マロン酸

マロン酸とは

マロン酸の基本情報図1. マロン酸の基本情報

マロン酸とは、カルボキシ基 (-COOH) を2つ持ったジカルボン酸の一種です。

塩の場合には、マロナートもしくはマロネート (英: malonates) と呼びます。マロンの名称は、ギリシア語のリンゴに由来します。マロン酸のCAS登録番号は141-82-2です。

国内法規上の適用法令は特になく、安全に保管するため直射日光を避け、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管する必要があります。また、安全な容器包装材料としてガラスが指定されています。

マロン酸の使用用途

マロン酸はリンゴに含まれていたことから、医療分野などで香料として使用されています。その他、カルボキシ基という官能基を持っていることから、合成樹脂や接着剤のような分野で、原料としても使われています。

マロン酸の性質

マロン酸は白色もしくはほとんど白色の結晶あるいは結晶性粉末です。マロン酸の融点は135℃であり、常温常圧では固体です。

ただし、融点よりも少し高温まで熱すると、熱分解して酢酸二酸化炭素になります。また、マロン酸は、水、エタノールアセトンなどに溶けます。

マロン酸の構造

マロン酸の化学式は、HOOCCH2COOH、分子量は104.06です。マロン酸は酢酸-マロン酸経路を構成するための物質の一つです。

マロン酸のジエステルは、活性メチレン化合物であり、塩基によりメチレンプロトンが引き抜かれて、容易にカルバニオンを生成します。そのため、炭素-炭素結合の形成に用いられています。

マロン酸のその他情報

1. 生化学におけるマロン酸

コハク酸の構造

図2. コハク酸の構造

マロン酸の構造は、コハク酸 (HOOC-(CH2)2-COOH) によく似ているため、生物体内のクエン酸回路において、コハク酸デヒドロゲナーゼ (英: succinate dehydrogenase) の活性部位に誤って結合してしまいます。したがって、マロン酸は本来の基質であるコハク酸の代謝を阻害するため、細胞呼吸を妨害します。

2. 病理学におけるマロン酸

マロン酸値の上昇に、メチルマロン酸値の上昇が伴う場合には、複合マロン酸およびメチルマロン酸尿合併症 (英: Combined malonic and methylmalonic aciduria) という代謝性疾患の可能性があります。血漿中に存在するマロン酸とメチルマロン酸の比率を計算して、古典的なメチルマロン酸尿症と区別することが可能です。

3. マロン酸エステル合成の利点

マロン酸エステル合成 (英: malonic ester synthesis) とは、マロン酸のエステルから発生したカルバニオンを用いて、α-置換酢酸エステルを得る方法です。この反応でマロン酸エステルは、酢酸エステルのα-アニオン (ROC(=O)CH2−) の合成等価体として働いています。

もし、酢酸エステルやアセトンに強塩基を作用させて、安定したカルバニオンが生成できれば、ハロゲン化アルキルとのカップリングによって、同様の生成物を得ることが可能です。しかし、この手法ではアルドール縮合やクライゼン縮合といった副反応を併発する可能性があります。よってマロン酸エステル合成は、必ずしも強い酸や塩基が必要なく、C-C結合を作れるという点で、合成上の利点があります。

4. マロン酸エステル合成のメカニズム

マロン酸エステル合成のメカニズム

図3. マロン酸エステル合成のメカニズム

マロン酸エステル合成では、まずマロン酸エステルに塩基を加えて、カルバニオンを発生させます。生成したカルバニオンは、2個のカルボニル基と共鳴するため、大きな安定化効果を受けています。

このカルバニオンにハロゲン化アルキル (R-X) を作用させて、必要に応じて希酸で処理することで、加水分解と脱炭酸が容易に起こり、α-置換エステルを得ることが可能です。

マロン酸エステル合成によく似た手法として、アセト酢酸エステル合成もあります。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-0058JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_141-82-2.html

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