ミルセン

ミルセンとは

ミルセンの基本情報

図1. ミルセンの基本情報

ミルセン (英: myrcene) は、化学式がC10H16で表され、自然界にも存在する有機化合物です。

ミルセンには、α-ミルセンとβ-ミルセンの2種類の異性体が存在します。自然界に存在するのはβ-ミルセンで、一般的に使用されています。月桂樹、松、ヨモギ、ミント類などに含まれる成分です。キクイムシのフェロモンであり、誘引物質として作用します。

ミルセンは消防法で、「危険物第四類 第二石油類 危険等級Ⅲ」に該当する物質であり、取り扱いには注意が必要です。

ミルセンの使用用途

ミルセンには、筋肉の弛緩、鎮静作用、抗炎症作用、抗菌作用などがあります。人体に有益な作用を持つため、サプリメントに配合されています。

また、ミルセンが持つ「安らぐ香り」を活かし、アロマオイルや香料に使用可能です。香料工業でミルセンは、他の香料を合成する際の材料に用いられており、重要視されています。

例えばミルセンを原料として、メントール、リナロール、シトラール、ゲラニオール、ネロール、シトロネラール、シトロネロールなどの香料を製造可能です。さらにミルセンは、樹脂の製造にも使用されます。

ミルセンの性質

ミルセンの融点は50°Cで、沸点は166〜168°Cです。非常に揮発しやすく、針葉樹のような爽やかな香りを有します。室温で少しずつ重合します。

ミルセンの構造

ミルセンの構造

図2. ミルセンの構造

ミルセンはモノテルペン (英: Monoterpene) に属するオレフィンの一種です。モノテルペンとは、2個のイソプレン単位から構成され、天然に存在する分子式がC10H16の炭化水素のことです。

β-ミルセンには、二重結合の位置が異なる構造異性体であるα-ミルセンが存在します。IUPAC系統名でα-ミルセンは2-メチル-6-メチレンオクタ-1,7-ジエン (英: 2-methyl-6-methyleneocta-1,7-diene) で、β-ミルセンは7-メチル-3-メチレンオクタ-1,6-ジエン (英: 7-methyl-3-methyleneocta-1,6-diene) です。α-ミルセンは酢酸ミルセニル (英: Myrcenyl acetate) の熱分解で生成します。

α-ミルセンとβ-ミルセンの分子量は136.23で、密度は0.7905g/cm3です。

ミルセンのその他情報

1. ミルセンの合成

ミルセンの合成

図3. ミルセンの合成

多くの場合にミルセンは、テレビン油から得られるβ-ピネン (英: β-pinene) の熱分解により、商業的に製造されています。そのため直接植物から得ることはあまりありません。

植物では、まず二リン酸リナリル (英: linalyl pyrophosphate) の異性化によってゲラニル二リン酸(英: geranyl diphosphate) が生成します。続いてピロリン酸塩と水素イオンが放出されて、ミルセンが生合成されます。

2. ミルセンの反応

ミルセンはミルセノール (英: myrcenol) に変換可能です。まずジエチルアミンによって、1,3-ジエンをヒドロアミノ化します。続いて加水分解が起こり、パラジウム触媒を用いてアミンを除去すると、ミルセノールを生成可能です。

ミルセンとミルセノールはいずれも、アクロレインなどのジエノフィルとディールス・アルダー反応 (英: Diels–Alder reaction) を起こします。ディールス・アルダー反応によって合成香料であるヒドロキシメチルペンチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド (英: Hydroxymethylpentylcyclohexenecarboxaldehyde) など、シクロヘキセン誘導体を合成可能です。ヒドロキシメチルペンチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒドは、一般的にリラール (英: Lyral) とも呼ばれています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0235-2941JGHEJP.pdf

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