ヒドロキシルアミン塩酸塩

ヒドロキシルアミン塩酸塩とは

ヒドロキシルアミン塩酸塩の基本情報

図1. ヒドロキシルアミン塩酸塩の基本情報

ヒドロキシルアミン塩酸塩とは、ヒドロキシルアミンの塩酸塩です。

高濃度のヒドロキシルアミン水溶液は、それ自身または鉄イオンと反応して爆発を起こします。そのため、薄めた状態での運搬や使用が望ましいです。15%以下の濃度であれば、消防法上の危険物としての危険性はなくなります。

化学物質審査規制法 (化審法) では優先評価化学物質に分類され、毒劇法や消防法でも規制されています。1999年に米国でヒドロキシルアミンの爆発事故があり、2000年には日本国内でもヒドロキシルアミンの爆発事故が起こりました。これをきっかけとして消防法が改正され、ヒドロキシルアミン塩酸塩はヒドロキシルアミンとともに危険物として指定されました。

ヒドロキシルアミン塩酸塩の使用用途

有機合成の分野でヒドロキシル塩酸塩は、カルボン酸やN-およびO-ヒドロキシルアミンから、オキシムやヒドロキサム酸を合成する際に使用されます。炭素-炭素二重結合 (C=C) の付加反応にも利用可能です。

工業的にはバイオマスからリグニンを抽出する際に、臭素の除去に用いられます。塗料や半導体の表面処理剤として用いられるほか、医薬品や農薬の原料としても利用されます。ゴム・プラスチック工業では、抗酸化剤、加硫促進剤、ラジカル捕捉剤として使用可能です。ナイロンの原料の1つであり、繊維の染色の定着剤、染色補助剤、抗酸化剤、カラーフィルムの色素定着剤としても使われます。

ヒドロキシルアミン塩酸塩は、硝化作用や嫌気性アンモニア酸化の生物学的中間体として、窒素循環や廃水処理で重要な役割を担っています。

ヒドロキシルアミン塩酸塩の性質

ヒドロキシルアミン塩酸塩は白色の結晶です。潮解性があり、強い還元剤の1つです。水に溶けて強酸性を示し、水溶液中で徐々に分解し、湿気がある空気中では少しずつ分解します。液体アンモニアによく溶解します。メタノールエタノールにわずかに溶けますが、エーテルには溶けません。

火気や高温体に近づけると爆発の危険性があり、115°C以上に加熱しても爆発する可能性があります。152°Cで分解します。アルデヒドやケトンとオキシムを形成可能です。ヒドロキシルアミンの原料としても使われます。

ヒドロキシルアミン塩酸塩の構造

ヒドロキシルアミン塩酸塩の化学式は[NH3OH]Clで、分子量は69.49g/molであり、密度は1.68g/cm3です。窒素-酸素結合距離 (N-O) はおよそ1.45Åです。別称として、塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン塩酸塩、ヒドロキシルアンモニウムクロリド、塩化ヒドロキシルアンモニウムなどがあります。単斜晶系結晶で、[NH3OH]+を含んだイオン結晶です。

硝酸を電解還元後にHClと反応させると、ヒドロキシルアミン塩酸塩が得られます。BaCl2と硫酸ヒドロキシルアンモニウム水溶液が反応しても、ヒドロキシルアミン塩酸塩を生成可能です。

ヒドロキシルアミン塩酸塩のその他情報

1. ヒドロキシルアミン塩酸塩の関連化合物

ヒドロキシルアミンの基本情報

図2. ヒドロキシルアミンの基本情報

一般的にヒドロキシルアミンは、水溶液や塩酸塩として取り扱われます。ヒドロキシルアミンの示性式はNH2OHと表され、部分的にアンモニアと水が共有した構造を有します。

分子量は33.030g/molであり、融点は33°Cで、58°Cで分解し、20°Cでの密度は1.21g/cm3です。室温でヒドロキシルアミンは結晶性の固体で、吸湿性や潮解性を持っています。

2. ヒドロキシルアミン塩類

硫酸ヒドロキシルアミンの基本情報

図3. 硫酸ヒドロキシルアミンの基本情報

ヒドロキシルアミン塩類は、ヒドロキシルアミンと酸との中和反応で生じる塩です。ヒドロキシルアミン塩酸塩以外にヒドロキシルアミン塩類には、硫酸ヒドロキシルアミンなどがあります。

硫酸ヒドロキシルアミンの化学式はH2SO4・(NH2OH)2です。分子量は164.14g/molであり、170°Cで分解します。白色の結晶で、水に溶解して強酸性を示します。

参考文献
http://www.chemicoco.env.go.jp/
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/5470-11-1.html

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