セラミックファイバーとは
セラミックファイバーとは、アルミナやシリカなどのセラミックスで作られた繊維材料です。
一般的にセラミックファイバー質耐火断熱材として、鉄鋼、非鉄金属、化学プラント、各種工業炉など産業用途に幅広く活用されています。
これらの用途以外にも、軽量で通気性が高く、優れた耐火断熱性能を有していることから、自動車産業、電子・半導体産業、建築用材料などの分野に広く機能展開されています。
人造鉱物繊維の一種であるセラミックファイバーは、原料の違いにより種類は大別され、RCF(Refractory Ceramic Fiber)、AES (Alkaline Earth Silicate Fiber)、 PCW(Polycrystalline wool, Alumina Fiber)が存在します。セラミックファイバーは1000℃以上の高温域に耐用し、中でもPCWは、使用条件次第では1600℃の耐用が可能となっています。
昨今のCO2削減によるカーボンニュートラルの実現に向けて、エネルギーや熱の有効活用のため、耐熱性と断熱性の両方の特徴を有するセラミックファイバーの用途は、全産業に渡り、ますます拡大してきています。
日本国内においては、2015年11月から施行・適用された「労働安全 衛生法施行令の一部を改正する政令」及び「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令」により、RCFは表示対象物、特定化学物質の管理第2類物質に位置づけられるとともに、予防規則の適用を受けることになりました。それに伴い、規制対象外である、AES、PCWの活用が広がりつつあります。
セラミックファイバーの使用用途
セラミックファイバーは様々な場面で使用されます。以下はその主な用途の一例です。
1. 自動車産業
自動車のエンジン排気管やターボチャージャーの断熱材として使用されます。これにより、高温の排気ガスが周囲の部品に与える影響を軽減することが可能です。また、エンジンルーム内での熱を遮断し、周囲の電子部品やプラスチックパーツなどを保護する役割も果たします。
2. セメント産業
セメントを焼成するためのロータリーキルン炉の断熱材としてセラミックファイバーが採用される場合があります。高温の環境での耐熱性と断熱性を提供し、効率的な生産を支えます。また、セメント工場の排気システムやダクトなどにもセラミックファイバーを使う場合があり、熱損失を最小限に抑えることが可能です。
3. エネルギー産業
セラミックファイバーは火力発電所のボイラーやタービンの断熱材として使用されます。断熱材は高温の熱エネルギーを効率よく利用するために不可欠です。また、耐食性にも優れているため、石油化学プラントでの高温プロセスや腐食性ガスに耐えるための設備保護に使用されることもあります。
4. 航空宇宙産業
航空機や宇宙船のエンジン部品、断熱タイルなどに使用されることも多いです。これにより、高高度の環境から機体を保護することができます。高温に耐える性能が求められる場面で重宝されています。
セラミックファイバーの原理
セラミックファイバーの断熱性は、その材料の特性に基づいています。一般的に使用されるセラミックファイバーは主にアルミナやシリカなどのセラミックスを原料としています。これらのセラミックスは高温に耐える性質がある点が特徴です。
セラミックは一般的に熱伝導率が低い特性もあるため、高温の環境下で熱を効率的に遮断することが可能です。また、セラミックスは原子レベルで密に結合した結晶構造を持ちます。このため、高温下でも分子や原子の振動が大きくなりにくく、材料の強度や耐久性が維持されます。
化学的にも安定しており、酸やアルカリ及びその他の腐食性物質に対しても耐性があります。これにより、様々な環境下で安定した性能を発揮することが可能です。
これらの特性により、セラミックファイバーは高温の環境での断熱材や耐火材として広く使用されています。産業の安全性と効率性を向上させる重要な素材となっています。
セラミックファイバーの種類
セラミックファイバーにはいくつかの種類があります。以下はその一例です。
1. アルミナセラミックファイバー
アルミナ (酸化アルミニウム) を主成分とするセラミックファイバーです。非常に高い耐熱性を持ち、1,200度以上の高温に耐えることができます。主に高温環境での断熱や保護に使用されます。
2. シリカセラミックファイバー
シリカ (二酸化ケイ素) を主成分とするセラミックファイバーです。1,000度以上の高温に耐える耐熱性を有しつつ、軽量で柔軟性があります。また、耐蝕性が高く、化学プロセスの断熱材や、耐火材として広く利用されています。
3. アルミナ・シリカ混合セラミックファイバー
アルミナとシリカを混ぜることで製造されるセラミックファイバーです。アルミナとシリカを混合することで材料の熱膨張特性を調整し、熱サイクルや急激な温度変化に対する耐性を向上させることができます。金属製造やエネルギー産業での高温プロセスの断熱材として広く使用されます。
4. ジルコニアセラミックファイバー
ジルコニア (酸化ジルコニウム) を含有または主成分とするセラミックファイバーです。耐熱性の高さが特徴で、1,500度以上の高温下でも安定した性能を発揮します。高温のエネルギー産業や特殊な化学プロセスで使用されます。