監修:株式会社マルヤス
アルカリ洗浄剤とは
アルカリ洗浄剤とは、アルカリ性の性質をもった洗浄剤です。
アルカリ洗浄剤はアルカリと汚れが反応することで汚れを分解しますが、特に油脂やたんぱく質の汚れの除去に適しています。
家庭用の食器用洗剤で知られる弱アルカリ洗浄剤や、製造業や食品業界などで業務用としてよく使用される強アルカリ洗浄剤など様々な種類があります。強アルカリ洗浄剤は、しつこい油脂やたんぱく質の汚れの除去に高い効果がありますが、皮膚への刺激が強く危険性があるため取り扱いに注意することが重要です。
アルカリ洗浄剤を使用する際は、洗浄する素材や汚れの種類及び洗浄法に合った洗浄剤を選び正しい使い方を守ることで、安全かつ効果的に洗浄を行うことができます。
アルカリ洗浄剤の使用用途
アルカリ洗浄剤は様々な場面で使用されていますが、ここでは主に強アルカリ洗浄剤を使用する例を記載します。
1. 機械や部品の洗浄
工場などでの機械の洗浄に使用され、工業油やグリース、潤滑油などのしつこい油汚れの除去に適しています。工場で使用する機械は大きさも様々で形状が複雑ですが、アルカリ洗浄剤を塗布・漬け置きすることにより、機械の分解・組立等不要で頑固な油汚れの除去を可能にします。その他、金属部品の脱脂洗浄や塗装前の油除去など、様々な工業製品の製造工程で使用されます。
自動車整備工場では、エンジンルーム内の金属パーツに付着したエンジンオイル等の洗浄にも使用されています。
2. 食品業界での洗浄
食品工場では、食品加工機械や作業台、ダクト内の油脂汚れやタンパク質の除去に使用されます。飲食店では、厨房で使用するグリドルやフライヤー、換気フード、グリストラップなどの油汚れを取り除くのに適しています。
3. 医療器具の洗浄
医療器具には血液・体液などのタンパク質や脂質が付着しています。ジェット式洗浄や超音波式洗浄にアルカリ洗浄剤を用いることで、タンパク質や脂質を除去します。ジェット式洗浄で使用するアルカリ洗浄剤は、希釈が容易で泡立ちの少ないものを選択します。
4. 床面や壁面、天井の清掃
工場や厨房の床面や壁面、天井などの油汚れの清掃にも使用されます。
一般家庭での皮脂・油汚れなどの軽度な汚れの清掃には、弱アルカリ洗浄剤で十分な場合が多いです。
アルカリ洗浄剤の原理
以下に、アルカリ洗浄剤が汚れを落とす原理を記載します。
1. 油脂の汚れ
アルカリ洗浄剤は油脂の汚れに含まれる脂肪酸と中和反応を起こし、酸性の油脂が中和され水溶性の石けんに変わり乳化が進み汚れを分解します。
2. タンパク質の汚れ
アルカリ洗浄剤が、沢山のアミノ酸から構成されるタンパク質の構造を変化させ分解することにより、汚れを分解することができます。
アルカリ洗浄剤の種類
アルカリ洗浄剤には使用用途に応じ様々な種類がありますが、pH (水素イオン濃度) による分類とその他のアルカリ洗浄剤について記載します。
1. 弱アルカリ洗浄剤
pHが8から11未満の洗浄剤です。家庭用の食器用洗剤などがあり、軽度な油汚れの洗浄に適しています。皮膚への刺激が少なく安全性が高く、洗浄する素材を痛める心配もほとんどありません。
2. 強アルカリ洗浄剤
pHが11以上の洗浄剤です。業務用の洗浄剤と位置づけられ希釈して使用することが多く、強力な洗浄力があり、頑固な油汚れやグリース、タンパク質の分解に効果があります。但し、皮膚への刺激が強く危険性があるため、取り扱いや保管に注意をし、洗浄する素材が変質しないかどうかを事前に確認することも必要です。
3. その他特殊用途のアルカリ洗浄剤
近年は、金属類の腐食を防ぐ防錆剤を含むアルカリ洗浄剤も増えています。一般的なアルカリ洗浄液はアルミを溶かしますが、アルミ製品の洗浄を可能にしたものなどがあります。
また、特定の汚れや洗浄する素材に最適な洗浄剤をカスタムで製作してくれる会社もあります。
アルカリ洗浄剤のその他情報
以下に、アルカリ洗浄剤に関する注意事項について記載します。
1. 安全性
業務用と位置付けられる強アルカリ洗浄剤を扱う時は、ゴム手袋や保護マスク・眼鏡、防護服を着用するなど、洗浄剤の安全データシート (SDS) や取扱説明書に従うことが重要です。使用法 (希釈など) を始め保管の仕方、廃棄の仕方 (Phに注意) など様々な注意情報が記載されているので、正しく安全に取り扱いすることが大切です。
2. 洗浄する素材
強アルカリ洗浄剤は鉄やステンレス、銅、ガラスに使用されることが多いですが、アルミや亜鉛などの軟金属は強アルカリに弱いです。最近はアルミなどにも対応した洗浄剤も増えてきており、洗浄する素材に適応した洗浄剤を選択することが重要です。使用する際は、目立たないところで変質しないかどうかを試してから使用することも大切です。
3. 汚れの種類
アルカリ洗浄剤は多種多様であり、油脂やグリース、タンパク質など汚れの種類によって適切なアルカリ洗浄剤が異なるので、汚れの種類に合った洗浄剤を選ぶことが大切です。強アルカリになる程皮膚への刺激が強く取り扱いが難しくなるため、軽度な汚れであれば弱アルカリ洗浄剤や中性洗剤などの使用も検討すると良いでしょう。
本記事はアルカリ洗浄剤を製造・販売する株式会社マルヤス様に監修を頂きました。
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