スナップピンとは
図1. スナップピンの使用イメージ
スナップピンとは、割りピンの片側を波状に加工されたピンのことです。
ピンの抜け止めやボルト・ナットのゆるみ止めに使用されます。まっすぐな方をボルトなどの穴に差し込み、そのまま押し込むだけで抜け防止が可能です。
割りピンのように差し込んだあとに曲げる必要がないため、その手軽さから幅広く使われています。日本産業規格のJISをはじめ自動車関連規格のJASOや農機関連規格KSと分野ごとでも規格で定義付けられています。
なお、参考となる規格番号は、JISではB1360:2006、JASOではF203:2008です。
スナップピンの使用用途
スナップピンは、ボルトやパイプなど管状部材のゆるみや抜けを手軽に防止できる部品です。一般の機械から自動車や農耕機具まで使用されています。
多くの機械などの産業分野だけではなく、ベッドや車いすなどの一般用途に使われることも多いです。
スナップピンの特徴
図2. スナップピンの特徴
スナップピンは、一般用途向けにJIS「B1360:2006」で2タイプが定められています。
1. 軸孔タイプ
軸孔タイプは、まっすぐな方をボルトなどの軸孔に差し込むものです。1種から3種までの3つのバリエーションがあります。1種から3種は、波状に加工に折り返しの有無と、U字に折り返された部分が立ち上がりで分類されます。
- 1種
1平面上でU字と波状加工が完結した形状をしています。 - 2種
1種の波状加工の先端を折り返した形状です。折り返しがあることで、スナップピンが意図せず脱落するのを防止しています。 - 3種
2種の形状から、さらにU字側を立ち上げた形状です。U字を立ち上げることで、差し込みすぎを防止しています。
2. 軸溝タイプ
軸溝タイプは、両側が波状に加工されており、軸に彫られた溝を挟み込むようにして差し込むものです。これには、1種と2種が規定されています。
- 1種
人の形に似た形状をしており、波状の中央部でボルトなどの溝を挟み込みます。 - 2種
二重のリングのような形状です。
スナップピンの種類
図3. Rピンと松葉ピン
スナップピンは、形状の違いによってRピンまたは松葉ピンとも呼ばれることがあります。RピンはU字部とストレート部がRを描いているものであり、松葉ピンはストレートのまま折り返しが始まる形状です。
Rを描くことで、固定したいピンなどへの差し込みすぎを防止しています。また、同じような目的で使用されているものとしては、「割りピン」が知られています。
スナップピンと割りピンの使用用途の違いは、外して再利用するかどうかです。部品を交換する際、スナップピンは再利用が可能ですが、割りピンは新品との交換が必要です。
割りピンは、固定したいピンの孔を通したあと、2本の足を左右に割り開いて、部品の脱落を防止します。
スナップピンのその他情報
1. スナップピンのピン径
スナップピンには、適用可能なピン径があり、JIS B1360では「呼び」として定義されています。これは、スナップピンの形状が、固定したいピンの半径または溝部の直径で固定されるためです。
JIS B1360では「呼び」が区分されており、各々適用される固定したいピンの刑が定義づけされています。スナップピンの「呼び」は4、5、6、8、10、12、14です。各呼びはそのまま固定したいピンの緒系を示しています。
2. スナップピンの素材
スナップピンの素材としては、ピアノ線としても使われるようなばね性のある線材が主に使用されます。製造方法については、以下の通りです。
- 冷間成形後には、焼きなまし処理や調質処理などで粘り強さを向上させます。
- 表面処理には、防錆付与・耐摩耗性向上を目的に表面にメッキ処理を施します。
3. スナップピンの固定方法
図4. 割ピンとスナップピンの固定方法
割りピンは塑性変形を利用して部品を固定しますが、スナップピンは弾性変形を利用して対象部品に固定されます。このため、部品を交換する際、スナップピンは再利用が可能ですが、割りピンは新品との交換が必要です。
部品自体のコストは、割りピンの方が安価な傾向があります。スナップピンと割りピンどちらを使用するか検討する際は、組み入れる時の組み立てやすさや再利用の有無 (メンテナンス性) 、コストなどを考慮します。