ヨウ化銅

ヨウ化銅とは

ヨウ化銅 (英: Copper iodide) は、白色または淡い褐色・灰色をした無臭の粉末や塊状の無機化合物です。

化学式はCuIで表され、分子量は190.45です。市販品には微量の不純物が含まれることがあり、わずかに着色している場合があります。CAS登録番号は7681-65-4で、「ヨウ化第一銅」とも呼ばれます。

ヨウ化銅は化学的に安定な物質です。特定の条件下で他の化学物質と反応しにくい性質を持っています。そのため、電子材料や触媒などさまざまな分野で使用されています。

ヨウ化銅の使用用途

主な使用用途は以下のとおりです。

1. 電子材料

無機P型半導体の材料として用いられます。半導体には、電子が移動するN型半導体と、ホール (電子が抜けた空間) が移動するP型半導体があります。ヨウ化銅は、この無機P型半導体の材料として優れた特性を持ち、電子材料として広い分野での利用が可能です。

また、透明導電性材料としての研究も進められ、薄膜トランジスタや太陽電池の電極材料としての応用が期待されています。

2. 有機合成試薬

有機合成化学分野では、触媒やヨウ素化試薬として利用されています。触媒や助触媒としては、薗頭カップリングやウルマン反応などのクロスカップリング反応が代表的です。また、ヨウ化ナトリウムと同様に、臭化アリールをヨウ化アリールに変換する反応にも使用されます。

クロスカップリング反応における高い反応性を示すヨウ化アリールは、産業的にも重要です。さらに、一部の医薬品合成プロセスにも関与し、特定の有機化合物の反応性を向上させる役割を担っています。

ヨウ化銅の性質

ヨウ化銅には以下のような物理的・化学的特性があります。

  • 融点 / 凝固点: 605℃
  • 密度: 5.62 g/cm³
  • 水への溶解性: ほとんど溶けない
  • エタノールへの溶解性: ほとんど溶けない
  • 酸への溶解性: 硝酸塩酸を含む混液には徐々に溶ける

常温では固体の状態を維持し、化学的に安定しています。また、湿気や光に長期間さらされると性質が変化する可能性があるため、適切な保管環境が求められます。

ヨウ化銅の構造

ヨウ化銅は、温度によって異なる結晶構造を持ちます。

  • 390℃以下: 閃亜鉛鉱型構造 (γ-CuI)
  • 390~440℃: ウルツ鉱型構造 (β-CuI)
  • 440℃以上: 塩化ナトリウム型構造 (α-CuI)

構造変化が起こることを踏まえ、用途ごとに適した結晶構造を選択する必要があります。

ヨウ化銅のその他情報

1. 製造方法

ヨウ化銅は、以下の方法で合成されますが、一般的には次の2つの方法が用いられます。

水にはほとんど溶けませんが、NaIやKIの存在下ではイオン化し、部分的に溶解します。この特性を利用し、水で希釈して高純度の無色ヨウ化銅を析出させる精製法が採用されています。

2. 法規制

ヨウ化銅は、以下の法規制の対象となっています。

  • 毒物及び劇物取締法: 劇物 (包装等級3)
  • 労働安全衛生法: 名称等を表示すべき危険物及び有害物 (No. 379, 606)
  • 水質汚濁防止法: 指定物質
  • 大気汚染防止法: 有害大気汚染物質

3. 取り扱い及び保管方法

安全に取り扱うためには、以下の点に注意してください。

  • 容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に施錠して保管する。
  • 環境への放出を避け、使用後の容器や残留物は適切に廃棄する。
  • 使用時には保護手袋や保護眼鏡を着用する。
  • 皮膚や眼に付着した場合は、大量の水で洗浄する。
  • 誤って飲み込んだ場合は、すぐに口をすすぎ、異常を感じた場合は医師に相談する。

適切な取り扱いと保管を行えば、安全にヨウ化銅を使用できます。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-1097JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_7681-65-4.html

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