切削工具です。
超硬は超硬合金とも呼ばれ、非常に硬い合金です。炭化タングステンや炭化チタンなどを鉄に添加し、高温で粉末焼結により押し固めて製造します。
ボールエンドミルは、側面と片側端面に刃があり、端面側がボール状になっています。複雑な曲面加工が可能です。超硬材のエンドミルは、主にマシニングセンタの工具に使用されます。
超硬ボールエンドミルの使用用途
ボールエンドミルは、曲面形状を成形する切削加工に適しています。そのほか、底面の角部に部品やゴミが貯まらないようにするためのフィレット部や、液体の流路としてのかまぼこ状の溝の加工にも使われています。
具体的な用途は、射出成形型・レンズ型などの金型類、モデリング、小物部品などの形状加工です。切削工具の先端が球面の特徴があり、複雑な曲面加工が可能です。ただし、底面のコーナー部をシャープなエッジにする切削加工には向きません。
ボールエンドミルによる切削加工は、プレス加工などの塑性加工と比較すると、切削加工は寸法精度が高く、複雑な切削加工が可能です。
超硬ボールエンドミルの原理
超硬ボールエンドミルは、ボール状の刃先を使って、曲面加工ができます。さらに、NC工作機械と併用することで複雑な3次元の曲面の加工が可能です。
ボールエンドミルは、刃先の断面積が小さいため剛性が大きくありません。したがって、刃こぼれが生じやすいので注意が要ります。切削工具用の超硬合金は、P種、M種、K種の3つの用途分類があります。
1. P種
P種は耐熱性、耐溶着性が優れており、炭化チタンTiC、炭化タンタルTaCなどを多く含みます。クレーターや熱亀裂といった熱的損傷に強い合金です。主な用途は、鋼、合金鋼、ステンレスなどの加工です。
2. M種
M種は炭化チタンTiC、炭化タンタルTaCなどを適度に含み、熱的、機械的損傷ともに強い合金です。主な用途は、ステンレス、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄などの加工です。
3. K種
K種は強度に優れる炭化タングステンWC主体の合金です。特にすきとり磨耗のような機械的損傷に強い特性があります。
主な用途は、鋳鉄、非鉄金属、非金属などの加工です。一方、硬いがために、ねばさが少なく折れやすい性質もあります。圧縮には強いが、引っ張り、横からの力には弱いのが欠点です。
超硬ボールエンドミルの特徴
長所
- プレス加工などのせん断加工に比べて、エンドミルによる切削加工は寸法精度が優れています。
- 通常のエンドミルとは異なり、刃が丸いことから、エッジ部分を無くし複雑な曲面の加工が可能です。ボールエンドミルの球半径以上の曲率半径であれば曲面を自在に成形することができます。
- ダイヤモンドコーティングを使えば、さらに高度を上げて、超硬材の加工が可能になります。
- 刃先が摩耗すれば再研磨可能で、経済的です。
短所
- エンドミル加工は、除去する部分が多くなるため、材料の歩留まりは悪くなります。
- 加工面が波形状になることで、表面にばらつきが発生する場合があります。そのため、塗りつぶすように加工するので、加工時間がかかります。
- 底面の角部の直角加工ができません。また、切削くずの排出性が悪いです。
超硬ボールエンドミルの種類
超硬ボールエンドミルには、構造面から分けると、一体型、刃先分離型、ろう付け型の3種類があります。
1. 一体型
一体型は、シャンクから刃先までが一体になっているエンドミルです。剛性が高いため高精度の加工が可能です。また、摩耗しても再研磨・再コーティングして使うことができます。
2. 刃先分離型
刃先分離型は、インサートと呼ばれる刃先をねじや押さえ金で固定するタイプです。超硬素材を部分的に使いことで、価格を下げています。特徴は、刃先が摩耗したとき新品と交換できることです。
3. ろう付け型
ろう付け型は、シャンクに超硬の刃をろう付けしたエンドミルです。低価格タイプです。
参考文献
https://sakusakuec.com/shop/pg/1endmill03/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_processing/mp01/a0239.html