吊りクランプ

監修:株式会社ルッドスパンセットジャパン

吊りクランプとは

吊りクランプとは、鋼材や石材をはじめとする重量物の吊り上げ、運搬、反転などを行うための吊具です。

鉄工、造船、建築などの現場では平鋼板や形鋼などのように、ワイヤやフックを掛けるための取り付け部がない重量物が多くあります。このような資材を吊り上げるために使用されるのが吊りクランプです。

縦吊り用、横吊り用などの吊り上げ方で分かれている製品や、コンクリート用、鉄鋼用などの吊り荷別の種類で分けられているものなどがあります。

吊りクランプの使用用途

吊りクランプは、建築、土木、鉄工、造船、機械、運輸など、様々な分野において重量物を吊り上げるために使用されています。平鋼板や形鋼 (H形鋼、I形鋼、L形鋼) 、鋼構造物などを掴んで持ち上げることができます。

特に、フックなどを掛ける部分がない資材を吊り上げる場合や、鋼板を水平に吊り上げた際に横滑りを防ぐ場合などに効果的です。

具体的な使用例には下記のようなものがあります。

  • 鋼板の縦吊り・水平吊り
  • 鉄骨の吊り上げ・反転・引き起こし
  • 重心が不明確な吊り荷の吊り上げ
  • コンクリート製二次製品 (U字溝・側溝・基礎ブロックなど) の吊り上げ
  • 木質梁の吊り上げ
  • 墓石の移動・設置
  • 建物外壁用パネルの吊り上げ

吊りクランプの原理

1. 構造と仕組み

吊りクランプは、吊り上げるものを挟んで掴むクランプ部とチェーンやワイヤーロープを掛けるための吊環が付属した形状をしています。

クランプ部分にはカムという可動式の歯がついており、カムとジョーで荷をつかみ、ばね式のレバーでロックします。チェーンなどが掛けられた吊環を引っ張り荷重をかけることにより、吊り荷の重量を利用して、可動式のカムをさらに食い込ませて吊り上げる仕組みです。

吊りクランプは、てこの原理を応用することで、吊り荷の重さ以上の力を掛けて吊り上げられるよう設計されています。一般的な縦吊りクランプで吊り荷荷重1.6倍、横吊りクランプで吊り荷荷重1.0倍の力で吊り上げることが可能です。

吊り上げたときのクランプの口の向きは、種類によって異なり、適切なものを選択することが必要です。

2. 使用上の注意

クランプは、吊り荷の大きさ・重さに合った適切なものを選択することが重要です。極端に小さすぎるもの、大きすぎるもの、極端に厚さが薄いものは吊ることができません。荷の材質の硬度も重要で、カムよりも硬い材質は食い込まないので使用できません。

定期的な点検、メンテナンス、オーバーホールが必要です。

次のような使用は、事故の原因となり、危険です。

  • 2枚以上重ねた状態の吊り上げ
  • 縦吊りクランプでの横吊り
  • 荷重が均等にならないような吊り方 (偏荷重)
  • 長尺物の1点吊り
  • つかみ部分が滑りやすい吊り荷の吊り上げ
  • 玉掛け作業の法定資格が無い者の使用

吊りクランプの種類

吊りクランプには吊り上げ形状や吊り荷に応じて様々な種類があります。吊り上げ形状別の主な型式は、縦吊り・横吊り・縦横兼用・ねじ式の4種類です。吊り荷種類では、鉄鋼用・コンクリート用・木質梁用・石材用・パネル吊り用などがあります。

1. 縦吊りクランプ

縦吊りクランプは、平板などを縦に吊り上げる作業に適したクランプです。吊り荷を吊り上げたときに、クランプの口が縦向きに下になるように使用します。主に平置きの鋼板を掴んで引き起こし・運搬・反転をする際に使用されます。一般的な吊り荷荷重は0.5~10トン程度です。

また、製品の中にはロックハンドルで吊り荷を掴んだカムをロックするものや、クランプを締め付けるストッパーが搭載されているもの、開放状態を保持できる開放ロック機構が搭載されているものなどもあります。

2. 横吊りクランプ

横吊りクランプは、クランプの口が横向き (水平向き) になるように吊り上げるクランプです。鉄骨などを横向きに掴んで吊り上げる用途で使用されることが多くあります。一般的な吊り荷荷重は0.5~5トンです。

3. ねじ式クランプ

ねじ式クランプは、カムの代わりにねじで吊り荷を挟んで固定するクランプです。ねじの先端や半球状のカムにより、強力にクランプします。

重心が不明瞭な吊り荷や、建物の支柱などに固定して物を吊り下げる際に効果的です。鉄鋼材料などに使用され、一般的な吊り荷荷重は0.5~5トンです。

本記事は吊りクランプを製造・販売する株式会社ルッドスパンセットジャパン様に監修を頂きました。

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