臭化銅とは
臭化銅とは、わずかにうすい黄緑色またはうすい灰緑色をした結晶~粉末、塊の無機化合物です。
臭化銅は毒劇法で「劇物・包装等級3」、安衛法では「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物」に指定されています。危規則で「有害性物質」、航空法で「その他の有害物質」、海洋汚染防止法で「海洋汚染物質 (PおよびPP物質) 」、水濁法では「指定物質」、大気汚染防止法で「有害大気汚染物質」にも指定されています。
臭化銅の使用用途
臭化銅は主に、合成原料や触媒として利用されています。最近注目されているのは、太陽光発電に使用される太陽電池です。クリーンエネルギーの一つであり、利用できる可能性も示唆されています。
太陽光発電では、「エネルギー供給元の光をいかに効率よく吸収できるか」「その吸収したエネルギーをできるだけ多く電気に変えられるか」という変換効率がポイントです。臭化銅とその他の銅化合物との合成で得られる銅化合物が、この太陽電池の特性に寄与できるという実験結果が出ています。
臭化銅の性質
臭化銅には、臭化銅 (I) と臭化銅 (II) が存在します。臭化銅 (I) は、化学式がCuBr、分子量が143.45、融点が504℃の反磁性の固体です。臭化銅 (I) は酸や塩基に溶け、水にわずかに溶けます。
臭化銅 (I) は銅 (II) の不純物のために、よく着色されていますが、純粋な臭化銅 (I) は無色です。なお、臭化銅のCAS登録番号は7787-70-4です。
臭化銅の構造
臭化銅 (I) の構造は、硫化亜鉛と同様のポリマー構造です。すなわち臭化物イオンによって、四面体のCu中心が相互連結された特徴的な四配位のポリマー構造を取っています。そのため臭化銅 (I) は、ほとんどの溶媒には溶けません。
臭化銅 (I) をルイス塩基で処理すると、付加化合物に変わります。具体的にはジメチルスルフィドを用いると、無色の錯体であるCuBr (S(CH3)2) が形成します。CuBr (S(CH3)2) の銅は、線形ジオメトリで二配位です。
他のソフトな配位子を使用すると、臭化銅 (I) から関連した錯体を作ることも可能です。例えば、トリフェニルホスフィンは、複雑な構造を取るCuBr (P(C6H5)3) を与えます。
臭化銅のその他情報
1. 臭化銅 (I) の合成法
一般的に臭化銅 (I) は、臭化物の存在下で、亜硫酸塩によって銅 (II) 塩を還元することで合成されます。臭化水素酸に銅粉末を溶解させることで、塩化銅 (I) の合成と同じような方法でも合成可能です。
2. 臭化銅 (I) の応用
臭化銅 (I) は有機合成に広く用いられています。ザンドマイヤー反応 (英: Sandmeyer reaction) において臭化銅 (I) は、アニリン化合物を対応する臭化アリールへ変換できます。
また、CuBr(S(CH3)2) は、有機銅試薬の合成に広く用いられている錯体です。関連するCuBr錯体は、原子移動ラジカル重合 (英: Atom Transfer Radical Polymerization)や銅触媒クロス脱水素カップリング (英: Cross Dehydrogenative Coupling) などの触媒に使われています。
3. 臭化銅 (II) の性質
臭化銅 (II) は二臭化銅とも呼ばれる、深緑色の固体です。臭化銅(II)の化学式はCuBr2、分子量は223.37、融点は498℃です。主に臭化銅 (II) は、写真の現像や有機合成で臭化剤として使用されています。また臭化銅 (II) は、水、鉱酸、アセトン、エタノールなどに易溶です。
金属銅と臭素水の反応によって得た生成物を、真空中で乾燥することで、黒色の臭化銅 (II) の無水物の結晶を合成可能です。臭化銅(II)には二水和物や四水和物が知られていますが、容易に水を失います。
臭化銅 (II) は飲み込むと有害です。皮膚、目、呼吸器を刺激し、中枢神経系、脳、目、腎臓、肝臓などへ影響を及ぼします。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-1911JGHEJP.pdf