炭酸ジメチル

炭酸ジメチルとは

炭酸ジメチルの基本情報

図1. 炭酸ジメチルの基本情報

炭酸ジメチルとは、化学式はC3H6O3で表される、炭酸のエステルの一種です。

DMCと略される場合もあります。世界での炭酸ジメチルの生産は、アジア、中東、ヨーロッパに限られています。

炭酸ジメチルは可燃性液体です。消費者向けや屋内用途での使用は制限されています。ただし可燃性の観点では、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチルよりも安全です。消防法で第4類危険物 第1石油類に指定されています。

炭酸ジメチルの使用用途

主に炭酸ジメチルは、ポリカーボネートを製造する際に、原料として利用されます。炭酸ジメチルはフェノールとのエステル交換反応によって、ジフェニルカーボネートを合成可能です。ジフェニルカーボネートは、溶融重縮合によるビスフェノール-A-ポリカーボネートの合成原料です。ポリカーボネートをフェノールでエステル交換すると、ジフェニルカーボネートとビスフェノールAを再び生成してリサイクルできます。

ポリカーボネートは、耐衝撃性、光学的透明性、誘電率などが高いプラスチックです。ポリカーボネートは、DVD、ブルーレイディスク、電気絶縁体材料、安全ゴーグル、防弾窓、メガネレンズ、航空機、自動車の各種部品、ミサイル部品材料などにも使用されています。

炭酸ジメチルはリチウムイオン二次電池の電解液に使われるほか、塗料、洗浄剤、接着剤などにも利用可能です。

炭酸ジメチルの性質

炭酸ジメチルの融点は2〜4°Cで、沸点は90°Cであり、引火点は18°Cと低いです。無色の可燃性液体で、水に溶けません。

炭酸ジメチルの推奨暴露限界 (REL) は、1日8 時間の作業での吸入による100ppmで、一般的な工業用溶剤と同様です。体内で炭酸ジメチルはメタノールと二酸化炭素に代謝されるため、誤飲はメタノール中毒の危険性があります。

炭酸ジメチルの構造

炭酸ジメチルは炭酸の水素原子2つが、メチル基に変換された構造を有しています。分子量は90.08g/molで、密度は1.069〜1.073g/mLです。

炭酸ジメチルのその他情報

1. 炭酸ジメチルの合成法

炭酸ジメチルの合成

図2. 炭酸ジメチルの合成

従来はホスゲンとメタノールの反応によって、クロロギ酸メチルが中間体として生成し、炭酸ジメチルを合成していました。現在ではメタノール、酸素、一酸化炭素から、触媒的に合成可能です。

工業的には、メタノールを用いたエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのエステル交換によって、炭酸ジメチルを製造できます。これらの反応では、それぞれエチレングリコールとプロピレングリコールも生成します。

さらに炭酸ジメチルは、四アルコキシチタン、ジアザビシクロアルケン類、メチル化剤、錫、ジルコニウム、チタンのアルコキシ化合物などを使って、メタノール二酸化炭素の反応によっても合成可能です。アセタール類や二酸化炭素を使用して、炭酸ジメチルを製造する方法も提案されています。

2. 炭酸ジメチルの反応

炭酸ジメチルの反応

図3. 炭酸ジメチルの反応

炭酸ジメチルはメチル化のために利用可能です。具体的には、炭酸ジメチルによってトリメチルアミンを四級化すると、テトラメチルアンモニウムが得られます。炭酸水素アニオンも生じますが、陰イオン交換樹脂や電気分解で除去可能です。硫酸ジメチルやヨードメタンなどの従来のメチル化剤と比べて、炭酸ジメチルの毒性は低く、生分解性にも優れています。

炭酸ジメチルを用いると、アニリン、フェノール、チオフェノール、カルボン酸、ニトリルのα位などをメチル化可能です。ただし90°以下で反応させると、通常メトキシカルボニル化が優先されます。そのため多くの場合には、耐圧反応容器を使用した高圧高温条件が必要です。炭酸ジメチルの還流下でジアザビシクロウンデセン (英: 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene) を添加すると、カルボン酸類のメチルエステル化が進行します。

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