亜硫酸ナトリウム

亜硫酸ナトリウムとは

亜硫酸ナトリウムとは、化学式がNa2SO3で示される無機化合物です。

水酸化ナトリウム水溶液に二酸化硫黄を反応させて冷却すると、亜硫酸ナトリウムの七水和物が生成します。七水和物を加熱すると、亜硫酸ナトリウムの無水物が生じます。

二酸化硫黄と炭酸ナトリウム水溶液によって生じた亜硫酸水素ナトリウムを、炭酸ナトリウムと反応させても合成可能です。重油燃焼の排煙に含まれる二酸化硫黄を回収し、工業的に生産されています。

亜硫酸ナトリウムの使用用途

亜硫酸ナトリウムは、防腐剤、漂白剤、褐色化防止剤、酸化防止剤として、化粧品や食品などに添加されています。具体的には、ワインに添加すると、亜硫酸ナトリウムが酸化防止剤として働きます。防腐剤として、化粧品のクリームやヘアカラーにも使用可能です。ドライフルーツに亜硫酸ナトリウムを添加すると退色を防げます。

さらに亜硫酸ナトリウムは、食物を漂白可能です。亜硫酸ナトリウムが分解して発生する亜硫酸によって、食物の色素が還元されるためです。漂白剤として、かんぴょうや煮豆などに添加されています。

医薬品ではゲンタマイシン、ドキシサイクリン、メトクロプラミド、プロポフォールなどに使用されています。写真工業では、現像液の酸化を防ぐための保恒剤や定着液をフィルムから洗い流す際に利用可能です。

亜硫酸ナトリウムの性質

亜硫酸ナトリウムの飽和水溶液のpHはおよそ9で、弱アルカリ性を呈します。水溶液の再結晶によって、室温以下で七水和物を晶出可能です。

亜硫酸ナトリウムの七水和物は風解性があります。亜硫酸ナトリウムの溶液が空気に触れると少しずつ酸化して硫酸ナトリウムになり、七水和物の結晶も空気により酸化されて硫酸塩を与えます。無水物は水和物よりも安定で、空気によって酸化されにくいです。

亜硫酸ナトリウムは弱い酸とも反応し、二酸化硫黄が発生します。

亜硫酸ナトリウムの構造

亜硫酸ナトリウムの無水物の分子量は126.043g/molです。七水和物は無色の単斜晶で、密度は1.56g/cm3であり、無水物は六方晶系で、密度は2.63g/cm3です。

X線結晶構造解析によると、亜硫酸ナトリウムの七水和物はピラミッド型のSO32-を有しています。 S-Oの距離は1.50Åで、O-S-Oの角度は約106°です。

亜硫酸ナトリウムのその他情報

1. 亜硫酸ナトリウムの危険性

亜硫酸ナトリウムによる副作用が報告されたのは1970年ごろです。亜硫酸ナトリウムを含有する食品を摂取すると、低血圧、皮膚炎、蕁麻疹、紅潮、下痢、腹痛、アナフィラキシー、喘息などの症状が出る場合があります。とくに喘息によって気管支収縮を誘発し、喘息の人々の3〜10%は呼吸症状の原因になります。1986年にアメリカ食品医薬品局 (FDA) によって、新鮮な食品への添加が禁止され、10ppm以上の濃度では成分表示をする措置を取りました。

亜硫酸ナトリウムを含んだ化粧品、点眼薬、抗真菌薬などを使うと、皮膚反応を起こす可能性があります。接触アレルギーでは、亜硫酸ナトリウムの陽性反応が3.8%の人にあると報告されました。ほとんどの場合には、二亜硫酸ナトリウムにも反応を示します。二亜硫酸ナトリウムはメタ重亜硫酸ナトリウムやピロ亜硫酸ナトリウムとも呼ばれます。

2. 亜硫酸ナトリウムの関連化合物

亜硫酸ナトリウムの製造と同様の原理で、多く二酸化硫黄が反応すると、亜硫酸水素ナトリウムが得られます。亜硫酸水素ナトリウムの化学式はNaHSO3で、分子量は104.06g/molです。固体は単斜晶系で、密度は1.48g/cm3です。空気中で少しずつ酸化して硫酸塩に変わります。

2分子の亜硫酸水素ナトリウムから1分子の水を失った二亜硫酸ナトリウムは、水溶液では亜硫酸塩と同様の性質を示します。実用上、同じ目的で使用可能です。二亜硫酸ナトリウムの化学式はNa2[O2S-SO3]と表されます。

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