充填塔とは
充填塔 (じゅうてんとう) とは、主に気体と液体が接触して物質の移動を効率的に行うために用いられる装置です。
装置内部には「充填物」と呼ばれる特殊な素材が詰められており、両相の接触面積を広げ、物質移動速度を向上させる仕組みです。
初期の充填塔は19世紀初頭に登場し、主に廃ガス中の有毒物質 (塩素や酸化窒素など) を水に吸収させるために使用されました。構造は円筒形でセッコウやコークスのカスを詰めた単純なものでしたが、現在では耐腐食性や強度に優れた金属、陶磁器、高分子物質が主流となっています。
代表的な充填物には、不規則形状のラシヒリング、ベルルサドル、ポールリングなどがあります。
充填塔の使用用途
充填塔の使用用途として、廃ガス処理、化学物質の吸収、真空蒸留、実験室での利用、その他の用途の5つを解説します。
1. 廃ガス処理
充填塔は産業廃棄物処理において有効です。廃ガス中の有害物質、例えば塩素や酸化窒素といった成分を水や薬液に吸収させることで、環境への負荷を軽減します。水が塔の上部から供給され、廃ガスが下部から送り込まれることで効率的な接触を実現できます。
2. 化学物質の吸収
化学工業では特定のガスを液体に吸収させることが必要です。例えば二酸化炭素の吸収や、硫酸製造プロセスでのガス洗浄に充填塔が使われます。
3. 真空蒸留
棚段塔と比較してガス圧力損失が少ないため、充填塔は真空蒸留に適しています。特に石油精製や有機化学品製造において、揮発性の高い物質を分離する際に使用されます。
4. 実験室での利用
実験室規模では蒸留や抽出の際に最も多用される装置です。充填塔を使用することで、少量のサンプルでも効率的に分離操作が可能となります。
5. その他の用途
その他、食品工業や医薬品製造など精密な分離操作が必要な分野でも充填塔が使用されています。このようなの工程では耐腐食性や高精度な温度・圧力制御が求められるため、使用する充填物や材質の選定が重要です。