二酸化塩素

二酸化塩素とは

二酸化塩素とは、化学式がClO2で表される無機化合物です。

1811年にハンフリー・デービー (英: Humphry Davy) によって、初めて調製されました。工業的に二酸化塩素は、「塩素酸塩の還元」もしくは「亜塩素酸塩の酸化」により製造されます。ただし常温で二酸化塩素は気体であり、多少の光や熱で分解されるため、長期保存に適していません。

労働安全衛生法で「名称等を通知すべき有害物」に指定されています。

二酸化塩素の使用用途

二酸化塩素は酸化作用を持ち、反応性が高いです。強い酸化力によって、ウイルス除去、除菌、消臭、坑カビなどの作用があります。そのため、紙・パルプの漂白、水道水・プール水の消毒などに使用されます。

また、二酸化塩素は水に溶けやすいです。二酸化塩素を気体のまま用いる以外にも、気体を溶かして水溶液状に加工して使用できます。さらに、タブレット状にして水中に投げ入れて使用でき、必要用量や状況に応じて柔軟な使い分けが可能です。

二酸化塩素の性質

二酸化塩素の融点は-59.5°C、沸点は11°Cです。常温常圧では黄色味がかった気体です。オゾンや塩素に似た刺激臭を持っています。空気よりも重い気体で、濃度によって臭気や色調は違います。固体は橙黄色で、液体は赤褐色です。

光や熱に対して不安定です。20°Cで100mLの水に0.8g溶けます。塩素原子上に不対電子を有するため、反応性が高いです。

二酸化塩素の構造

二酸化塩素は塩素の酸化物です。塩素の酸化数は+4です。化学式はClO2で表されます。モル質量は67.45g/molで、密度は3.04g/cm3です。

塩素原子と酸素原子の距離は147.3pmで、O-Cl-Oの結合角は117.6°です。

二酸化塩素のその他情報

1. 二酸化塩素の合成法

実験室では、塩素を用いて亜塩素酸ナトリウムを酸化すると、二酸化塩素が得られます。消毒用途の二酸化塩素は、亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸、亜塩素酸ナトリウムと 塩酸、または亜塩素酸塩と硫酸によって生じます。いずれも高い収率で、二酸化塩素を生成可能です。

塩素酸カリウムとシュウ酸の反応によっても、二酸化塩素を合成可能です。世界で生産される二酸化塩素の95%以上は、塩素酸ナトリウムの還元によって作られており、パルプの漂白に使用されています。過酸化水素、メタノール、二酸化硫黄、塩酸のような、適切な還元剤を含んだ強酸溶液中で、効率的に生成可能です。

2. 二酸化塩素による除菌の仕組み

二酸化塩素の酸化作用によって、標的となる細菌やウイルスのタンパク質を変性させます。具体的には、タンパク質を構成しているアミノ酸残基であるチロシンやトリプトファンに反応して、ドーパやN-ホルミルキヌレニンに変換可能です。細菌やウイルスの構造が変化するため、機能の低下に繋がると考えられています。直接カビにも働き、構造を変えて除菌できます。

3. 二酸化塩素の危険性

10kPa以上の分圧で二酸化塩素は、酸素と塩素に爆発的に分解する可能性があります。光、熱、化学反応、圧力などによって、反応が開始します。したがって二酸化塩素は、通常ガスとして取り扱われることはありません。多くの場合には、1Lあたり0.5~10gの濃度の水溶液で取り扱われています。溶解度は低温で増加するため、1Lあたり3g以上の濃度で保管する場合には、一般的に5°Cの冷水を使用します。

4. 二酸化塩素の関連化合物

酸化塩素には二酸化塩素以外にも、一酸化二塩素 (Cl2O) 、四酸化二塩素 (Cl2O4) 、六酸化二塩素 (Cl2O6) 、七酸化二塩素 (Cl2O7) などがあります。ほかにも、ClO2を熱分解して生じるラジカルであるClOや、ClO3の熱分解によって生じる短寿命のラジカルのClO4なども存在します。ClO2を-78°Cで光分解して生じる固体のCl2O3は、O-Cl-ClO2だと考えられています。

参考文献
参照SDS
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0873.html

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