硝酸ストロンチウム

硝酸ストロンチウムとは

硝酸ストロンチウム (英: Strontium nitrate) とは、ストロンチウムの硝酸塩であり、組成式Sr(NO3)2で表される無機化合物です。

CAS登録番号は、10042-76-9です。二硝酸ストロンチウムという別名で呼ばれることもあります。加熱により、酸素を発生させ、還元物質を酸化、発火させる危険性があるため、保存際して注意が必要な物質です。

硝酸ストロンチウムの使用用途

硝酸ストロンチウムの主な用途は、 花火、蛍光体、光学ガラス、発炎筒、試薬、火薬、爆薬、ガラス (特に、LCD・OLED用ガラス原料、光学ガラス) 、セラミックスの原料などです。

特に、炎色反応では深紅色であることから、花火の赤色高光、発煙筒、夜間信号用の照明弾、マッチ、などの着火剤関連製品に使用されています。そのほか、無機化学製品や医薬品の原料、自動車のエアバッグのガス発生剤としても使用される物質です。

硝酸ストロンチウムの性質

硝酸ストロンチウムの基本情報

図1. 硝酸ストロンチウムの基本情報

硝酸ストロンチウムは、式量211.43、融点570℃、沸点645℃であり、白色の結晶性粉末です。水によく溶け、水への溶解度は40g/100g (0℃)です。

また、アンモニアにも溶解します。一方、エタノールアセトンには難溶であり、エーテルには溶解しません。密度は2.986g/mLです。結晶は無水物は立方晶系、4水和物は単斜晶系に属しています。

硝酸ストロンチウムの種類

硝酸ストロンチウムは、主に研究開発用試薬製品や工業用無機化合物薬品などとして販売されています。研究開発用試薬製品としては、25g、100g、500gなどの容量の種類があり、実験室で取り扱いやすい容量で提供されている物質です。

通常室温で保管可能な試薬製品として取り扱われます。工業用薬品としては、メーカーに対する個別の問い合わせが必要ですが、通常では硝子、蛍光体、その他工業用途などの用途を想定して提供されている物質です。

硝酸ストロンチウムのその他情報

1. 硝酸ストロンチウムの合成

硝酸ストロンチウムの合成

図2. 硝酸ストロンチウムの合成

硝酸ストロンチウムは、水酸化ストロンチウム水溶液と硝酸の中和反応させることにより、合成が可能です。水酸化ストロンチウム水溶液のかわりに、炭酸ストロンチウム、ストロンチウム、酸化ストロンチウムを用いることもできます。水溶液を濃縮すると、29.3℃以下では4水和物が析出します。

2. 硝酸ストロンチウムの反応性

硝酸ストロンチウムの分解反応

図3. 硝酸ストロンチウムの分解反応

硝酸ストロンチウムは、融点以上で分解し、酸素および二酸化窒素を放出して酸化ストロンチウムとなります。通常の保管環境においては安定ですが、 可燃性物質との混触は危険とされています。また、炎色反応によって深紅色を呈する物質です。

3.  硝酸ストロンチウムの危険性と法規制情報

硝酸ストロンチウムは、火災を助長する恐れのある酸化性物質とされています (GHS分類: 酸化性固体 区分3) 。人体への有害性では、皮膚刺激や眼刺激が指摘されており、GHS分類では、皮膚腐食性・刺激性: 区分2、眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: 区分2Bに位置づけられている物質です。

これらの危険性により、硝酸ストロンチウムは法令によって取り扱いが制限されている物質です。消防法では危険物第1類酸化性固体 (硝酸塩類) に指定されており、労働安全衛生法では、危険物・酸化性の物に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要とされています。具体的な安全対策としては、下記のような事項が必要です。

  • 熱から遠ざける
  • 禁忌物質から遠ざける
  • 可燃物との混合を回避するために予防策を取る
  • 適切な保護手袋、保護眼鏡、保護面を着用する
  • 取扱い後はよく手を洗う

また、その他の法令では、船舶安全法や航空法で酸化性物質類・酸化性物質に指定されている他、水質汚濁防止法では有害物質に位置づけられています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10042-76-9.html

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