チアゾール

チアゾールとは

チアゾール (英: thiazole) とは、常温で無色〜薄い黄色の透明液体です。

分子式C3H3NSで表される複素環式芳香族化合物で、分子量は85.13です。ピリジンに似た特徴的な不快臭がします。環内にある硫黄 (S) を意味する接頭語のチア (thia-) を、窒素 (N) を含む五員環化合物の名称アゾール (azole) の前に付けて命名されました。五員環にSとNを持つ複素環式芳香族化合物には、SとNが隣接している化合物 (イソチアゾール: 1,2-チアゾール) と、1つの炭素 (C) を隔ててSとNがある化合物 (チアゾール: 1,3-チアゾール) の二種類の異性体があります。

ビタミンB1 (チアミン) やエポチロン他、天然物にも部分構造として含まれています。また、サルファ剤 (スルホンアミド部位を持つ合成抗菌剤・化学療法薬の総称) として知られているサルファチアゾールもチアゾール環を含みます。その他、チアゾールアゾ染料もチアゾール環を持っています。

チアゾールの使用用途

チアゾールの主な使用用途は有機合成原料です。

チアゾール環においては2位が求核的、5位が求電子的サイトとして反応します。チアゾールに対してグリニャール試薬やアルキルリチウムなどを作用させると2位の水素が引き抜かれ、メタル化されます。また、2-クロロチアゾールに対してアミンなどの求核剤を作用させると置換反応が起きます。

チアゾールの誘導体には、工業薬品 (加硫促進剤) 、殺菌剤、駆虫剤、医薬品、染料などがあり、重要なものが多いです。加硫とは、原料ゴムに高い弾性を与えるため、硫黄によってゴムの分子同士を結合させることを言いますが、通常は長時間を必要とするため加硫促進剤を添加します。チアゾール系の加硫促進剤はゴムを汚染しないので、透明物や色物に好適です。また、様々なジエン系ゴムにも使用されています。

チアゾールの殺菌剤としての利用について、チアゾールは微生物に薬理的に作用するため、直接微生物に接触、吸収されて初めて作用を示します。そのため、使用用途は化粧品の防腐剤、農薬、洗浄剤として、液状あるいはエマルジョンの状態の製品に使用されています。

チアゾール構造を含む医薬品は主に、抗生物質のセフビロム、抗がん剤のブレオマイシン、チアミン (ビタミンB1) です。無機酸、塩化水銀 (Ⅱ) と安定な錯体を形成するため、さまざまな形で販売されています。

チアゾールのその他情報

1. チアゾールの性質

複素環式芳香族化合物のアミンの一種ですが、ピリジンなどと比較すると塩基性は弱いです。融点は-33 ℃、沸点は118 ℃、引火点は26 ℃、比重は1.2 g/mL (at 25 ℃) 屈折率n20/D 1.538、常温で液体です。エタノールやエーテルなど多くの有機溶剤には可溶で、水には僅かに溶けます。

2. チアゾールの製造法

クロロアセトアルデヒド (ClCH2CHO) とチオホルムアミド (HCSNH2) を縮合させて得られます。

N- (2-メルカプトエチル) アミドを塩化チオニルなどで脱水環化し、DDQなどで酸化することによっても得られます。天然物に含まれるチアゾール環は、多くの場合、システインを含むペプチドからこれと同様な変換を受けてできていると考えられています。

3. 法規情報

消防法に定める第4類: 引火性液体、第二石油類、危険等級Ⅲ、非水溶性液体に該当します。

4. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 光と空気を避ける必要があるため、保管時には不活性ガスを充填する。
  • 容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。
  • 熱や発火源から遠ざける。
  • 酸化剤や強酸とは混合・接触しないよう注意する。
  • 静電気対策を行う。
  • 漏れ、あふれ、飛散しないよう注意し、みだりに蒸気を発生させない。
  • 蒸気やエアゾールが発生する場合には、換気、局所排気を用いる。
  • 皮膚刺激、強い眼刺激があるため、使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 皮膚に付着、また、眼に入った場合は多量の水で数分間注意深く洗浄する。

参考文献

https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-1/hor1-1-7-1-2.html
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/T0185

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