スルホラン

スルホランとは

スルホランとは、無色~黄褐色の澄明 (ちょうめい) ~微濁な液体の有機化合物です。

化学式はC4H8O2S、分子量は120.00、CAS登録番号は126-33-0です。ブタジエンと亜硫酸ガスとの反応で生成するスルホレン (Sulfolene, Dihydrethiophene-1, 1-dioxide) を接触還元することで生産されます。

スルホランの使用用途

スルホランの使用用途は主に下記の通りです。

1. 反応溶媒

スルホランは非プロトン性の極性溶媒として働きます。化合物の分極を増大させ、また化合物をより多く溶解させることで反応性を向上させます。非プロトン性の溶媒であるので、アニオンに対する溶媒和が小さくアニオンの活性も増強されます。

これに対し、カチオンは溶媒和され安定化されます。このためヘテロ原子のアルキル化反応やアシル化反応、芳香族嗅覚置換反応、ダイポール付加反応、水素化ホウ素ナトリウムによる還元反応、フリーデルクラフト型ニトロ化反応などで使用されます。同類の非プロトン性極性溶媒であるジメチルスルホキシドやDMFと比較して副反応が低いというメリットがあります。

2. 抽出溶媒

石油精製プロセスで灯油や軽油を得る方法は次の通りです。まず原油を蒸留した時の蒸留残差を減圧蒸留します。この減圧蒸留した各留出物に対し接触還元や熱分解を施します。ここで得られる灯油や軽油はB (ベンゼン) 、T (トルエン) 、X (キシレン) などの芳香族化合物を含みます。この芳香族化合物は燃焼効率を低下させたり、燃焼後、人体や環境に悪影響を与えます。また、芳香族化合物自体は化学原料としての一定の需要があります。

そこで灯油や軽油と芳香族化合物を分離し灯油や軽油を精製する操作が必要となります。この操作は芳香族溶媒抽出法と呼ばれます。溶媒抽出法では、さまざまな極性溶媒が検討されていますが、スルホランを用いる方法をスルホラン法と言います。

そのほか天然ガスなどを精製する際に発生する排ガスから酸性ガスを抽出する溶媒、脂肪族炭化水素からメルカプタンや三塩化リンを抽出する溶媒、ナフサから硫黄を抽出する溶媒として使用されます。

3. 高分子用溶媒

スルホランはポリアクリロニトリルやポリフッ化ビニルなどを良く溶かします。また、ポリアミドやポリアクリロニトリルなどを重合により生成する際の反応溶媒としても使用されます。

4. 添加剤

スルホランはポリビニルアルコールポリ塩化ビニル、ポリアミドに可塑剤として転化されます。高分子の粘性を保持するための安定剤やカラー写真としての分散剤としても転化されます。

5. リチウム電池の電解液

スルホランは、沸点が高く、化学的にも安定な化合物です。さらにリチウム塩化合物を溶解させる性質があるため、リチウムイオン電池の電解液として使用されます。

6. その他

その他では半導体基板の洗浄時の洗浄溶媒、コンデンサの電解液、ポーラログラフィー用溶媒として用いられています。

スルホランの性質

スルホランは、融点が27℃、沸点が285℃、引火点が174℃、水に極めて溶けやすいです。ほとんどすべての溶媒と混和します。また脂肪族炭化水素よりも芳香族炭化水素の溶解性がよい性質があります。溶解力が強く、通常の高分子を溶解させます。さらに溶解度は小さいが、イオウを溶解することもできます。

熱安定性は220℃まではきわめて良好ですが、これ以上では徐々に亜硫酸ガスを 発生して分解します。無水塩化コバルト (Ⅱ) 、三フッ化ホウ素、ボラン類と錯体を形成します。

スルホランのその他情報

法規情報

スルホランは、消防法で「危険物第四類・第三石油類・危険等級Ⅲ 水溶性」に指定されているだけで、毒劇法や安衛法といったその他の主な国内法規での指定はありません。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0570JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_126-33-0.html

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