監修:コンガテックジャパン株式会社
COM-HPCモジュールとは
COM-HPCモジュールとは、次世代の高性能コンピューターやエッジコンピューター向けのコンピューター・オン・モジュール (システム・オン・モジュール) です。
COMはComputer-on-Moduleの略であり、組込みコンピューターのことを指しています。HPCはHigh Performance Computingの略であり、高度な計算タスクを実行するためのコンピューターを指します。COM-HPCモジュールはこれらを組み合わせた言葉であり、組込みコンピューティングの規格開発団体であるPICMGにより策定されたCOM-HPC規格に準拠したモジュールで、計算能力の高い次世代機向けのコンピューターモジュール規格です。
COM-HPC規格は、ハイパフォーマンスのエッジ、および組込みコンピューター向けに PICMG により策定された規格で、ヘッドレスで高性能の Server タイプと、グラフィックスを搭載した Client タイプがあります。 モジュールのサイズとしては、Client 用が Size A (95 x 120 mm)、Size B (120 x 120 mm)、Size C (160 x 120 mm) の3種類、Server用は Size D (160 x 160 mm)、Size E (200 x 160 mm) の2種類が定義されています。 さらにクレジットカード サイズの COM-HPC Mini (95 x 70 mm) 規格が加わり、より幅広いアプリケーションに対応できるようになりました。
COM-HPCモジュールは、高密度なインターフェースと高速なデータ転送機能を備えている点が特徴で、従来のCOM Expressで対応できなかったハイパフォーマンスのアプリケーションにも使えるように開発されました。これにより、様々な用途に適したコンピューティング機器を構築することができます。
コンピューター・オン・モジュールの利点は、設計や動作検証に時間がかかるプロセッサー周辺を、モジュールの形で動作検証された状態で利用できる点で、システムの設計者は比較的設計の容易なモジュールを搭載するキャリアボードを設計することでシステムを構築できるため、開発コストや時間を節約できる点です。
COM-HPCモジュールの使用用途
COM-HPCモジュールは様々な用途での活用が期待されています。クラウド経由での処理で問題となっていた、レイテンシーの低減や、エネルギーを大量に消費する長距離データ トラフィックを削減することの必要性が高まっていることによって、エッジでのサーバーテクノロジーの導入が急速に進んでいます。以下はその一例です。
1. エッジサーバー
工場における生産ライン監視、異常検知、品質管理などに最適です。リアルタイム処理能力と高精度なAI処理により、製造工程の効率化と品質向上に貢献します。
2. 自動車
自動運転システムにおける環境認識、物体検知、経路計画などに最適です。リアルタイム処理能力と堅牢性により、安全で信頼性の高い自動運転を実現します。
3. ロボット
ロボットの自律制御、物体認識、作業支援などに最適です。リアルタイム処理能力と高精度なAI処理により、より高度で柔軟なロボットシステムを実現します。
4. 医療機器
医療画像解析、診断支援、治療計画などに最適です。高精度なAI処理能力により、より正確な診断と効果的な治療を提供します。
5. スマートシティ
交通渋滞緩和、犯罪防止、公共サービスの効率化などに最適です。リアルタイム処理能力と高精度なAI処理により、より安全で快適な都市環境を実現します。
COM-HPCモジュールの原理
COM-HPCモジュールは高性能な演算処理部品を小さな基板に集積することによって、高性能な計算リソースを提供する機器です。これらのモジュールをベースボードやキャリアボードに取り付けることで、様々なシステムを構築することが可能です。他のコンピューターモジュールと同様に、プロセッサーやメモリ及び入出力インターフェースなどで構成されます。
プロセッサーは演算処理を実行するパーツです。COM-HPCモジュールは高性能なマルチコアプロセッサーを搭載している点が特徴です。x86アーキテクチャーや、ARMアーキテクチャーのプロセッサーが使用されます。
メモリは処理データの一次保存に使用されるパーツです。RAMなどの高速なメモリが搭載されています。これにより、大規模なデータセットや複雑な計算を効率的に処理することができます。
COM-HPCモジュールには高速なデータ転送を可能にする様々な入出力インターフェースが搭載されています。PCI ExpressやEthernetなどがその一例です。
COM-HPCモジュールの選び方
COM-HPCモジュールを選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。
1. CPU処理能力
性能要件に基づいて適切なCPU処理能力を選択する必要があります。コア数やクロック速度、キャッシュ容量などを参考に選定します。用途によっては複数のCPUを搭載したモジュールが必要な場合もあります。
2. I/O (入出力)
使用する用途や接続する周辺機器によって、必要な入出力ポートの数や種類が異なります。適切なI/O機能を備えたCOM-HPCモジュールを選択し、必要な機能に対応することが重要です。EthernetやUSB、PCI Expressなどのインターフェースが一例です。
3. メモリ
メモリ容量とメモリバスの帯域幅は、システムの性能に直接影響します。大規模なデータセットを処理する場合や、メモリ集約型のアプリケーションを実行する場合には、適切なメモリ容量を選択する必要があります。また、アプリケーションやデータの保存方法に応じて、適切なストレージの選定も重要です。
4. 電源
使用する環境に応じて、適切な電力要件を満たすCOM-HPCモジュールを選択する必要があります。電力効率の高いモジュールは省エネルギーにも寄与します。
5. 動作環境
モジュールが使用される環境の温度範囲に応じて、動作温度範囲などが適切であることを確認します。厳しい環境下での使用が予想される場合は、広い動作温度範囲を有するモジュールを選択します。
6. サイズ
COM-HPCモジュールには下記の種類があり、アプリケーションにより適切なサイズを選択できます。
- Size A (95 x 120 mm)
- Size B (120 x 120 mm)
- Size C (160 x 120 mm)
- Size D (160 x 160 mm)
- Size E (200 x 160 mm)
- COM-HPC Mini (95 x 70 mm)
本記事はCOM-HPCモジュールを製造・販売するコンガテックジャパン株式会社様に監修を頂きました。
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