不定形耐火物

監修:品川リフラクトリーズ株式会社

不定形耐火物とは

不定形耐火物とは、粉末状や練土状の耐火物です。

第二次産業では様々な高温装置が使用されます。高温装置は1200 ℃から1650 ℃という、著しく高温となるのみでなく、浸食性の強い融体や気体との化学反応、硬い物質の衝撃による摩耗、急加熱・急冷却といった厳しい環境に曝されており、鉄では耐えることができません。そこで設備の内側を耐火れんがや不定形耐火物という「耐火物」で覆うことによって、鉄製の容器を保護しています。

耐火れんがが一定の形状に成形されている耐火物なのに対し、不定形耐火物は粉末状や粘土状であり、現場で成形するため、様々な形状や大きさの炉や容器に施工できるのが特徴です。

成形は、顆粒と粉末の混合物を、施工現場で水や特殊な液体と練り混ぜて、建設現場のコンクリートのようなドロドロの状態にして流し込む方法、顆粒と粉末を圧縮空気で搬送し搬送の過程で水や特殊な液体と練り混ぜて吹き付ける方法、紙粘土のような性状の練り土をコテ塗りで付着させる方法等、多岐にわたります。流し込んだものは翌日には固化します。

このように不定形耐火物は施工現場で成形するため、施工が比較的容易で迅速に行えます。特に大型の構造物や複雑な形状に対して作業効率が高いという利点があります。これらの特徴から、耐火れんがの部分的な補修にも使用されることも多くあります。特に吹付けは離れた場所からも機械を使用して作業できるので、炉の温度を下げずに高温のまま施工する場合もあります。その場合は温度にあった専用の不定形耐火物が必要になります。

不定形耐火物の使用用途

不定形耐火物は様々な産業で利用されます。以下はその一例です。

1. 製鉄業

製鉄工程の中でも、初期に使用される高炉には、溶けた鉄が流れる樋 (とい) と呼ばれる溝部があります。その樋には、不定形耐火物が使用されています。その他製鉄の工程内では、高温の溶けた鉄を保持する容器の内張材として、様々な場面で使用されています。耐火物は高温に耐えるのみではなく、溶けた鉄と、溶けた鉄から分離した不純物に、耐火物に含まれる成分が化学反応しにくいこと、勢いよく流れる溶けた鉄に耐火物が摩耗されないことが必要です。

2. セメント業

セメントは、原料をロータリーキルンと呼ばれる回転するパイプ状の設備の中で高温に加熱して製造されます。そのロータリーキルンの中に、セメントの原料を予熱しながら供給するプレヒーターと呼ばれる設備の内張材に不定形耐火物が使用されます。セメント原料の粒子は硬いので、セメント原料の粒子の落下を受け止めるには高温で摩耗しにくい特性が必要です。

3. エネルギー産業

火力発電所ではボイラー内部に耐火れんがや不定形耐火物が使用され、断熱性と耐火性を確保しています。また、石油精製プラントなどにおいても、反応容器を保護する目的で利用されています。また、廃棄物を処理する焼却炉内部の摩耗による劣化を防ぐためのライニングにも使用されています。

4. ガラス産業

ガラスの原料を高温で溶かすための溶融炉で不定形耐火物が使用されます。耐酸性や耐アルカリ性に優れた材料を使用することが多いです。不定形耐火物により、溶融炉の継ぎ目の補修や破損部の補修が可能です。

不定形耐火物の原理

不定形耐火物には、目的に応じて成分や粒子サイズが最適に調整された粉末や顆粒状の耐火材料に加え、それらを固化させる結合材や調整剤が含まれています。結合剤や調整剤が水に溶けて化学反応を起こすことで固化し、強固な施工体となります。

流し込み作業なら数時間ドロドロの状態を保った後翌日には固化するように、吹き付け作業なら数秒から数十秒で固化するように調整されています。結合剤の代表的なものは耐熱性の高いセメントであるアルミナセメントですが、その他にも様々な薬品が使用されています。

不定形耐火物の選び方

不定形耐火物は現場の様々な環境を考慮して最適のものを選択する必要があります。

専門家にご相談し、適切な材料、施工方法になるように選ぶ必要がありますが、ポイントの一例として下記のような点が挙げられます。

1. 使用温度

不定形耐火物は高温環境で使用されるため、最高耐熱温度は重要な要素です。耐火物の種類によって最高耐熱温度が異なります。使用する設備やプロセスの耐熱要件に合わせて、適切な耐火物を選定します。

2. 物理的強度

耐火物は物理的な負荷に耐える必要があります。特に機械的ストレスがかかる部分では、十分な圧縮強度や耐磨耗性がある不定形耐火物を選ぶことが重要です。耐衝撃性の高い不定形耐火物を選定することで、耐用年数を伸ばすことができます。

3. 化学特性

使用する環境に応じて不定形耐火物の耐久性を確認します。例えば、セメント業ではアルカリ性の高い環境での安定性が重要です。特定の化学物質や溶融物質に対して、不定形耐火物が安定していることを確認します。

4. 施工性

不定形耐火物は現場で形成されるため、施工時の流動性や硬化時間が重要です。設置が容易であることや、修理時にも作業がスムーズに行えることが大切です。

本記事は不定形耐火物を製造・販売する品川リフラクトリーズ株式会社様に監修を頂きました。

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