スカンジウムとは
スカンジウムとは、元素記号がSc 、原子番号が21の元素です。
スカンジウムは第3族元素、希土類元素、遷移元素です。銀色の軟らかい金属であり、空気中で酸化されることによって淡黄色もしくは淡桃色の不動態が生成します。また、常温の状態でハロゲン元素と反応するという特徴も持っています。
地球上において、スカンジウムはとくに希少な元素ではありません。存在度は15-25ppmと予想されており、元素の中で50番目に多いと言われています。しかし、濃縮されて存在している訳ではなく、鉱物中に少量混ざっています。
スカンジウムの使用用途
スカンジウムは、ハロゲン元素との反応性が高いだけでなく、価格も高いため、元素や化合物の状態を問わず、あまり応用されてきませんでした。しかし、近年は新素材として注目を集めています。
最も注目を集めているのが、照明への利用です。ヨウ化スカンジウム (ScI3) をメタルハライドランプに使用することでより強い光が得られることが報告されました。それ以外にも、アルミニウム合金に添加したり、ニッケル・アルカリ蓄電池の陽極にスカンジウムを加えて電圧の安定や長寿命化を計るなどの用途も見出されています。
スカンジウムの重量比で考えた主な用途は、高機能素材であるアルミニウム-スカンジウム合金です。一部の航空宇宙用部品のほか、自転車、野球、射撃、ラクロスなどのスポーツ用品の材料になっています。
スカンジウムの性質
スカンジウムの比重は2.99、融点は1,541°C、沸点は2,836°Cです。スカンジウムは水や希酸に、徐々に溶解します。熱水や酸には容易に溶けます。
ただし、フッ化水素酸と硝酸を1:1で混合した溶液には反応しません。これは不動態層が形成されるためだと考えられています。スカンジウムを空気中で燃焼すると、黄色い輝く炎を発し、酸化スカンジウム (III) を形成します。通常スカンジウムの酸化数は+3です。
常温常圧で安定なスカンジウムの結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP、α-Sc) です。加熱することによって、さらに2つの形態 (β、δ) があります。それぞれの結晶構造は、立方最密充填構造と面心立方格子です。
スカンジウムのその他情報
1. スカンジウムの名称
スウェーデンの分析学者であるラース・フレデリク・ニルソン (英: Lars Fredrik Nilson) が、スカンジナビア (英: Scandinavia) を意味するラテン語のスカンジア (英: Scandia) から、スカンジウムと命名しました。
なお、スカンジウム源はスカンジナビア半島やマダガスカル島で産出される希少鉱石のトルトバイタイト (英: Thortveitite) 、ユークセナイト (英: Euxenite) 、ガドリン石 (英: Gadolinite) などが知られています。例えば、トルトバイタイトには最大で45%のスカンジウムが、酸化スカンジウムとして含まれています。
2. スカンジウムの生成
カリウム、リチウム、塩化スカンジウムの共晶混合物を、700〜800°Cで電気分解することで、金属スカンジウムが生成されます。
3. スカンジウムの同位体
天然に存在するスカンジウムの同位体は、45Scの1種類のみです。スカンジウムには13個の放射性同位体が知られています。その中で最も安定な46Scの半減期は、83.8日です。
また、47Scの半減期は3.35日、48Scの半減期は43.7時間、残りのすべての半減期は4時間以下であり、その多くは2分以下です。さらにスカンジウムには、100以上の核異性体が存在します。スカンジウムの同位体の質量数は、40から54の間を取ります。
質量数が45未満のものは電子捕獲などによって崩壊し、その生成物はカルシウムです。それに対して、質量数が45より大きいものは主にベータ崩壊が起こり、崩壊生成物はチタンです。スカンジウムの安定同位体は、超新星爆発時に起きるr過程により合成されます。