安息香酸ベンジル

安息香酸ベンジルとは

安息香酸ベンジルの基本情報

図1. 安息香酸ベンジルの基本情報

安息香酸ベンジル (英: Benzyl benzoate) とは、分子式がC14H12O2で表される有機化合物の一種です。

ベンゼンカルボン酸ベンジルや安息香酸フェニルメチルとも呼ばれます。天然に安息香酸ベンジルは、ペルーバルサム (英: Balsam of Peru) やトルーバルサム (英: Tolu balsam) を代表として、多くの花にも存在します。

消防法の危険物第4類第3石油類に該当する、非水溶性の液体です。1日の許容摂取量は0〜5mg/kgですが、香料として使用する場合には安全上の問題は認められていません。

安息香酸ベンジルの使用用途

安息香酸ベンジルの用途は、「医薬原料」「香料」「有機合成原料」「可塑剤」など、多岐に渡ります。安息香酸ベンジルの医学的な研究が開始したのは1918年です。安息香酸ベンジルには血管拡張作用と痙攣作用があり、喘息を代表として、さまざまな治療に広く利用されています。

また、ダニ、シラミ、蚊を駆除するための「殺虫剤」「忌避剤」などにも使用可能です。ダニによって引き起こされる、強い痒みを伴う疥癬と呼ばれる発疹の治療にも使われています。

そのほか、キャンディやガムなどの「香料」「抗菌防腐剤」にも利用可能です。香水の成分を保持する揮発防止剤に使われるだけでなく、人工香料として食品添加物に使用されます。さらに、セルロースのようなポリマーの可塑剤や高沸点の有機溶媒としても利用されています。

安息香酸ベンジルの性質

安息香酸ベンジルの融点は17〜20°Cで、沸点は323〜324°Cです。無色またはわずかに薄い黄色の固体または液体です。弱い芳香臭がします。

安息香酸ベンジルは水には溶けません。エタノールジエチルエーテルアセトンによく溶解します。

安息香酸ベンジルの構造

安息香酸ベンジルは、ベンジルアルコール (英: benzyl alcohol) と安息香酸 (英: benzoic acid) が脱水縮合した構造を有する有機化合物です。カルボン酸エステルであり、示性式はC6H5CO2CH2C6H5と表されます。分子量は212.24で、密度は1.118g/cm3です。

安息香酸ベンジルのその他情報

1. 安息香酸ベンジルの合成法

安息香酸ベンジルの合成

図2. 安息香酸ベンジルの合成

安息香酸ベンジルは、安息香酸メチルのエステル交換によって生成します。ベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムの反応でも合成可能です。

酸触媒下でベンジルアルコールと安息香酸を縮合しても、安息香酸ベンジルが得られます。酸を用いてアルコールとカルボン酸からカルボン酸エステルを得る反応は、フィッシャーエステル合成反応 (英: Fischer esterification) と呼ばれます。

ティシチェンコ反応 (英: Tishchenko reaction) を用いても、2分子のベンズアルデヒドから安息香酸ベンジルを合成可能です。ティシチェンコ反応は1906年に初めて、ヴャチェスラフ・ティシチェンコ (英: Vyacheslav Tishchenko) によって報告されました。この反応ではアルコキシドの触媒作用によって、アルデヒド2分子が不均化し、エステル1分子が生じます。

2. 安息香酸ベンジルの危険性

安息香酸ベンジルの加水分解

図3. 安息香酸ベンジルの加水分解

安息香酸ベンジルの急性毒性は低いです。すぐに安息香酸とベンジルアルコールに加水分解され、ベンジルアルコールは安息香酸に代謝されます。安息香酸の抱合体は、尿中に急速に排泄されます。ただし安息香酸ベンジルを大量に投与すると、過興奮、協調運動失調、痙攣、呼吸麻痺などの症状を引き起こす場合もあり、注意が必要です。

局所疥癬治療剤として安息香酸ベンジルを使用すると、皮膚炎になる可能性があります。過剰摂取では、アレルギー反応として水ぶくれ、蕁麻疹、発疹を引き起こす場合もあります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/120-51-4.html

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