フッ素系洗浄機

フッ素系洗浄機とは

フッ素系洗浄機とは、フッ素系洗浄剤を用いて工業洗浄を行う装置です。

フッ素系洗浄剤は、油分の溶解性が高く、油汚れなどの洗浄に適しています。精密洗浄や光学部品、プラスチック、プリント基板などの洗浄に使用されます。

フッ素系洗浄機の使用用途

1. 概要

フッ素系洗浄機は様々な工業製品の洗浄に使用されます。フッ素系洗浄剤は、金属部品を腐食させることなく、プラスチック部品へのダメージも少ない洗浄剤です。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 精密部品の除塵洗浄
  • 水や炭化水素洗浄剤の置換・リンス・乾燥
  • 金属切削加工・プレス加工部品の脱脂洗浄
  • 電子部品、プリント基板のフラックス洗浄
  • プラスチック、ゴム部品洗浄

2. フッ素系洗浄が行われる主な製品・部品

フッ素系洗浄が行われる主な製品・部品には下記のようなものがあります。

  • カメラモジュール部品、光学レンズ
  • 自動車部品、モーター部品、ベアリング
  • 航空機関連部品
  • リレー、コネクター
  • 半導体製造装置部品
  • 電気、電子部品
  • 医療用品 (注射針、中空糸、カテーテル等) 
  • HDD部品

フッ素系洗浄機の原理

フッ素系洗浄機は、蒸気洗浄や真空洗浄、超音波洗浄などにより、フッ素系洗浄剤を用いて洗浄を行います。フッ素系洗浄の特徴には下記のようなものがあります。

  • 不燃性で毒性が低いため安全性が高い
  • 比熱、蒸発潜熱が小さくエネルギー負荷が少ない
  • フッ素系混合溶剤を用いることで油分溶解力が強くなる一方で、製品に対する溶解力が弱い
  • 低温で乾燥でき、樹脂系部品にも利用可能
  • 速乾性が高く、水系等に比べて乾燥時間を短縮できる
  • 表面張力が小さく浸透性が良い
  • 蒸留再生が可能であり、洗浄剤を再生することができる

フッ素系洗浄剤は50~60度で沸騰するため、比熱、蒸発潜熱が低い性質があり、エネルギー消費を抑えることができます。また、他の有機溶剤と異なり不燃性であり、PRTR法、消防法、有機溶剤中毒予防規則となどの主な法令にも該当しないため、安全管理が容易です。

一方でフッ素系洗浄剤には、比較的高価であり、洗浄剤の消費量が多いという特徴もあります。これらの点をカバーするために、多くのフッ素系洗浄機では、密閉により溶剤蒸発を防いだり、蒸留再生によって洗浄剤の回収を行ったりする仕組みが取り入れられています。

フッ素系洗浄機の種類

フッ素系洗浄機には、主に超音波洗浄機、蒸気洗浄機や真空洗浄機、などの種類があります。それぞれの特徴を理解して剪定することが必要です。

1. 超音波洗浄機

超音波洗浄機は、フッ素系洗浄剤で満たした浸漬槽の中に被洗浄物を入れ、超音波を発生させてその波動を利用して汚れを除去する洗浄機です。

超音波洗浄機の効果の1つにキャビテーション効果があります。キャビテーションは液体中の空洞や気泡が急速に生成・収縮する現象です。これにより、気泡の収縮や崩壊が汚れの表面で発生し、物理的な力が働いて汚れを剥がしたり、細かな隙間に浸透したりします。

2. 蒸気洗浄機

蒸気洗浄機は、洗浄に用いるフッ素系洗浄剤を加熱沸騰して蒸気を発生させ、その蒸気に被洗浄物をさらすことで洗浄を行う機械です。超音波洗浄と併用されている機器も多く、超音波蒸気洗浄機と呼ばれる場合もあります。

蒸気洗浄→浸漬超音波洗浄→蒸気リンス→乾燥、もしくは、浸漬超音波洗浄→蒸気洗浄→蒸気リンス→乾燥の順で洗浄が行われます。多くの機器では、蒸発した洗浄剤を冷却によって回収し、浸漬槽へ戻す仕組みによって効率的な洗浄剤使用が可能です。

3. 真空洗浄機

真空洗浄機とは、洗浄槽が真空になる洗浄機です。真空により、フッ素洗浄剤中の空気が抜けることで超音波が効きやすくなり、高い洗浄力が発揮されます。密閉式となることから、開放型洗浄機に比べて揮発による洗浄剤ロスも抑えられます。

洗浄に使用したフッ素洗浄剤は蒸留再生機で汚れと溶剤を分離し、回収して再利用することが可能です。