アイボルト

アイボルトとは

アイボルトとは、頭部にリングのついたボルトであり、重量のある物を吊り上げる際に取り付けられる吊りボルトのことです。

JIS規格では重要保安部品として取り扱われており、リングの部分が破断したりリングに変形が生じないように保証荷重が定められています。通常のボルトのように部材を締結する目的で使用されるのではなく、リングの部分にワイヤーやチェーンを掛ける為に下の部材に固定する目的で使用されます。アイボルトの「アイ」とは、英語の”eye”であり、リングが丸い目のようであることに由来します。

アイボルトの使用用途

アイボルトの主な使用用途は重量物の吊り上げです。人の手では持ち上げられない筐体や設備などの上面にアイボルトを取り付けて使用されます。リング部にフックや金具、ワイヤーやロープなどを通します。吊り上げに用いられる機材は、クレーンやホイスト、チェーンブロックなどです。

例えば、工場で製造した重量のある制御盤を吊り上げて車両に積み込み、設置場所でもクレーンで吊り上げて搬送と設置を行う、という用途例などがあります。

また、アイボルトにチェーンなどを繋げる為に部材側に取り付けられる場合もあります。この場合のアイボルトはものを吊る為ではなくチェーン等を繋げる為に取り付けるので保証荷重は気にする必要はありません。

アイボルトの原理

1. 概要

アイボルトは、垂直吊りもしくは45度吊りで使用されます。垂直吊りとは、1つのアイボルトで真上に吊り上げる吊り上げです。

45度吊りとは、2つのアイボルトを1つのクレーンなどで吊り上げる (1つのアイボルトにかかる紐などが45度になる) 吊り方です。この際、リングの向きが同一平面内 (2個のアイボルトの軸を含む平面から5度以上傾いてはならない) におさまっている必要があります。尚、JIS規格では、45度吊りの使用荷重を規定していますが、安全性の上では、曲げモーメン
トが小さくなる60度以上の角度で吊り上げることが好ましいとされます。

尚、1つの吊り荷に複数のアイボルトを使用した場合でも使用荷重は1個のアイボルトを使用する場合と同じとなります。これは、すべてのボルトに均等の荷重がかかるとは限らないためであり、運搬の過程で1つのアイボルトに全荷重がかかる場合も考えられるためです。

2. 使用上の注意

アイボルトは、ねじの軸に対して縦の方向に荷重をかけるように設計されています。そのため、対象物の側面にアイボルトを取り付けての横吊りや引き起こしは大変危険であり、禁止されています。

また、アイボルトは必ず手で回して取り付けることがJIS規格で定められています。リング部にパイプなどを通して締め付ける締め付け方は破損の原因になる可能性があり、禁止されています。座面と対象物は密着させる必要があります。これは、着座面が対象物から離れると、吊り上げ・吊り下げ・移動の際に、曲げモーメントやせん断力が加わり、変形や破断の原因となる恐れがあるためです。

アイボルトの種類

アイボルトは、様々な呼び径 (サイズ) の製品があります。各呼び径に応じて吊り上げることのできる使用荷重が決まっています。例えば100㎏の重量物に対して使用する場合にはM10以上のサイズが必要です。

アイボルトはおねじ類と異なり、1つの呼び径に対してねじ部の長さの種類は、標準と足長と呼ばれる2種類のみです。これは、一般的なボルト類は頭部とナットで部材を挟んで締結する用途で用いられる (様々な部材の厚みに対応するため様々な長さがある) のに対して、アイボルトは部材の上面に固定して吊り上げるため、長さのバリエーションを必要としないためです。

2. 回転アイボルト

回転アイボルトとは、アイボルトの一種であり、リング部分が回転するようになっています。通常のJISアイボルトでは危険を伴う荷重時の横吊、反転、引起しが可能です。また、JISアイボルトよりも使用荷重が大きい傾向にあります。