TFT液晶とは
TFT液晶 (英: Thin-Film Transistor Liquid Crystal Display) とは、薄膜トランジスタを使用した液晶ディスプレイです。
ノートパソコンやスマートフォンなどの様々な電子機器で広く利用されている、画面技術の主要な選択肢の一つです。薄膜トランジスタ (TFT) を使用することで多くの画素を制御できることから、モノクロ表示ディスプレイと比較して高い画素数が求められるカラー表示ディスプレイに用いられています。
また、タッチパネルと組み合わせることで、タッチ入力やジェスチャー入力といった直感的な制御を組み込むことができます。
TFT液晶の使用用途
TFT 液晶ディスプレイはその高い解像度やカラー表示ができるなどの利点から、多くの用途で採用されています。大まかな用途としては、完成した製品として販売されるコンシューマ用途と、BtoB 製品や組み込み部品として販売される産業用途に分類できます。以下はTFT 液晶の主要な使用用途の一例です。
1. コンシューマー用途 (製品)
スマートフォン、テレビ、PC、カーナビゲーションシステムなど、一般消費者が小売店で購入できる製品に使用されています。特にハイエンドモデルのスマートフォンには、最新の技術が使われた高精細・高輝度なTFT 液晶ディスプレイが使用されており、最も身近にある最先端の表示デバイスといえます。
2. 産業用途 (製品)
身近な製品では、コンビニエンスストアのコーヒーマシンやATM、航空機の機内エンターテイメントシステムなどに使用されています。一般の目に触れない製品では、医療機器や測定機器、生産設備など、BtoB 製品のディスプレイとして使用されています。
3. 産業用途 (部品)
コンシューマ用途、産業用途の製品の生産に使用される、組み込み部品としてのTFT 液晶ディスプレイです。TFT 液晶モジュール、TFT モジュールなどと呼ばれます。スマートグラスに使用される1 インチ未満の超小型のものから、大型テレビやデジタルサイネージに使用される60 インチを超える製品まで様々な種類があります。最も多い用途はスマートフォン用で、全世界の出荷枚数の約半数を占めます。
TFT液晶の原理
TFT液晶の原理は、液晶と薄膜トランジスタ (TFT) という2つの主要な要素に基づいています。
1. 液晶
図1. カラーTFT 液晶の基本構成
液晶は物体の状態の一つで、液体と固体 (結晶) の間に出現する中間相の一種です。一部の液晶では、電圧を印加すると液晶分子の向きが変化し、それによって光学特性が変化する性質を持つものがあります。液晶ディスプレイでは、この電圧印加により光学特性が変化する性質に偏光板を組み合わせることで、各画素の光の透過や遮断を制御しています。
2. 薄膜トランジスタ (TFT)
図2. 1画素の等価回路
画素を格子状に配置するドットマトリックス方式の液晶ディスプレイの制御方法にはパッシブマトリックス方式とアクティブマトリックス方式がありますが、画素数の多い液晶ディスプレイには、一般的にアクティブマトリックス方式が採用されます。
アクティブマトリックス方式では、格子状に配置される走査線 (ゲート線) とデータ線 (ソース線) の交点にアクティブ素子とコンデンサ、画素電極があり、これらが画素分だけ配置されています。通常、このアクティブ素子には薄膜トランジスタ (TFT) が使われているため、アクティブマトリックス方式の液晶ディスプレイはTFT 液晶ディスプレイと呼ばれます。
画素への印加電圧の制御は、走査線を順に走査することでゲート電圧を制御し、データ線で画素のソースードレイン間のON/OFFを制御することで行われます。TFTがOFFになった後も、コンデンサに蓄えられた電荷により、次の走査まで画素の状態が保持されます。
TFT液晶の選び方
TFT液晶ディスプレイを選ぶ際には、いくつかの重要な要因を考慮する必要があります。以下は選定要素一例です。
1. 画面サイズ
画面サイズは、2.4 インチ、10.1 インチなど、表示エリアの対角線の長さをインチで表現されます。近いインチ数でも、ディスプレイの縦横比によって辺の長さが異なりますので、モジュール外形寸法、表示エリア寸法などとあわせて確認が必要です。
2. 解像度
解像度は画面上の画素数を指し、「QVGA」などのVESA規格や「4K」などの通称、または、「800×600」や「1920×1080」など、「画素数 (横) × 画素数 (縦)」で表現されます。流通している画面サイズと解像度の組み合わせはある程度限られており、一般的に画面サイズが大きくなれば解像度も高くなります。
3. 液晶パネルの種類
通常、15 インチ程度までの比較的小型の液晶パネルには、TN 型またはIPS 型の液晶パネルが使用されます。TN 型と比較して、IPS 型は広い視野角を持ちます。
4. タッチパネル
タッチパネルには大きく分けて、静電容量式と抵抗膜式の2 種類があります。スマートフォンでは静電容量式が、ATM では抵抗膜式が使用されています。用途にあわせてタッチパネルの有無と種類を選択する必要があります。
5. インターフェース
映像信号の入力インターフェースとしては、RGB、SPI、MIPI、LVDS などが一般的に用いられます。タッチパネルを使用する場合には、そのインターフェースも考慮する必要があります。
表示機器は同一スペックであっても見え方が異なることがあります。選定の際には、実物を確認することが重要です。