テトラゾール

テトラゾールとは

テトラゾール (英: tetrazole) とは、分子式CH2N4で表される複素環式芳香族化合物です。

分子量は70.05で白色の板状結晶です。環内に窒素を含む五員環化合物はアゾール (英: azole) と呼ばれますが、4を意味する接頭語テトラ (英: tetra) をアゾールの前に付けて、テトラゾールと呼ばれます。五員環の構成元素の内4つが窒素原子、1つが炭素原子となっています。また、ヒュッケル則を満たしており、芳香族化合物としての性質を有しています。

テトラゾールは、1H‐1,2,3,4‐テトラゾールと2H‐1,2,3,4‐テトラゾールの互変異性体として存在しており、溶液で両異性体を分離することはできません。

テトラゾールの使用用途

1. 自動車用エアバッグシステム

テトラゾールの誘導体である5-アミノテトラゾールは、熱や衝撃により多量の窒素ガスを放出することが知られています。このような性質を活かし、自動車用エアバッグシステムのガス発生剤として、毒性や爆発性等種々の問題を持つアジ化ナトリウム系ガス発生剤代替として用いられることがあります。

2. 電子材料分野

電子材料分野では、エッチング用途として用いられています。エッチングとは、化学薬品などの腐食作用を利用した表面加工の技法です。

プリント基板や半導体の電子回路は、基盤に貼り付けた銅箔から不溶部を取り除くエッチングにより形成されます。テトラゾール誘導体を銀用のエッチング液などに添加することで、銀が過剰にエッチングされにくくなります。

3. 創薬化学分野

テトラゾールはカルボン酸と同程度の酸性を示しながらも脂溶性が高いという特徴を有しています。そこで、カルボン酸をテトラゾールで置換すれば、同じく脂溶性の生物細胞と相性が良いと考えられ、服用した薬物が全身に循環する割合が向上すると期待できます。このようなことから、セフェム系抗生物質やサルタン系血圧降下剤の構造の一部となっています。なお、これら医薬品は欧州を中心とするジェネリック医薬品メーカーが生産しているようです。

4. その他

その他の用途としては、核酸医薬の分野でも使用されています。核酸合成法の主流であるホスホロアミダイト法 (1980年代に開発) の中で、カップリング反応を行う工程においてテトラゾールは用いられています。

テトラゾールのその他情報

1. テトラゾールの性質

融点は89~91 ℃、沸点は156~158 ℃、白色の板状結晶で、昇華性があります。

水やエタノールアセトン、そして酢酸には可溶ですが、エーテルやベンゼンには難溶です。窒素原子に付いた水素原子はプロトンとして外れやすいため、水溶液は酸性を示します。また、金属と置換してできるテトラゾールの金属塩は、加熱したり、強くたたいたりすると爆発します。

1位の窒素原子に結合したプロトンはpKa = 8.2で、カルボン酸と同程度の酸性を示します。このため、カルボン酸の等価体として用いられることがあります。熱や衝撃により爆発することがあります。

2. テトラゾールの製造法

シアン化水素 (HCN) とアジ化水素 (HN3) を反応させることにより、製造することができます。

また、テトラゾール誘導体はニトリル (R-C≡N) とアジ化化合物 (-N3を有する化合物の総称) 誘導体の付加環化反応により得られます。

3. テトラゾールの取り扱い

消防法に定める、第5類アゾ化合物 第1種自己反応性物質に該当します。

湿気と熱を避ける必要があり、保管時には不活性ガスの充填が必要です。熱、火花、裸火のような着火源から遠ざけ、粉砕、衝撃、摩擦が起こる取り扱いをしないよう気を付けて下さい。大量爆発の危険性があります。皮膚と眼に対して刺激があるため、使用時は保護手袋と保護眼鏡を着用するようにします。皮膚に付着したり目に入った場合は、多量の水で注意深く洗い流すようにしましょう。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/288-94-8.html

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