フランジ形たわみ軸継手とは

フランジ形たわみ軸継手 (英: Flexible flanged shaft coupling) とは、たわみ結合要素をもつ軸継手です。
軸継手とは、2本の回転軸を連結し、動力を伝達する役割の機械要素です。回転軸を連結した状態で使用する「永久継手」と動作中に連結を解除できる「クラッチ」があり、フランジ形たわみ軸継手は永久継手になります。
フランジ形たわみ軸継手は、駆動側と従動側の軸が一直線のたわみ軸継手です。微小な変位やたわみに対応し、優れた剛性と精度で、正確な動力伝達と軸の位置合わせが可能です。
フランジ形たわみ軸継手の使用用途

図1. フランジ形たわみ軸継手の使用例
軸継手の主な役割は下記の3つになります。
- 動力伝達
駆動側 (負荷側) から従動側 (反負荷側) へ動力を伝達する - 誤差吸収
駆動側 (負荷側) と従動側 (反負荷側) の軸取り付け誤差を吸収する - 振動吸収
駆動側 (負荷側) の振動を吸収し周囲への影響を低減する
フランジ形たわみ軸継手の使用で、上記の3つ役割を全て備えており、本来の目的である回転機構をもつ機械や装置の動力伝達に加え、回転で生じる振動や衝撃の影響を抑え、機械の安定運用することが可能です。
具体的な使用例では、モーターとポンプ、ファン (送風機) 、減速機などの連結部で、一定回転で長時間動作するような場合に多く使用されています。
フランジ形たわみ軸継手の原理

図2. 軸継手の分類
1. 軸継手の分類
軸継手は下記の4つに分類され、フランジ形たわみ軸継手は、たわみ軸継手に属しています。
- 固定軸継手 (一直線軸)
- たわみ軸継手 (一直線軸)
- 自在軸継手 (交差軸)
- その他 (平行軸)
フランジ形たわみ軸継手は、一直線上に並んだ駆動側軸と従動軸をフランジと継手ボルトで連結し、モーターなどの回転を伝達する機械要素です。たわみ軸継手とは、軸継手のもつたわみ性が両軸の芯ずれを許容する軸継手です。
他に同じ一直線上に並んだ軸同士の連結では、フランジ形固定軸継手があります。この場合は、駆動軸と従動軸の芯を完全に一致させた状態で連結させます。
2. たわみ軸継手の特徴
たわみ軸継手には、下記の種類と特徴があります。
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種類 |
特徴 |
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補正軸継手
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歯車形 |
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ローラーチェーン形 |
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弾性軸継手
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金属バネ形 |
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フランジ形たわみ軸継手 |
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フランジ形たわみ軸継手の構造

図3. 軸継手の構造
フランジ形たわみ軸継手は、2枚のフランジと継手ボルトで構成され、継手ボルトには弾性のあるゴム製のブシュをはめ込み、フランジを締結します。フランジは、片側にはブッシュがはまり込むための大きなボルト穴と、反対側には軸との隙間が少ないリーマ加工されたボルト穴が、加工されています。
ブッシュの圧縮強度でトルク伝達し、ゴムの柔軟性で軸心の角度ずれ (偏角) をある程度許容できるようにした構造です。
フランジ形たわみ軸継手のその他情報
1. 材質
フランジ形たわみ軸継手の材質は、JIS B1452で下記のように規定されています。
「継手各部に使用する材質 (材料) は下表に示すもの又は品質がこれと同等のものとする。」
- フランジ
JIS G5501 FC200、JIS G5101 SC410、JIS G3201 SF440又はJIS G4051 S25C - 継手ボルト、ナット、ワッシャ
JIS G3101 SS400 - スプリングワッシャ
JIS G3506 SWRH62A/B - ブッシュ
JIS K6386 防振ゴム–ゴム材料の区分 B(12)
2. メンテナンス
フランジ形たわみ軸継手のブッシュは、経年的に弾性が低下し硬化するため、適宜頻度又は定期的な点検と取り換えが必要になります。ブシュの取り換えは、継手ボルトを緩めるだけでブッシュを取り外せるので、メンテナンスは比較的容易です。
なお、ブッシュは有機溶剤や油が付着すると、劣化がはやくなることがあり、選定には注意が必要です。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime1966/22/2/22_2_104/_pdf/-char/ja
https://www.nbk1560.com/resources/coupling/article/powertransmission-about/?SelectedLanguage=ja-JP