SPCC

SPCCとは

SPCCとは、JIS (日本産業規格) によって規定された冷間圧延鋼板の一種です。

冷間圧延鋼板は鉄鋼メーカーが生産する鋼材の一つで、熱間圧延軟鋼板を常温状態で冷間圧延して作られます。

SPCCの特徴は、高い加工性能と優れた表面仕上げです。冷間圧延により鋼板の厚みを薄くし、表面に滑らかで均一な仕上がりにできます。またSPCCは耐蝕性が低いため、塗装やめっき処理を施すことで、耐食性を向上できます。比較的安価な構造用鋼であり、多くの産業で使用されています。

SPCCの使用用途

SPCCの使用用途の例は下記の通りです。

1. 自動車部品

自動車部品はエンジン部品、ボディーパーツ、車輪などに使用されています。

2. 家電製品

家電製品では冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどに使用されています。

3. 建築材料

建築材料では、建物の外壁や屋根、サイディングに使用されています。サイディングとは、建物の外壁に張り付ける外装材料の一種です。また、水道管やガス管、配管などの管継手にも使用されています。

4. 電子機器

電子機器では、スマートフォンやタブレット端末、コンピュータの筐体に使用されています。筐体とは、電気機器や機械部品などを収容し、保護するための箱状の外殻のことです。

5. オフィス用品

オフィス用品では、書類整理棚、机など身近な製品に使用されています。

SPCCの性質

SPCCの主な性質は下記の通りです。

1. 化学組成

SPCCの化学組成は以下です。

  • 炭素 (C) :0.15%以下
  • マンガン (Mn) :1.00%以下
  • リン (P) :0.100%以下
  • 硫黄 (S) :0.035%以下

2. 強度

SPCCは低炭素鋼板から作られます。低炭素鋼は比較的柔軟で加工性が高い一方で、炭素含有量が少ないため、通常は強度が低く、加工後の硬度も低くなります。

しかし、冷間圧延により強度が向上します。冷間圧延とは、高温で鍛造された鋼板を低温下で薄く延ばす方法です。冷間圧延によって均一で密度の高い結晶構造が得られ、炭素含有量が少ない低炭素鋼でも強度を高められます。

塗装やめっきなどの表面処理をしていない場合、空気中の酸素と反応して容易にサビが発生します。

3. 表面の外観

SPCCの表面は冷間圧延によって均一で滑らかで、塗装やメッキ仕上げで美しい外観に仕上げられます。また、黒染めを行うと鋼板の表面に酸化皮膜が形成されるため、防錆能力が向上し、鋼板表面が美しい黒色に仕上がります。黒染めとは酸化皮膜を形成させることで、鋼板の表面を黒く染める処理です。

4. 熱伝導性

SPCCは熱伝導性が高く、加熱や冷却による熱膨張に対しても安定しています。そのため、加熱プレスやプレス加工など高温処理が必要な加工に適しています。

SPCCのその他情報

1. SPCCの原材料

SPCCには亜鉛めっき、スズめっき、ニッケルめっき、クロムめっきなどが使用されます。鋼板表面に均一にめっきされるため、防錆性が高く外観も美しい仕上がりになります。めっきによって鋼板の耐食性が向上し、長期間の使用にも耐えられます。

2. 劣化の抑制方法

鋼板表面に塗料を塗布することによって酸化や腐食から鋼板を守れます。また、塗料によって防水性や耐摩耗性、耐熱性などの性能も付加できます。塗料にはエポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料などが使用されます。

3. SPCCが適している加工方法

曲げ加工
SPCCは曲げ加工にも適しています。材料の塑性が高く形状変化に耐えられるため、複雑な形状の製品を作り出せます。また、曲げ加工時に発生する応力にも強く、形状の安定性が高いため、変形が少なく、製品の品質が保たれやすいことが利点です。

プレス加工
プレス加工で圧力をかけて加工することにより、材料を一定の形状に加工できます。また、加工時の応力にも強いため、高い精度での製品を作り出せます。

絞り加工
SPCCは絞り加工にも適しています。絞り加工は、板材を専用のダイや引き抜き機で引き伸ばすことで厚みを減らし、形状を変える加工方法です。絞り加工時の引っ張り応力に対して十分な耐性を持ち、引き抜き時の摩擦係数が小さいため、滑らかな引き抜きが可能で均一な板厚に加工できます。

切断加工
SPCCは低炭素冷間圧延鋼板であり、切断加工性に優れた材料です。切断加工性とは、材料を切断する際にどの程度簡単で正確に切断できるかを示す指標です。

溶接
SPCCは電気抵抗溶接に適しています。電気抵抗溶接とは、2つ以上の金属材料を抵抗加熱によって溶融・接合する溶接方法です。加熱には電流を流し、接合する部分には圧力をかけて材料同士を溶接します。

また、アーク溶接にも適しています。アーク溶接とはアークを発生させて2つの金属を溶かして接合する方法です。SPCCのような薄板には特に適しており、強度が高い溶接が得られます。アークとは高温・高電圧の電気放電によって生じる火花のことです。

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