ヨウ化ナトリウム

ヨウ化ナトリウムとは

ヨウ化ナトリウムとは、白色の結晶性粉末もしくは粉末又は顆粒で無臭の無機化合物です。

化学式NaI、分子量149.89、CAS登録番号7681-82-5、融点/凝固点 661℃で、水には極めて溶けやすく、エタノールにも溶けやすい性質を持っています。国内法規上の適用法令は、労働安全衛生法で「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物No. 606」に指定されています。

ヨウ化ナトリウムの使用用途

ヨウ化ナトリウムは、ハロゲン交換反応 (フィンケルシュタイン反応) の反応剤として、有機ヨウ素化合物の合成に用いられます。また、放射線のシンチレーション検出や、医療分野ではヨード欠乏症の治療など、使用用途は幅広いです。

ヨウ化ナトリウムは動物に不可欠な栄養素として、家畜用飼料の成分としても重要な役割を担っています。

1. 医療

ヨウ化ナトリウムは、ヨード欠乏症の治療と予防のために使われます。ヨード欠乏症とは、要素の欠乏を原因とする疾病の総称です。ヨウ素が欠乏すると、甲状腺ホルモンの分泌に必要なヨウ素をより多く取り込もうとして甲状腺が腫大したり (甲状腺腫) 、甲状腺の機能低下によって甲状腺ホルモンがほとんど分泌されなくなったり (甲状腺機能低下症) します。

また、ヨウ化ナトリウムは、原発事故時の放射性ヨウ素の吸収を防ぐための甲状腺遮断剤としても使用されています。

2. シンチレーション検出 

ヨウ化ナトリウムは、放射線が当たることによって蛍光を示す性質を持つため、ガンマ線検出用シンチレータ材料として広く使用されています。ガンマ線がヨウ化ナトリウムの結晶と相互作用するとシンチレーション光が発生し、これを検出・分析することで、ガンマ線のエネルギーと放射方向を特定することが可能です。

3. 動物栄養学

ヨウ化ナトリウムは、動物の健康に不可欠な栄養素であり、一般的に家畜の飼料補助食品として使用されています。甲状腺機能の調整に役立ち、成長と生殖能力を向上させることができます。

ヨウ化ナトリウムの性質

ヨウ化ナトリウムは白色の結晶性固体で、密度は3.67 g/cm³です。融点は661℃、沸点は1,304℃です。ヨウ化ナトリウムは塩化ナトリウム (NaCl) よりも水に溶けやすく、塩味を持ちます。

また、吸湿性があり、空気中の酸素や二酸化炭素と反応して容易に劣化するため、密封された容器中での保存が必要です。ヨウ化ナトリウムは1.77という高い屈折率を持っています。

加えて、放射線が当たることによって蛍光を示す性質を持つため、ガンマ線を検出するためのシンチレーター材料として活用されます。

ヨウ化ナトリウムの構造

ヨウ化ナトリウムは化学式NaIで表され、ナトリウムとヨウ素から構成されるイオン化合物です。ヨウ化ナトリウムの結晶構造は面心立方結晶構造で、1つのナトリウム陽イオン (Na+) は6つのヨウ化物陰イオン (I-) に、ヨウ化物陰イオン (I-) は6つのナトリウム陽イオン (Na+) に囲まれています。これは、ヨウ化セシウムに似た結晶構造です。

ヨウ化ナトリウムのその他情報

ヨウ化ナトリウムの製造方法

NaIは直接反応やメタセシス反応、固体反応など、いくつかの方法で製造することができます。最も一般的な方法は、水酸化ナトリウム (NaOH) または炭酸ナトリウム (Na2CO3) を反応させる方法です。この反応により、水または水と二酸化炭素が生成され、ヨウ化ナトリウムが得られます。

具体的な反応工程としては、水酸化ナトリウムあるいは炭酸ナトリウムの水溶液に対し、ヨウ素を加えます。この反応により、ヨウ化ナトリウムが生成され、水酸化水素が放出されます。

NaOH + HI → NaI + H2O
Na2CO3 + HI → NaI + H2O + CO2

そのほか、電気分解法や金属ナトリウムとヨウ素を反応させる方法もあります。しかし、これらの方法は一般的ではありません。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0227JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_7681-82-5.html

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