六フッ化硫黄

六フッ化硫黄とは

六フッ化硫黄 (英: sulfur hexafluoride) とは、硫黄の六フッ化物のことです。

不燃性、耐熱性、非腐食性に優れ、高い絶縁性能を持っています。化学的にも非常に安定性が高く、大気中での寿命は約3,200年です。

温室効果ガスの1つで、地球温暖化係数は二酸化炭素の2万倍以上であり、排出抑制対象ガスの一つに指定されています。使用量はあまり多くありませんが、新しい用途開発の進展に伴って、近年需要量が増加しており、大気へ放出される六フッ化硫黄のほとんどは、人為的な理由だと考えられています。

六フッ化硫黄の使用用途

六フッ化硫黄は高い絶縁性能を有する気体で、大気中で非常に安定性が高く、人体に対しても安全性が高いです。そのため、電子機器の絶縁材として幅広く使用されています。具体例として、ガス遮断器、ガス変圧器、ガス絶縁開閉装置のような電力機器などが挙げられます。

また、マグネシウム合金溶解炉の酸化を防止可能です。それに加えて、液晶パネルや半導体製品のドライエッチング工程にも利用可能です。特殊な使用例として、リチウムと組み合わせた魚雷用エンジンの燃料もあります。

さらに眼科領域では、網膜を眼球壁へ押し付けるために使用可能です。具体的には、網膜剥離治療のための硝子体手術後に、六フッ化硫黄を眼内に充満させます。その後、1週間程度うつむき姿勢を取り、網膜を眼球壁に押し付けて、網膜が眼球壁に吸着する力を高めます。

六フッ化硫黄の性質

六フッ化硫黄は、無色、無臭、無毒の気体です。常温常圧では化学的な安定度が高く、不燃性です。融点は-50.8°Cで、昇華点は-63.8°Cです。水に溶けにくいですが、エチルアルコールにはやや溶けます。

六フッ化硫黄を吸い込んで声を出すと、音域が低くなります。空気より重い気体では、音が低くなるためです。

六フッ化硫黄の構造

六フッ化硫黄は硫黄原子1つとフッ素原子6つから構成され、化学式はSF6で示されます。分子量は146.06です。硫黄原子を中心として、フッ素原子は正八面体構造を取っています。

六フッ化硫黄のその他情報

1. 六フッ化硫黄の合成法

六フッ化硫黄はそれぞれの元素の単体であるS8とF2から合成可能です。副生成物として他のフッ化硫黄類も生じます。S2F10は加熱によって不均化し、SF4は水酸化ナトリウム水溶液で洗浄すると分解できるため除去可能です。

原料にSF4を用いて、六フッ化硫黄と構造がよく似たSF5Clを合成できます。SF5Clの酸化力は強く、加水分解によって硫酸になります。

2. 六フッ化硫黄の反応

六フッ化硫黄の反応はあまり知られておらず、溶融した金属ナトリウムとも反応しません。硫黄中心がフッ素で囲まれており、分子全体の極性がほぼないためです。

金属リチウムとは反応し、フッ化リチウムと硫化リチウムが生成します。この反応で生じた熱エネルギーは、魚雷の推進力に利用されています。反応生成物の体積は六フッ化硫黄とリチウムよりも小さく、従来の魚雷のように機外へ生成物を排出する必要もありません。そのため、魚雷の性能の向上に寄与しています。ジシラン (英: disilane) とは激しく反応して、爆発します。

3. フッ化硫黄の特徴

フッ素と硫黄から構成される無機化合物には、異性体を含めて6種類知られています。常温常圧で十フッ化二硫黄のみが液体で、それ以外は気体です。

二フッ化二硫黄は一フッ化硫黄とも呼ばれます。二フッ化二硫黄には2種類の異性体が存在し、S=SF2とF−S−S−Fです。二フッ化硫黄の化学式はSF2ですが、生成が困難であり、気相中で観測されているのみです。

四フッ化硫黄は無色気体の化合物で、化学式はSF4と表されます。十フッ化二硫黄は化学式がS2F10の、揮発性の無色の液体です。十フッ化二硫黄は五フッ化硫黄とも呼ばれます。

参考文献
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/400487/400487_22000BZX00485000_A_01_03.pdf

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