濃縮装置とは
濃縮装置 (英: concentrator) とは、果汁のような液体から水分を蒸発させ、濃縮する装置です。
減圧によって水の沸点温度を下げて、より低い温度で水分が蒸発させ、濃縮する方法が一般的です。濃縮装置により液体を濃縮する目的として、より濃厚な味わいを提供し、水分除去による品質向上などが挙げられます。
食品以外では、化学工業での溶液の濃縮、薬品の製造、紙パルプ製造、廃液処理、輸送コスト低減などの目的があります。
濃縮装置の使用用途
濃縮装置は、食品関係では果汁のような液状のものへの利用が主流です。具体的には、糖液、出汁液、温泉水、果汁、ジャム、水あめ等の濃縮に使用されます。
濃縮技術は、真空包装技術や冷凍技術と連携することで、食品の変質要因の水分・酸素・温度の3つを抑止できることから、長期保存が難しかった食品への応用も広がっています。産業分野でも活躍しており、各方面から回収された洗浄処理液を濃縮することで、回収のコンパクト化が可能です。
その他、薬品や化学物質の製造、各種溶液の濃縮にも活用されています。
濃縮装置の原理
水の沸点は圧力が低下すると、低下します。真空濃縮はこの原理を利用しており、減圧状態で加熱することで対象液の水分の沸点を下げ、低い温度で蒸発させ濃縮します。水の沸点は大気圧では約100℃ですが、-0.05MPaで約80℃、-0.08MPaで約60℃、-0.09MPaでは約45℃です。
具体的プロセスは、まず対象液を濃縮装置に入れ、真空ポンプにより減圧します。そして、多くは撹拌機を回転させて、液が突沸しないようにしながら水分を蒸発させます。蒸発した水蒸気は、サイクロンを使用して集め、凝縮器で水にして排出するという流れです。
濃縮装置は、有害物質を除去することで、除去された有害物質が別途処理されます。残った液体や気体は、濃縮された形で再利用されます。真空濃縮は、濃度の高い溶液を作る方法として、古くから化学・食品・紙パルプなどの多くの分野で行われている方法です。
濃縮装置の特徴
1. 食品の風味を保持できる
濃縮装置は高真空にして低温度で濃縮するため、食品の濃縮をする場合は、食品本来の風味を保持できます。また、食品の酸化を抑え、熱による劣化を防止します。
2. 環境に優しい
対象液の温度を高くしないので、濃縮装置周辺も温度が上がりません。作業環境が良好です。また、蒸発して水になり処理水として排出され、臭気の発生がほとんどないのがメリットです。
3. 高粘度の液体にも対応可能
高い粘度の食品や化学物質・薬品に対応できます。対象液は非常に広範囲です。
4. 撹拌しながら加熱する
真空タンク内で撹拌しながら濃縮するので、突沸を防止し、食品の褐変などがありません。また、自動給液が可能で、濃縮装置をコンパクトに設計できます。
濃縮装置の種類
濃縮装置の種類は蒸発タンクの方式によって、いくつかに分類できます。代表的な方式は、以下の通りです。
1. 自然循環式
加熱室と蒸発室を分けて自然循環させるタイプです。ランニングコストが有利です。また、加熱菅内を沸騰しながら上昇するタイプは、糖液や水あめなどの濃縮に多く使われます。タンク内に撹拌機を付ける場合がほとんどです。
2. 強制循環式
ポンプを使って蒸発タンクの液を大量に循環させるタイプです。伝熱温度差が少ない場合や高粘度で自然循環が困難な場合などに使われます。化学プラントのスラリー液などの結晶化などの用途です。
3. 薄膜流式
伝熱面に対象液を薄膜上に流して、蒸発濃縮するタイプです。食品や医薬品などの熱に敏感なものの濃縮に適しています。ミルク、果汁、酵素、製薬、パルプ廃液などの濃縮に使われます。