監修:富士商興株式会社
ドクターブレードとは
ドクターブレードとは、印刷機などにおいて、ドラムや版ロール表面に付着している物質を掻き取るために使用されるスクレーパー状の非常に重要で精密な薄板の刃です。
一般的には印刷・製紙業界での使用が中心ですが、ドラム・ロールを使用する食品製造メーカーやフィルム製造メーカーでも、ロールなどの表面にある異物を除去することに使用される場合があります。ドクターブレードは、金属、セラミック、プラスチック等の材質により製造され、様々な刃先の形状があります。
ドクターブレードの使用用途
ドクターブレードは、主にグラビア印刷機やフレキソ印刷機に搭載され使用される部品です。ドラムや版ロール表面上の余剰インク、グラビア塗工機のグラビアシリンダーに汲み上げられた余剰の塗工液を掻き取ります。
グラビア印刷、アニロックスロール、フレキソ印刷および、各種コーティングなどで使用されています。
また、それ以外の分野では、ロールやドラムを使用する食品製造メーカーやフィルム製造メーカーにおいて、表面上の異物を取り除くために使用されます。
ドクターブレードの原理
ドクターブレードは、金属、セラミック、プラスチック等の材質により製造されている精密部品です。ドクターブレードの役割は、ドラムや版ロール表面に付着している、余分なインクなどの物質を掻き取ることです。凹版の彫刻ロールに直接当て、凹部に乗らなかった余分なインクを掻き取るなどの役割を果たします。
使用時には、規定のサイズに切断し、印刷機等のドクターホルダーと呼ばれる装置に取り付け、ボルトなどで固定します。
例えば、印刷機では、ドクターブレードの働きにより
- インクフィルムの厚さ
- 色の一貫性
- インク消費量
- 清掃コスト
が改善し、印刷品質が向上します。また、色の変更を迅速に行うことも可能です。
ドクターブレードの種類
ドクターブレードには刃の形状、材質など、様々な製品があります。用途に合わせて適切なものが選択されます。掻き取る対象が多岐にわたること、現場オペレーターが培ったノウハウや独自技術も様々であることから、カスタマイズした仕様のドクターブレードを活用する印刷会社や塗工メーカーが多くなっています。
1. 刃先形状
刃先形状には、大きく分けて
- 平行刃
- 傾斜刃
- ストレート刃
があります。
平行刃タイプは、刃先先端を薄く平坦に加工したドクターブレードです。「ラメラ」「二段刃」「段付き」とも称されます。刃先が薄くしなやかであるという特徴があり、強い圧をかけなくともインキ切れが良いブレードです。また、微細な衝撃を吸収して印刷不良を軽減することもできます。刃が摩耗しても刃角が変わりにくく耐久性・安定性に優れています。全体の素材厚や刃先厚にもさまざまなものがあり、用途に合わせて選択されます。
傾斜刃タイプは刃先先端から角度を付けた刃です。「ステーブル」、「テーパー刃」「三角刃」とも称されます。平行刃に比べて圧力をかけたときのコシがあるため、強く圧をかけて掻き取りをすることに適しています。ただし、強い圧をかけることで刃が摩耗しやすく、摩耗すると版への接触面積が増えるため、定期的な調整が必要です。平行刃と同様に傾斜刃にも全体の素材厚や刃先厚にさまざまなものがあり、用途に合わせて選択されます。
ストレート刃タイプは、刃先が細くならない刃です。主に特殊な塗工用途で使用されます。摩耗すると傾斜刃タイプと同様に、版への接触面積が増えるため、定期的な調整が必要です。
2. 材質
ドクターブレードは、主に金属、セラミック、プラスチックで製造されています。
金属は、主にスチール、SUSなどです。セラミックメッキ加工などの表面加工を施すことも可能です。メッキ加工により、印刷不良の軽減、耐摩耗性、バリの抑制、長寿命化などの効果が期待されます。
プラスチックの主な種類は、
- ポリエステル樹脂(PET)
- ポリアセタール系樹脂(POM)
- 超高分子量ポリエチレン(PET)
などです。これらの素材はニーズに応じて、硬さ、耐クリープ性、耐摩耗性の観点で選択されます。
プラスチック製ドクターブレードを使用するメリットは次のようなものがあります。
- 安全性が高く、ロールを傷つけないにくい
- 切創事故のリスク軽減
本記事はドクターブレードを製造・販売する富士商興株式会社様に監修を頂きました。
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