過硫酸アンモニウム

過硫酸アンモニウムとは

過硫酸アンモニウムとは、アンモニアの過硫酸塩で、別名ペルオキソ二硫酸アンモニウムとも呼ばれる物質です。

分子式(NH₄)₂S₂O₈で表され、分子量は228.20g/molです。化学物質固有の番号であるCAS番号は、7727-54-0が割り当てられています。

過硫酸アンモニウムの製造方法には硫酸アンモニウム利用する方法が挙げられます。具体的には、陽イオン交換膜で隔てられた電解槽の陽極側に硫酸アンモニウム水溶液を供給することで過硫酸アンモニウムを生成する方法です。

この製造方法は連続運転が簡単であるとともに、陰極に追加原料を供給する必要が無いため、高効率で過硫酸アンモニウムを製造することができるという利点があります。

常温常圧では、無色の結晶または白色の粉末として存在しており、弱い不快臭が生じる場合があります。水に対する溶解度は20℃で58.2g/100mlと溶けやすいものの、エタノールジエチルエーテルにはほとんど溶けないという性質をもっています。

過硫酸アンモニウムの使用用途

過硫酸アンモニウムは、主に酸化漂白剤、パイポ除去剤、金属の表面処理剤、小麦粉の改質剤、重合開始剤、プリントエッチング剤など幅広い分野に使用されています。金属の表面処理剤や酸化漂白剤には過硫酸塩類が使用されるため、過硫酸アンモニウムだけでなく、過硫酸カリウム過硫酸ナトリウムも使用されることがあります。

小麦粉の改質剤として使用すると、小麦粉自体を漂白するだけでなく、パンの熟成を促進するなど様々な効果が得られます。過硫酸アンモニウムは、アクリルアミドの化学重合法の促進剤として用いられる場合も多いです。テトラメチルエチレンジアミン (TEMED) と一緒に用いることにより、過硫酸塩から酵素ラジカルが誘発され、そのラジカルがアクリルアミドの重合を開始します。

製造されたアクリルアミドは工業用途において、紙力増強剤や水処理剤、土壌凝固剤、漏水防止剤、化粧品 (シェービングジェルや整髪剤) などに用いられるポリアクリルアミドの原料として使用されます。プリント基板のエッチング剤は金属や金属酸化物を腐食させる薬剤であり、主に金属やガラス、半導体などを対象に自身がもつ腐食性を利用して表面を削る表面加工法として用いられます。

過硫酸アンモニウムの性質

過硫酸アンモニウムは、消防法において第1類酸化性固体、ペルオキソ二硫酸塩類に指定されています。そのため、自身は燃焼しないものの、可燃物と混合すると発火して激しく燃焼するという特徴を持っているため、取り扱いには注意が必要です。また、水溶液自体は酸性であり、水生生物においても有害であることが明らかとなっています。

過硫酸アンモニウムは強力な酸化剤であり、溶液中で鉄、アルミニウム粉末、銀塩と激しく反応します。加水分解した際には、酸性亜硫酸アンモニウムと過酸化水素を生成し、強い酸化作用を示します。加熱すると、有毒で腐食性のヒューム(アンモニア、窒素酸化物、硫黄酸化物など) を生じます。

過硫酸アンモニウムのその他情報

1. 過硫酸アンモニウムの法規情報

  • 消防法: 第一類酸化性固体 ペルオキソ二硫酸塩類に該当
  • 毒物及び劇物取締法: 非該当
  • 化学物質排出管理促進法 (PRTR法) : 第1種指定化学物質に該当
  • 船舶安全法及び航空法: 酸化性物質類・酸化性物質に指定

2. 取扱い及び保管上の注意

  • 可燃物や還元剤との接触を避ける。
  • 周辺で高温物を使用しない。
  • 保管場所は壁、柱、床を耐火構造とし、はりは不燃材料で作る。
  • 保管場所は屋根を不燃材料で作るとともに、金属板その他軽量な不燃材料でふいて、天井を設けない。
  • 保管場所には貯蔵や取扱いに必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
  • 直射日光や湿気を避けて保存する。
  • ポリエチレン容器の保存を推奨する。
  • 金属容器で保存した際は、過硫酸アンモニウムが水分の存在下で加水分解により生じた硫酸によって、腐食する要因となるため注意する。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0947.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-2050JGHEJP.pdf
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202003007649507846

https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0101-2050.html

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