波長可変レーザーとは
波長可変レーザーとは、波長を変化できるレーザー装置です。
レーザー光とは光の波長を狭い範囲でそろえた光のことであり、単一の波長だけを取り出す技術が特徴です。一般的なレーザー装置は特定の波長でしか発振できない場合が多いですが、波長可変レーザーは目的に合わせて光の色を切り替えられます。チューナブルレーザーとも呼ばれ、光を反射・増幅する共振器に分散素子を組み込むことで出力波長を自在に調整します。具体的には、回折格子やプリズムなどを用いた設計が代表的です。
複数の波長を扱えるため、用途に応じて最適な光を選ぶことが可能です。医療・計測・通信などの分野で幅広く利用され、精密な分析や分光実験のような作業には不可欠とされています。たとえば、波長の切り替えによって生体組織の特定部位に合わせた選択的な照射が可能です。これにより、生体分析装置などに応用されます。
波長可変レーザーの使用用途
波長可変レーザーは、医療や分析及び通信などの分野で活用されます。以下はその用途の一例です。
1. 医療
医療分野では、特定の色が生体組織と相互作用しやすい性質を利用して、レーザー治療や診断機器などに応用されています。たとえば、皮膚の色素や血管に合わせて波長を調整することで、不要な組織だけを効率的に照射できる点が強みです。外科手術の際も、最適な波長を選択することで周囲組織への負担を減らしながら照射が行えるため、安全性と正確性が高い方法として注目されます。
2. 計測・分析
計測や分析の領域では、波長可変レーザーが分光技術を支える重要な役割を果たします。ある分子・原子の発光波長を分析する際、レーザー色を微調整することで対象物の特性を正確に評価できます。たとえば、化学成分の濃度を測定する際には、各成分に対応した波長を選択して観察すれば、微量成分の解析も容易です。高い周波数安定度が求められる精密分光においても、波長可変レーザーの調整機構で測定可能です。研究開発だけでなく品質管理の工程にも役立つ手段として採用されています。
3. 通信・産業
通信や産業分野でも、波長可変レーザーが活用される場合があります。光通信では複数の周波数帯を細かく振り分ける波長分割多重において、必要な波長を瞬時に切り替える機能が役立ちます。工業プロセスにおいても、材料に応じて最適な波長を選べるため、微細加工や表面処理の効率を高める技術として注目されています。