フェルト

フェルトとは

フェルトとは、動物の毛や化学繊維を絡み合わせてシート状にした不織布です。

織物や編物とは異なり、糸を織ったり編んだりする工程を経ずに製造されます。最も伝統的なフェルトは羊毛の表皮に水分と熱・圧力を加えることで互いに絡み合う性質を利用して作ります。一方、現在の工業用途で主流なのは化学繊維を主原料とするフェルトです。化学繊維には羊毛のようなキューティクルがないため、針で繊維を突き刺しながら機械的に絡ませてシート状に成形します。

フェルトの最大の強みは、構造に由来する多様な機能性です。繊維が複雑に絡み合った構造を有するため、吸音性や断熱性、緩衝性、ろ過性などに優れます。また、使用する繊維の種類や密度を変えることで、特定の機能に特化させた設計も可能です。

フェルトの使用用途

フェルトは以下のような用途で使用されます。

1. 緩衝材・防振材

フェルトが持つ弾力性や柔軟性は、緩衝材や防振材として有用です。例えば、自動車産業では内装部品同士の接触を防止する部材として多用されます。また、精密機器や電子部品を輸送時の衝撃から守るクッション材としても使用します。さらに、その密度と柔軟性を活かし、機械の接合部に使用するパッキンやガスケットとして使用する場合もあります。

2. 吸音材・断熱材

フェルトには音のエネルギーや熱を吸収・減衰させる効果があります。この吸音性を利用し、自動車のダッシュボード内部やカーペットの下などに組み込み、車内の静粛性を高めます。また、建築分野では壁の内部に充填する断熱材・吸音材として、家電製品ではモーター音や動作音を抑える防音材として活用されます。

3. 研磨材・フィルター

硬く高密度に成形されたフェルトは、研磨材として優れた性能を有します。金属の表面仕上げや最終的な艶出し研磨に使用する研磨ホイールの素材となります。また、繊維がランダムに絡み合った構造は、流体から不純物を取り除くフィルター材としても機能します。工業用のオイルフィルターや集塵機のバグフィルターなどでも活躍します。