吊りクランプ

吊りクランプとは

吊りクランプとは、鋼材や石材をはじめとする重量物の吊り上げ、運搬、反転などを行うための吊具です。

鉄工や土木、建築などで使用される重量物の中には平鋼板や形鋼などのように、ワイヤやフックなどを掛けるところが無いものがあります。吊りクランプは、このような資材を吊り上げるときに使われる吊具です。種類には、縦吊り用、横吊り用などの吊り上げ方で分かれている製品や、コンクリート用、鉄鋼用などの吊り荷別の種類で分けられているものなどがあります。

吊りクランプの使用用途

吊りクランプは、建築、土木、鉄工、造船、機械、運輸など、様々な分野において重量物を吊り上げるために使用されています。平鋼板や形鋼 (H形鋼、I形鋼、L形鋼) 、鋼構造物などを掴んで持ち上げます。

特に、フックなどを掛ける部分がないものを吊りあげる場合や、鋼板を水平に吊り上げ、横滑りを防ぐ場合などに効果的です。

具体的な使用例には下記のようなものがあります。

  • 鋼板の縦吊り・水平吊り
  • 鉄骨の吊り上げ・反転・引き起こし
  • 重心が不明瞭な吊り荷の吊り上げ
  • コンクリート製二次製品 (U字溝・側溝・基礎ブロックなど) の吊り上げ
  • 木質梁の吊り上げ
  • 墓石の移動・設置
  • 建物外壁用パネルの吊り上げ

吊りクランプの原理

吊りクランプは、吊り上げるものを挟んで掴むクランプ部分に、チェーンやワイヤーロープを掛けるための吊環が付属した形状をしています。クランプ部分にはカムという可動式の歯がついており、カムと旋回アゴ (ジョー) でつり荷をつかみます。初期摩擦力を起こしてつり上げまたは引き起こした後、吊り荷の自重を利用して食い込ませてつり上げる仕組みです。

てこの原理を応用することで、吊り荷の重さよりも大きな力を掛けて吊り上げられるようになっています。一般的な縦吊りクランプで吊荷荷重1.6倍、横吊りクランプで吊荷荷重1.0倍の力で吊り上げることができると言われています。吊り上げたときのクランプの口の向きは、種類によって異なり、適切なものを選択することが必要です。

吊りクランプの種類

吊りクランプには吊り上げ形状や吊り荷に応じて様々な種類があります。吊り上げ形状別の主な型式は、縦吊り・横吊り・縦横兼用・ねじ式の4種類です。吊り荷種類では、鉄鋼用・コンクリート用・木質梁用・石材用・パネル吊り用などがあります。

吊り荷種類別では、例えば、コンクリート用ではつかむ部分がウレタンゴムでできていたり、外壁用パネル用クランプは遠隔操作で取り外しができるようになっているなどの特徴があります。

1. 縦吊りクランプ

縦吊りクランプは、平板の鋼板などを縦に吊る作業に適しているクランプです。吊り荷を吊り上げたときに、クランプの口が縦向きに下になるように使用します。平置きの鋼板を掴んで引き起こし・運搬・反転をする際にも使用されています。

一般的な容量は0.5~10トン程度です。それぞれの容量に合わせて、様々なサイズがあります。製品の中には、ロックハンドルで吊り荷を掴んだカムをロックするものや、クランプを締め付けるストッパーが搭載されているもの、開放状態を保持できる開放ロック機構が搭載されているものなどもあります。

2. 横吊りクランプ

横吊りクランプは、吊り上げる際にクランプの口が横向き (水平向き) になるようになっているクランプです。鉄骨や橋梁など構造建造物に使用され、鉄骨の吊り上げ、反転などの作業に適しています。

容量は縦吊りクランプよりやや小さく、0.5~5トンです。

3. ねじ式クランプ

ねじ式クランプは、カムの代わりにねじで吊り荷を挟んで固定するクランプです。ねじの先端や半球状のカムにより、強力にクランプします。

重心が不明瞭な吊り荷や、建物の支柱などに固定して物を吊り下げる用途などがあります。縦吊や横吊及び横引きが可能です。鉄鋼材料などに使用され、一般的な容量は0.5~5トンです。