倍速チェーンコンベヤとは
倍速チェーンコンベヤとは、搬送速度がチェーン速度の約2.5倍となるチェーンコンベヤです。
倍速チェーンコンベヤは、小径ローラと大径ローラを組み合わせた構造であり、大径ローラが小径ローラの回転に同期することにより、チェーン速度の約2.5倍で搬送することが可能となっています。
チェーン自体の速度を低速にすることができるため、エネルギー消費を抑えることができ、低騒音でアキュムレートが可能です。
倍速チェーンコンベヤの使用用途
倍速チェーンコンベヤは、製造業における様々な効率的な搬送において活用されています。
例えば、コンベアフレームにストッパ機構や位置決め機構を取り付けることにより、フリーフローラインのメインコンベアとして、ラインを構成することが可能です。 特に、コンベアとの接地面が平らなワーク (パレット、トレイ、コンテナなど) のアキュムレート搬送に適します。
溶接機やプレス機などの装置への供給と排出部分にも倍速チェーンコンベヤが使用されています。また、コロコンローラの置き換えに倍速チェーンコンベヤを使用すると、手動搬送を自動化して任意のタイミング、位置での供給が可能です。
その他活用例には下記のようなものがあります。
- 幅広ワークの搬送
- パレット搬送
- 装置間の専用パレット
- 冶具の搬送
- フリーフロー搬送
倍速チェーンコンベヤの原理
1. 特徴
倍速チェーンコンベヤは、大径ローラの外側に小径ローラが同じ軸になるように組み合わせられた構造です。大径ローラと小径ローラの間に摩擦力がはたらくことにより、2つの両者が同一回転となる特徴があります。
半径の比は概ね1:1.5ですが、搬送速度がチェーン速度の約2.5倍になります。ワークとコンベアの接地面がローラであるため、ベルトコンベアに比べて、アキュムレート時にワークに傷がつきにくいです。
重量物の搬送・アキュームレートも可能です。例えば、50番手の場合、1メートルあたりの搬送重量は樹脂ローラで160kg、スチールローラで320kg、最大約700kgまで搬送できます。尚、搬送物が軽量すぎる場合 (概ね1kg以下) では、倍速効果が得られない場合があります。
2. 計算式
搬送速度がチェーン速度の約2.5倍になる具体的な計算は次のようになります。
チェーン速度をν、搬送速度をVとすると、小径ローラ外周の周速度はνです。大径ローラと小径ローラの角速度は等しくなるため、小径ローラと大径ローラの半径をそれぞれr、Rとすると、半径の比より計算して大径ローラ外周の周速度は(R/r)×νと求められます。
このとき、
搬送速度 V=(R/r)×ν+ν=(R/r+1)×ν
であり、半径の比、R/r≒1.5を代入すると、
V≒(1.5+1)ν≒2.5ν
となります。
倍速チェーンコンベヤの種類
倍速チェーンコンベヤは、様々なローラサイズ・ローラ材質・チェーン材質の製品があります。用途に合わせて柔軟にカスタマイズすることが可能です。
コンベヤ端は安全カバーで保護することで挟まれ・巻き込まれを防止することができます。隙間をカバーしてボルト・ナットなどのかみ込みや落下を防止するカバーなど、様々なアクセサリを利用してカスタマイズすることが可能です。
1. チェーン材質
倍速チェーンコンベヤのチェーンには、スチールチェーン、コーティングチェーン (HCP仕様) 、ラムダチェーン、ステンレスチェーンなどが用いられます。
HCP仕様は、硬質クロムめっき加工が施されており、クリーンルームなどのサビを嫌う用途でも使用が可能です。ステンレスチェーンは、非磁性・耐食を必要とする場面に用いられ、ラムダ使用のチェーンは給油できない (しない) 際に活用されます。
2. ローラ材質
倍速チェーンコンベヤで用いられるローラ材質にはエンプラローラ、ウレタンローラ、スチールローラなどがあります。エンプラローラには、汎用ローラの他に高摩擦ローラ、導電ローラ、導電高摩擦ローラなどの小分類があります。
エンプラローラは、低騒音が特徴で、無給油での使用も可能です (長期間の使用の場合は要給油) 。高摩擦タイプは、立ち上がりが素早いことが特徴です。ウレタンローラは、搬送物の直乗せができます。スチールローラは、給油が必要で湿潤雰囲気下で錆びる性質があるものの、高負荷での使用に向いています。