ダイシングテープ

ダイシングテープとは

ダイシングテープとは、半導体ウェハーの裏面に貼られる粘着テープです。

半導体ウェハーを個々のチップ (ダイ) に分割する作業をダイシング工程と呼ばれます。半導体ウェハーを製品として利用可能なダイに分割するために欠かせないものであり、精密さと安定性が求められる重要な作業です。ダイシングテープはこの工程においてウェハーやダイを固定するためのテープです。

ダイシングテープはウェハーの裏面にしっかりと貼り付けられ、切削工程中にダイを確実に支持します。これにより、ダイがずれることなく正確に切断され、品質の高い製品が得られます。また、テープがダイの位置を安定させるため、切削作業が正確に進行し、生産性が向上します。

ダイシングテープの使用用途

ダイシングテープは主に半導体業界で使用されます。以下はその用途の一例です。

1. MEMS製造

MEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの略であり、小型の電子機械を指します。MEMSデバイスの製造工程では、微細な構造を持つウェハーを切断する際にダイシングテープが使用されます。これにより、微細な構造が損傷することなく製品化することが可能です。

2. センサー製造

センサーは様々な物理量や環境パラメータを検出するためのデバイスです。センサーの製造においてもダイシングテープが使用されます。加速度センサーやジャイロスコープなどを製造する際に、ウェハーを正確に切断するために貼り付けることが多いです。

3. 光学デバイス製造

光学デバイスは光を利用して情報を処理および検出するためのデバイスです。特に光学デバイスでは、ウェハーが非常に薄く、脆弱な場合があります。ダイシングテープはこれらの薄膜を保護し、加工中の損傷を防ぎます。

ダイシングテープの原理

ダイシングテープにはポリオレフィンやポリエステルなどのポリマー系フィルムが基材として使用されます。これにより、テープが柔軟性を持ち、ウェハーの曲面にも適応することが可能です。

基材の一面には、ウェハーをしっかりと固定するための粘着剤が塗布されています。この粘着剤はアクリル系やシリコーン系のものが使われ、ウェハーの表面と強固に接着します。粘着剤の特性は接着の強さや耐熱性などが重要な要素です。
粘着剤はUV剥離型と感圧型の2種類に大別されます。

粘着剤の上には保護目的で一時的に貼られるリリースライナーがあり、粘着剤が使用前に外部からの汚染を受けることなく保護する仕組みです。リリースライナーは通常はフィルムで構成されており、簡単に剥がすことができます。

ダイシングテープにはウェハーを安定して固定するために必要な強力な粘着力が求められます。しかし、同時に加工後に簡単に取り外せることも重要です。このバランスを保つことが製品の品質を保つために不可欠です。

ダイシングテープの選び方

ダイシングテープを選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. サイズ

ダイシングテープの選定において重要なのは、ウェハーのサイズに合った適切なテープの寸法です。ウェハーの直径や形状に合わせて、適切な幅と長さを選ぶ必要があります。一般にテープの幅はウェハーの直径よりも若干大きめに選ぶことが推奨されます。

2. 粘着力

粘着剤種類はUV剥離型粘着剤と感圧型粘着剤に大別され、粘着力はダイシングテープのウェハーに対する接着の強さを示します。適切な粘着力を選ぶことでウェハーを安定して保持し、切削中にズレが生じるのを防ぐことが可能です。粘着力は製品の仕様によって異なり、通常はN/mmなどの単位で表示されることが多いです。

3. 基材材質

基材フィルムの材質はテープの柔軟性や耐熱性、化学的安定性に影響を与えます。ウェハーの特性や製造プロセスの要件に応じて選定します。ポリオレフィンやポリエステルが使用されることが多いです。

PETは柔軟性があり、一般的な環境下での使用に適しています。化学的安定性にも優れている点が特徴です。ポリイミドは高温耐性に優れ、薄膜でありながら高強度な基材として販売されています。

4. リリースライナー材質

リリースライナーにはシリコーン系剥離処理フィルムが多く使用されます。