過ホウ酸ナトリウム

過ホウ酸ナトリウムとは

過ホウ酸ナトリウムの実際の構造 (一水和物)

図1. 過ホウ酸ナトリウムの実際の構造 (一水和物)

過ホウ酸ナトリウム (英: Sodium perborate) とは、組成式NaBO3で表される無機化合物です。

過ホウ酸ナトリウムは、形式上過ホウ酸HBO3のナトリウム塩として表されますが、実際には遊離酸としての過ホウ酸は存在していません。一般的に、一水和物や四水和物の状態で存在していますが、実際には図1のようなホウ素原子に水酸化物イオンが結合した分子構造をしています。

四水和物を加熱すると、過ホウ酸ナトリウム一水和物を得ることができます。CAS登録番号は、無水物が7632-04-4、一水和物が10332-33-9、四水和物が10486-00-7です。なお、過ホウ酸塩は他に、アンモニウム塩などが存在します。

過ホウ酸ナトリウムの使用用途

過ホウ酸ナトリウム一水和物の主な使用用途は、 織物用漂白剤、洗剤、口内洗浄液の成分、実験用試薬、コールドパーマの中和剤、電気めっき剤、殺菌剤、消臭剤、バット染色の顕色剤などがです。また、歯を白くするホワイトニングでは、過ホウ酸ナトリウム一水和物や過酸化水素、過酸化尿素が用いられています。

過ホウ酸ナトリウム四水和物は、一水和物と同様に洗剤や医療薬品として幅広く利用されています。四水和物の主な用途は衣料品用漂白剤です。羊毛や綿など様々な繊維を漂白することができるだけでなく、染料を定着させることもできます。

過ホウ酸ナトリウムの性質

1. 過ホウ酸ナトリウム一水和物の性質

過ホウ酸ナトリウム一水和物の基本情報

図2. 過ホウ酸ナトリウム一水和物の基本情報

過ホウ酸ナトリウム一水和物NaBO3・H2Oは、分子量99.8であり、60℃以上で分解します。常温常圧での外観は、白色の結晶または粉末です。密度は2.12g/mL、水への溶解度は15g/L (20℃) です。

2. 過ホウ酸ナトリウム四水和物の基本情報

過ホウ酸ナトリウム四水和物の基本情報

図3. 過ホウ酸ナトリウム四水和物の基本情報

過ホウ酸ナトリウム四水和物NaBO3・4H2Oは、分子量153.88、融点は60℃以上で分解、沸点258℃であり、常温常圧で無色無臭の固体です。水への溶解度は 2.3g/100mL (20℃) です。過ホウ酸ナトリウムの水溶液は、過酸化水素を遊離するため、酸化作用があります。

過ホウ酸ナトリウムの種類

過ホウ酸ナトリウムは、一般には主に研究開発用試薬製品として販売されています。ほとんどの市販品は、四水和物ですが、稀に一水和物も販売されています。容量の種類には、100g、500g、2500gなどがあり、実験室で取り扱いやすい容量で販売されています。室温で保管可能な試薬製品です。

過ホウ酸ナトリウムのその他情報

1. 過ホウ酸ナトリウムの合成

過ホウ酸ナトリウムは、2段階の合成反応によって得ることができます。

  1. ホウ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの反応によるメタホウ酸ナトリウムの合成
  2. メタホウ酸ナトリウムと過酸化水素の反応による過ホウ酸ナトリウム四水和物の合成

四水和物を加熱することにより、過ホウ酸ナトリウム一水和物を得ることが可能です。

2. 過ホウ酸ナトリウムの有害性

過ホウ酸ナトリウム一水和物は、下記のような有害性が指摘されています。

  • 火災助長のおそれ (GHS分類・酸化性固体: 区分3)
  • 飲み込むと有害 (GHS分類・急性毒性 (経口) : 区分4)
  • 吸入すると有毒 (GHS分類・急性毒性 (吸入:粉じん) : 区分3)
  • 重篤な眼の損傷 (GHS分類・眼に対する重篤な損傷眼刺激性:  区分1)
  •  生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い (GHS分類・生殖毒性: 区分2)

また、過ホウ酸ナトリウム四水和物についても下記のような有害性が指摘されています。

  • 重篤な眼の損傷 (GHS分類・眼に対する重篤な損傷眼刺激性:  区分1)
  • 生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い (GHS分類・生殖毒性: 区分2)
  • 水生生物に毒性 (GHS分類・水生環境急性有害性: 区分2)
  • 長期的影響により水生生物に毒性 (GHS分類・水生環境慢性有害性: 区分2)

3. 過ホウ酸ナトリウムの法規制情報

過ホウ酸ナトリウムは、上記の有害性から、各種法令による規制を受ける化合物です。四水和物は、消防法において「第1類酸化性固体、ペルオキソほう酸塩類」に指定されている他、PRTR法においては、一水和物四水和物共に「新規指定化学物質 (第1種) 」に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7632-04-4.html

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