監修:株式会社小森安全機研究所
レーダーセンサーとは
レーダーセンサーとは、電波を照射して跳ね返ってきた反射波から物体や人などを検知する仕組みのセンサーです。
レーダー (英: Radar) とは、radio detecting and rangingから頭文字を取ったアクロニムです。照射する電磁波には可視光線よりも波長の長いマイクロ波が用いられます。各種静止物体、移動物体や人の検出・監視・動体の速度や距離の計測を行うことができ、様々な分野で広く活用されている技術です。
国際標準化機構(ISO)の規格13849-1のパフォーマンスレベル(PL)、国際電気標準会議(IEC)の規格61508の安全度水準(SIL)や、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.)の製品安全規格であるUL規格に準拠したものがあり、安全性に関わる場所で使用する場合はそうした規格に準拠しているかどうかも検討材料の一つになります。
レーダーセンサーの使用用途
レーダーセンサーは、物体検知・速度や距離の計測を行うことができる装置です。
1. 産業用途
産業用途では、衝突回避や侵入防止など、主に安全対策を目的として使用されます。主な用途としては下記のようなものがあります。
- 工場における各種装置や工業用ロボット、切断機などと人との接触防止
- 衝突回避システム (乗用車、トラック、フォークリフトなどの車両および、キャリア、ハンドラー、シップローダーなどの港湾機械)
- 車両センサー・車載センサー (車両の移動速度や距離、物体の有無等を判定する)
- 高精度液面検出・振動モニタリング
また、車載センサーは、自家乗用車においても運転支援機能として近年搭載されるようになっています。
2. 人感センサー/バイタルセンサー
レーダーセンサーは、人体を検知することができ、更に心拍数や呼吸数を非接触で取得することが可能です。そのため、人感センサーやバイタルセンサーとして使用される場合もあります。ただし、現段階では人体センターとして人体のみを検出することは難しく、人体以外の動きを検知する事があります。
- 複数人のバイタル検出や複数の動体の追跡
- 成人および乳幼児のベッドの見守り (脈拍と呼吸の計測およびベッドからの転落検出)
- 防犯カメラの機能拡張・交通量モニタリング
レーダーセンサーは非接触式であることと、イメージセンサーと異なり映像を伴わないことが特徴です。そのため、浴室やトイレなどのプライバシー配慮が求められる空間や、機密性の高い施設など、映像での監視を行うことが難しいシチュエーションにおいても使用しやすいというメリットがあります。
3. ポータブルデバイス
レーダーセンサーは、一部のスマートフォンに搭載されており、手の動きを追跡することでジェスチャーコントローラーとして使用されています。ウェアラブルデバイスや各種ポータブルデバイスにも搭載されていくことが見込まれている技術です。
レーダーセンサーの原理
1. 概要
レーダーセンサーは、マイクロ波や、さらに波長の長いミリ波を一方向へ照射し、物体に反射して戻ってきた反射波を解析することにより物体の位置などを検知します。
日本でレーダーセンサーに使用されている帯域には、79GHz帯 (帯域幅4GHz幅、距離分解能3.75cm) や60GHz帯 (帯域幅7GHz幅、距離分解能2.14cm)などがあります。また、レーダーセンサーは風や雨、霧、煙、粉体、光の影響を受けず、湿度、温度によっても検出能力は変化しません。このため、屋外環境や煙や粉体の多い環境でも高精度の検出が可能です。
2. FMCWレーダー (周波数変調連続波レーダー)
レーダーセンサーの中には、FMCWレーダーと呼ばれる連続波レーダーを採用しているものもあります。FMCWレーダーは、周波数変調した連続波を送信し、送信波と反射波の周波数差 (ビート周波数) から距離を求める方法です。
レーダーセンサーの種類
レーダーセンサーは、様々な分野で使用されているため、製品の種類も様々なものがあります。
1. 産業用
工場などで使用する産業用製品は、煙、ほこり、切粉、など、機械加工による廃棄物に耐えるように設計されており、製造機器などと接続して、機器の停止や再起動防止ができるようになっています。また、車載用や車両検知用などの製品は、屋外で使用されることを念頭に置いて雨などに強い構造になっていることが多いです。
2. 民生用
民生用機械では、人のバイタル検出や細かい動作の追跡などを目的とすることが多いため、脈拍検出、呼吸検出、動体検出などを想定した設計となっています。人が居るか居ないかだけではなく、人数や位置、動きを検出するなど、精緻な検出ができる製品も多いです。
本記事はレーダーセンサーを製造・販売する株式会社小森安全機研究所様に監修を頂きました。
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