ヒドロキシルアミン

ヒドロキシルアミンとは

ヒドロキシルアミンの基本情報

図1. ヒドロキシルアミンの基本情報

ヒドロキシルアミンとは、化学式がNH2OHで表される無機化合物です。

ヒドロキシアミンとも呼ばれています。生合成で硝化作用の中間体であり、ヒドロキシルアミンオキシダーゼにより酸化されて亜硝酸が生じます。ヒドロキシルアミンは水溶液のほか、塩酸塩や硫酸塩などの塩として取り扱われることが一般的です。

化学物質審査規制法 (化審法) では「優先評価化学物質」に分類されており、水質汚濁防止法では「事故時措置 (指定物質) 」に分類されています。そのほか、消防法でも規制されています。

ヒドロキシルアミンの使用用途

ヒドロキシルアミンおよびその塩類は、多くの有機化学や無機化学の反応で、還元剤として用いられます。オキシムの合成、ナイロンの原料であるカプロラクタムの合成にも使用可能です。分析試薬、酵素の再活性化剤としての用途もあります。

工業用途は、獣皮の脱毛剤や写真現像液、半導体の洗浄剤、医薬品・農薬の原料、タバコ甘味剤、せっけん、脂肪酸の酸化防止剤および安定剤などです。さらに、硝化作用や嫌気性アンモニア酸化の生物学的中間体として、窒素循環や廃水処理で重要な役割を担っています。

ヒドロキシルアミンの性質

ヒドロキシルアミンは無色の針状結晶であり、潮解性が非常に高く、揮発性があります。融点は33°Cで、58°Cで分解します。モル質量は33.030g/mol、20°Cでの密度は1.21g/cm3です。

ヒドロキシルアミンは不安定な物質です。室温でも徐々に分解し、湿気やCO2により分解が促進されます。また、加熱や紫外線によって爆発し、アンモニア (NH3) 、窒素 (N2) 、亜酸化窒素 (N2O) などの物質に変化します。

水、液体アンモニア、メタノールに易溶ですが、エーテル、ベンゼンクロロホルムに難溶です。

ヒドロキシルアミンの構造

ヒドロキシルアミンは、水とアンモニアが互いに一部分を共有したような構造を持っています。そのため、液体のヒドロキシルアミンは水と似た溶媒として、多くの無機塩を溶かします。

ヒドロキシルアミンのその他情報

1. ヒドロキシルアミンの合成法

ラシヒ法を用いて、ヒドロキシルアミンを合成可能です。0°Cで亜硝酸アンモニウム水溶液をHSO4/SO2によって還元すると、ヒドロキシルアミド-N,N-ジスルフェートが生成し、加水分解により硫酸塩である(NH3OH)2SO4が得られます。

この硫酸塩を液体アンモニアで処理すると、固体のヒドロキシルアミンが生成します。液体アンモニアに溶けない硫酸アンモニウムを濾別して、減圧下でアンモニアを除去可能です。それ以外にも、ヒドロキシルアンモニウム塩を経由する合成法もあります。

亜硫酸イオンにより亜硝酸や亜硝酸ナトリウムを還元すると、ヒドロキシルアミド-N-スルフェートが生成し、加水分解によってヒドロキシルアンモニウム塩が得られます。ナトリウムブトキシドを用いて中和すると、ヒドロキシルアミンを生成可能です。

2. ヒドロキシルアミンの反応

ヒドロキシルアミンの反応

図2. ヒドロキシルアミンの反応

ヒドロキシルアミンはケトンやアルデヒドと反応すると、オキシムが生じます。クロロ硫酸との反応では、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸を生成可能です。

ヒドロキシルアミンは、アルキル化剤などの求電子試薬とも反応します。この反応では、窒素と酸素のいずれの原子も求電子攻撃されます。

3. ヒドロキシルアミンによるカプロラクタムの合成

ヒドロキシルアミンを用いたカプロラクタムの合成

図3. ヒドロキシルアミンを用いたカプロラクタムの合成

ヒドロキシルアミンのおよそ95%は、シクロヘキサノンオキシムの合成に利用されています。シクロヘキサノンオキシムは、ナイロン6の前駆体です。

ヒドロキシルアミンの硫酸塩によって、シクロヘキサノンをシクロヘキサノンオキシムに変換可能です。シクロヘキサノンオキシムを酸で処理するとベックマン転位が進行し、カプロラクタムが生成します。そして、カプロラクタムの開環重合によって、ナイロン6を合成可能です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7803-49-8.html
http://www.chemicoco.env.go.jp/

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