ヤシマット

ヤシマットとは

ヤシマットとは、道路、遊水池、農業用排水路などの法面を保護するために用いる侵食防止マットの一種です。侵食防止マットにはポリエステルやナイロンなどの合成繊維でできた製品もありますが、ヤシマットはココヤシや麦わらの繊維など、天然素材で作られた侵食防止マットを言います。ヤシマットは合成繊維のような耐久性はありませんが、生分解性が高く、自然環境に配慮した場所での使用に適しています。時間が経過すると自然に分解し、土壌に還元されるので、環境への負荷が少ないのが特徴です。

草が生えていない法面をヤシマットで覆うことにより、表土が保護され植物の発芽と成長を促すことができます。

ヤシマットの使用用途

ヤシマットは、さまざまな環境や場面で利用されますが、主な使用用途は以下の通りです。

1.法面の保護

斜面や法面は特に土壌が流れやすいため、ヤシマットを敷くことで土壌の流出を防ぎます。農業用排水路、融雪期の排水路、遊水池、道路の法面を保護する手段としてやしマットは大変有効です。

2.河川や湖沼の護岸

水辺の土壌は常に水流の影響を受け、侵食が進みやすいです。護岸にヤシマットを敷くことで、土壌の崩壊や流出を防ぎます。

3.森林再生

森林伐採後の裸地や山火事の被害地で、植物が育つまでの間、ヤシマットを使って土壌を安定させることで、再生を促進することが可能です。自然が持つ本来の回復力が得られるまで、土壌の侵食、流出、飛散をヤシマットで防ぎます。

4.農地の保護

農地では降雨や灌漑によって土壌が流出することがありますが、ヤシマットを敷くことで農地の保護や肥料の流出を防ぎます。

ヤシマットの原理

ヤシマットは、土壌の流出を防ぐためにいくつかの原理に基づいて機能します。まず、物理的な障壁として土壌を覆うことで、雨水の勢いや風による土壌の移動を抑制します。マットの繊維構造が土壌表面にしっかりと接触し、土壌粒子を固定化することによって、土壌が流れるのを防ぐことが可能です。雨が流れる方向は分散され、流速は低下することで、侵食防止効果が発揮されます。

また、ヤシマットは水を透過するため、土壌の上に水が溜まらず、適度な水分が保たれるのも特徴の一つです。これにより、土壌が過度に水分を含んで軟化することを防ぎ、植物の根が成長しやすい環境を整えます。植物が根を張ると、根が自然に土壌を固定し、侵食を長期的に防ぐ効果があります。ヤシマットは、あくまで短期的なサポート材です。最終的には植物が自然に土壌を保護する役割を引き継ぎ、ヤシマット自体はなんら影響を残しません。

ヤシマットのその他情報

他の法面保護工との違い

山間の道路に面した法面の保護には、モルタル吹付工、コンクリート吹付工、厚層基材吹付工、ラス金網 (ひし形金網) などがあります。これらの法面保護工は、落石などを防ぐといった安全性の確保が重要な箇所に適した工法です。これら工法の中でも緑化工法にはラス金網が用いられますが、緑化生育の促進においては、ヤシマットなどの侵食防止マットが優れています。緑化生育に優れている点を以下に挙げます。

柔軟性がある

ヤシマットは柔軟性が高いため、法面との密着しやすく、地形の凹凸にも対応しやすいのが特徴です。密着していることによって、土壌流出防止効果が高まります。

遮光性がある

法面では場所や時間帯によっては、強い直射日光が避けられません。ヤシマットが適度に遮光することによって、土壌の保湿性を維持することができます。

飛来種子を捕捉しやすい

風によって飛来してきた種子が落下した際に、ヤシマットの空隙によって種子が捕捉されます。ヤシマットは風雨による種子の移動を妨げます。

腐食分解される

ヤシマットは天然素材です。時間が経つと自然と分解されるため、自然環境への負荷を与えることがありません。