マグネットカップリングとは
マグネットカップリングとは、磁石の吸引・反発を利用した仕組みのカップリングです。
磁気継手、磁気カップリングと呼ばれる場合もあります。偏心・偏角の許容値が大きく、着脱が簡単であるという特徴があります。磁力による非接触式動力伝達のため隔壁伝達によって液漏れを防ぐような用途も可能です。メカニカルギアで発生する振動音を軽減することができるというメリットもあります。
マグネットカップリングの使用用途
マグネットカップリングは、
- 液漏れ・空気漏れを防止するためにシーリングを無くして隔壁越しで回転を伝達する
- 清潔性を保つなどの目的により部品の取り外し・メンテナンスを頻繁に行う
- 通常のカップリングよりも振動・音を軽減する
などの用途において使用されることの多いカップリングです。使用される主な製品等には下記のようなものがあります。
- クリーンルーム
- 食品撹拌機をはじめとする食品機械
- マグネットポンプ (化学液や食品の撹拌、循環)
- 真空ポンプ
- 真空装置内へのトルク伝達
特に、ポンプ類では、浄水場などで使用される消毒用の次亜塩素酸ソーダや、各種化学薬品などの危険液や腐食性の高い液体を移送する場合に、液漏れの無いマグネットカップリングが有効活用されています。
マグネットカップリングの原理
1. 概要
マグネットカップリングは、基本的永久磁石が使用され、N極とS極を交互に着磁させた多極構造になっています。 この構造により異極同士の吸引と同極同士の反発を利用して回転伝達が可能です。非接触での回転伝達が可能であることから、水槽や真空装置などの非磁性体隔壁越しの回転伝達などに使用されます。
接合部分の接触が無いので、磨耗による発塵が無く、クリーン環境での使用が可能です。また、非接触であることから静音性も高くなっています。脱着が容易であることから、食品など清潔性が高く頻繁なメンテナンスが必要な用途にも適しています。
2. 使用上の注意
マグネットカップリングの使用にあたって、いくつか注意するべき点があります。
1つ目は、脱調現象です。磁力によって予め設計された伝達トルクを超えると、駆動マグネットと従動マグネットが同期しなくなり、動力伝達ができなくなります。この現象を脱調現象と呼びます。
移送液の粘度と温度も注意が必要です。粘度が高すぎると、内輪表面に移送液の粘性摩擦トルクが発生し、伝達動力が低下してしまいます。また、高温環境下では磁力が落ち、伝達動力が低下してしまうため適正温度で使用することが必要です。また、各種部品の許容圧力を超えないよう使用する必要があります。
3.ベアリング
マグネットカップリングの外輪側は、モーターの軸受を利用するなど、一般的な軸受が使用されます。一方、液中に浸漬する内輪側は、受ける荷重方向によりラジアルベアリング、スラストベアリングと呼ばれる軸受を設けます。
薬品などを移送液とする場合は、軸受にもエンジニアリングプラスチック、セラミックスなどの高い耐食性をもつ材質が使用されます。用途によりさまざまな材料が使用されますが、経年的に摩耗や化学変化を受けるため、定期的なメンテナンスが必要です。
マグネットカップリングの種類
マグネットカップリングには様々な製品があります。磁石の配置には、ディスクタイプやスラスト軽減タイプ、イン・アウトタイプなどがあり、8極の場合や12極の場合などがあります。
大きさや、伝達トルクにも様々な種類があり、用途にあったものを選択することが必要です。動作には通常の突き合わせ軸タイプの他、円筒平行軸タイプ、直交マイタタイプなどの種類があります。マグネットを樹脂や、ステンレスのケースに入れて埋め込み、密封したものは、水中や薬液中、または高真空中などでの利用が可能です。選定の際には前述の通り最大トルクなどに注意して、用途に合った適切な製品を選択することが必要です。