ボンド磁石

ボンド磁石とは

ボンド磁石は、微粒子状に砕いた磁石をゴムやプラスティックなどに練り込んで加工成形された磁石の総称です。

通常のフェライト磁石を使ったものは、冷蔵庫やショーケースのドアシールに使われたり、板状にして表面をプラスティック加工することでホワイトボードとして利用されています。

また、ネオジム磁石をはじめとした磁力の高い希土類磁石を用いたものは、さまざまなかたちに成形され小型モーターや電子部品、電車の駆動モーターなど工業的にも利用されています。

ボンド磁石の使用用途

ボンド磁石は自由に設計・製造できることに加え、製造後の加工成形も可能です。

フェライト磁石を使ったものは、磁石テープ、磁石シートとして日常生活で手軽に利用されているほか、冷蔵庫のドアに使われたりホワイトボードとして利用されています。

ネオジム磁石やサマリウム鉄窒素磁石などの極めて磁力の高い磁石を用いたものは、小型モータにくみこまれハードディスクに利用されたり、自動車や電車、エレベータなどの駆動モーターとしても活用されています。

ボンド磁石の原理

現在工業的に使用されている永久磁石は、鋳造磁石、焼結磁石、ボンド磁石に大別されます。

このうちボンド磁石(Polymer bonded magnet)は、高分子樹脂やゴムなどのバインダーにフェライト磁石や希土類磁石の微粒粉末(磁粉)を高濃度で練り混ぜて分散させた磁石コンパウンドから製造されます。

製造後、精度よく複雑な構造に加工成形することも可能で、割れにくい、欠けにくい等、優れた機械的特性を持つだけでなく、鋳造磁石、焼結磁石では不可能な金属との一体成形、薄型化や長尺広幅化も容易に実現できます。

量産も可能で工業材料としてたくさんの優れた長所を持っています。

特に高い磁力を持つ希土類磁石を利用したものは、現在広く使われている小型モーターや電子部品には不可欠で、ボンド磁石自体の高性能化によりさらなる小型化、効率化が可能になります。

また発電機の小型化・ハイパワー化にも希土類ボンド磁石は有用で、今後エネルギー生成分野での活用も広がると期待されています。

ボンド磁石と焼結磁石の違い

ボンド磁石は磁性粉末を樹脂で固めて作られます。それに対して焼結磁石は、磁性粉末をプレス成形した上に高温で焼き固めることにより作られます。

磁気特性と耐熱性という観点から比較すると、樹脂を混ぜて製造されているボンド磁石よりも、そうではない焼結磁石の方が優れています。これは、ボンド磁石に混合されている樹脂が、非磁性の物質であるためです。

しかし、寸法の精度に関しては、複雑な加工が可能なボンド磁石の方が優れています。なぜならば、焼結磁石は製造の過程での焼結収縮が大きいためです。

ボンド磁石がモータの進化を支える

環境問題が深刻化する今日、モータの市場も大きく変化しています。モータは、自動車や家電など、様々なシーンで使用されており、日本国内の総消費電力に占めるモータの割合は大きいものとなっています。このモータに使う電力を節約することは、低炭素社会を実現するためにとても重要な課題であるといえます。

そうした背景の中、需要が高くなっているのがPMモータです。PMモータとは、ロータ(回転子)部分に永久磁石を使用した同期モータのことです。

永久磁石を使用するPMモータは、そうではないモータ(誘導モータなど)と比較すると省エネルギーかつ高効率です。なぜならば、PMモータはロータに2次電流が流れないようになっているため、ロータにロスが発生しないからです。

PMモータは、ロータ部分の構造によってさらに2種類に分けられます。SPMモータとIPMモータです。SPMモータはロータ部分に永久磁石を「貼りつけた」もので、IPMモータはロータ部分に永久磁石を「埋め込んだ」ものです。磁石を埋め込む構造のIPMモータの方が、高速回転が可能で機械的な安全性が高くなっています。

これらのPMモータの技術を支えているのは磁力の強い希土類磁石ですが、希土類磁石は中国の輸出規制などで価格の高騰や供給量の不安定さなどの調達リスクが指摘されています。

しかし近年、希土類磁石ではないサマリウムを原料としたボンド磁石を活用したIPMモータが発明されるなど、新技術の開発が進んでいます。ボンド磁石は、モータの進化を支えているのです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/49/6/49_6-4/_pdf/-char/ja
https://www.shinetsu-rare-earth-magnet.jp/design/words/sintered_m.html
http://www.htc.co.jp/12cyuseishi/kaisetsu/Glossary/21j070.pdf
https://www.e-mechatronics.com/mailmgzn/backnumber/201904/mame.html
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1901/25/news047.html

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