ペルチェクーラー

ペルチェクーラーとは

ペルチェクーラー (英: Peltier Cooler) とは、熱電素子の1つであるペルチェ素子を用いた冷却装置です。

冷媒を使用せずに電力のみで冷却を行うため、環境負荷が少ない点が特徴です。国外ではPeltier ModulesまたはThermoelectric Cooler  (TEC) と呼称されます。

ペルチェ素子は半導体素子の1つで、通電するとペルチェ効果が発生して2面に温度差が発生します。一般的にペルチェ素子は軽量かつ小型の板状で、2mm~5mmの厚みです。ペルチェ素子の構造は、セラミック基盤で「n型熱電素子」「p型熱電素子」「電極」を挟んだ構成です。

ペルチェクーラーの使用用途

ペルチェクーラーは一般的な冷却設備よりも小型なため、冷却が必要な設備に組み込みやすい点がメリットです。このメリットから、さまざまな機器の冷却に使用されます。

代表的な使用用途は、コンピュータやサーバーなどの電子機器の冷却です。特に、小型の冷却要求がある場合や熱源が制限されている状況で有効です。産業機器に対しては、分電盤制御盤にも使用されます。

そのほか、冷蔵庫やエアコン、除湿器などにも使用されています。近年では暑熱対策のために、首掛けモバイルクーラーとしても製品化されています。また、ペルチェクーラーの機能を取り入れたスマートフォン用のスマホクーラーなども多いです。

また、レーザーデバイスの冷却にも有用です。レーザーダイオードや光ファイバーレーザーなどの高出力レーザーデバイスは、冷却が欠かせません。そこで、冷却用に小型かつ電動のペルチェクーラーが使用されます。

ペルチェクーラーの原理

ペルチェクーラーは2種類の異なる金属同士を貼り合わせることで製作されます。双方の金属に電位差を生じさせて、一方の金属から他方の金属へ熱の移動が生じるペルチェ効果を利用しています。用いる金属はビスマス系、シリコンゲルマニウム系、コバルトスズ系、鉄系などの組み合わせです。

ペルチェ素子に電圧を印加することで、冷却プレートから発熱プレートへ熱を移動する原理です。印加する電流によって温度制御が可能です。電流の極性を反転させることで冷却側と放熱側を反転させられるため、対象を温めることも可能です。

放熱側では大量の熱が発生するので、水冷装置やヒートシンクなどが付けられることが多いです。また、接触する面に熱伝導素材を挟むことで、放熱性能を高めた製品も存在します。

吸熱側は、冷却板を取り付けることで吸熱効率を最大化しています。冷却板との接触面にも熱伝導素材を挟むことで吸熱効率が上がります。ただし、冷却温度は最低5℃程度が限界です。

ペルチェクーラーの選び方

ペルチェクーラーは要求する能力に合わせて製品サイズを調整することが可能です。また、冷却のみに焦点を置いた製品は低価格で安定して供給可能です。高性能な製品も存在しているため、精密な操作が必要な場合には制御機器も付属することができます。

このように、性能や価格、サイズを用途に合わせて選択できることがペルチェクーラの利点です。民生用ではデザイン性の向上にも力を入れることが可能であり、産業用では求める能力に合わせて性能を最大限に引き出すことができます。

ペルチェクーラーのその他情報

ペルチェクーラーの未来

ペルチェクーラーは性能の向上や低価格生産が可能となりました。また、2019年には東京大学の生産技術研究所にてペルチェ素子よりも冷却性能が10倍も高い値が期待できる素子が開発されました。

半導体ヘテロ構造と呼ばれるガリウムヒ素やアルミニウムガリウムヒ素の接合で、冷却素子として活用できるように開発されました。冷却したい箇所を高効率で冷却可能なため、電気の省エネ化や設備性能の大幅改善が期待されます。今後、新技術が実用可能となれば、更なる性能の向上も可能です。

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