塩化白金酸

塩化白金酸とは

ヘキサクロリド白金(IV)酸とテトラクロリド白金(II)酸の化合物

図1. ヘキサクロリド白金(IV)酸とテトラクロリド白金(II)酸の化合物

塩化白金酸とは、クロロ白金酸とも呼ばれる白金錯体の1種です。

酸化数の違いにより、ヘキサクロリド白金(IV)酸 (H2[PtCl6])  とテトラクロリド白金(II)酸 (H2[PtCl4])の2種類が存在しますが、一般にはヘキサクロリド白金酸の方がよく利用されています。

塩化白金酸の使用用途

塩化白金酸の主な用途は、白金化合物合成、触媒の製造の出発物質、分析における白金イオンの供給源、分析試薬などです。塩化白金酸の濃溶液に、グラスウールなどを浸し、焼いて分解させることにより、白金石綿という酸化触媒を得ることができます。白金石綿は、水素や酸素の生成などに使われています。

また、ヘキサクロリド白金酸水溶液に塩化物水溶液を加え、濃縮することでヘキサクロリド白金酸塩が析出します。ヘキサクロリド白金酸塩は、さまざまな場面で使用されています。例えば、ヘキサクロリド白金酸アンモニウムは、白金メッキに使われる物質です。

塩化白金酸の性質

ヘキサクロリド白金(IV)酸六水和物の基本情報

図2. ヘキサクロリド白金(IV)酸六水和物の基本情報

ヘキサクロリド白金(IV)酸は (英: Hexachloroplatinic(IV) acid)  六水和物として取り扱われることの多い物質です。

この六水和物は、分子量517.891、融点60℃であり、常温では赤褐色の固体です。強い潮解性を示し、水に極めてよく溶けます。水溶液は、強酸を示し、また、エタノールジエチルエーテルにも溶けます。密度は2.431g/mLであり、CAS登録番号は16941-12-1です。

塩化白金酸の種類

塩化白金酸は、前述の通り、ヘキサクロリド白金(IV)酸 (H2[PtCl6]) とテトラクロリド白金(II)酸 (H2[PtCl4]) の2種類が存在しますが、主に販売されているのはヘキサクロリド白金(IV)酸であり、テトラクロリド白金(II)酸はカリウム塩などの状態で販売されています。

1. ヘキサクロリド白金(IV)酸

ヘキサクロリド白金(IV)酸は、主に水和物の状態で研究開発用試薬や、貴金属薬品として販売されています。研究開発用試薬製品は、主に六水和物 (H2[PtCl6]・6H2O) として販売されており、1g、5g、25gなどの小容量で提供されています。通常、冷蔵で保管されることの多い試薬製品です。

また、貴金属薬品としては、白金試薬合成用材料や触媒製造、メッキ材料として、n水和物の他、塩酸溶液製品も販売されています。貴金属薬品であることから、工業用薬品としても100gなどの比較的小容量で提供されている物質です。

2. テトラクロリド白金(II)酸

テトラクロリド白金(II)酸は、基本的には一般販売されておらず、ナトリウム塩の水和物 (テトラクロロ白金酸(II)ナトリウム水和物: Na2[PtCl4]・nH2O) や、カリウム塩(テトラクロロ白金(II)酸カリウム: K2[PtCl4]) などとして販売されています。

試薬製品として販売されていることが一般的であり、1g、5g、10gなどの小容量で提供されている物質です。通常、室温で保管可能な試薬製品として取り扱われています。

塩化白金酸のその他情報

塩化白金酸の合成

ヘキサクロリド白金(IV)酸の合成

図3. ヘキサクロリド白金(IV)酸の合成

ヘキサクロリド白金(IV)酸の合成方法の一つは、白金を熱王水に溶かすことです。この方法ではニトロシル (NO+配位子) が生じやすいため、濃塩酸を加え蒸発乾固によって濃縮することを繰り返します。ただし、ニトロシルを完全に除去することは難しいため、次の2つの方法によって合成する方が純粋なヘキサクロリド白金(IV)酸を得やすいとされています。

  • 白金粉末を温めた濃塩酸に懸濁させ、撹拌しながら塩素ガスを通じる
  • 白金粉末を温めた濃塩酸に懸濁させ、過酸化水素水を滴下して発生する塩素により酸化溶解させる

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/16941-12-1.html

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