塩化亜鉛

塩化亜鉛とは

塩化亜鉛とは、化学式ZnCl2で表され、亜鉛塩素からなる無機化合物です。

1648年に、ドイツのJ. R. グラウバーによって世界で初めて合成されました。モル質量は136.32g/mol、密度は2.91g/cm3、融点は275℃、CAS番号は7646-85-7です。

塩化亜鉛には無水物の他に数種の水和物が存在しており、それらはセ氏28℃以下で形成されます。

塩化亜鉛の使用用途

1. めっき処理

塩化亜鉛は、亜鉛めっき処理に用いられています。亜鉛めっきに使用される浴種のうち、塩化亜鉛浴を用いた場合、亜鉛めっきの難しい素材 (鋳物、高炭素鋼) にもめっきをすることができます。

亜鉛めっきは、防さび効果が高く主に鉄製品に対して処理を行いますが、これは亜鉛メッキ上に不動態膜が生成されるためです。亜鉛は鉄よりもイオン化傾向が高いので、めっき皮膜に穴が開いて通常なら鉄がさびてしまう状態になっても、亜鉛が代わりに酸化されて素地のさびを防ぎ、高い防食効果を得ることが出来ます。これを犠牲防食といい、亜鉛がめっきに使われる際の長所です。

2. 医薬品

塩化亜鉛は、血管や粘膜・皮膚組織を収縮させる、いわゆる収れん作用を持っています。したがって、医療分野では、鼻咽腔炎や上咽頭炎の治療に低濃度の塩化亜鉛溶液が用いられています。また、口臭を防ぐ効果もあるため、口内洗浄液や歯磨き剤に配合されています。

3. はんだ付け

塩化亜鉛は、はんだ付けの際の融剤としても用いられます。理由として、塩化亜鉛の水溶液が加水分解されると酸性を示すために、金属酸化物を溶かしやすいことと、はんだ付けの温度では蒸発しないことが挙げられます。

 

そのほか、木材の防腐剤、乾電池の材料、低温時に使用する寒剤なども用途の1つです。

塩化亜鉛の性質

塩化亜鉛は、常温常圧においては白色の結晶粉末の状態です。潮解性を有しており、水との親和性が非常に高いため、水に極めてよく溶け、エタノールアセトン、エーテルなどの有機溶媒にも溶けやすいです。

塩化亜鉛は、強酸である塩酸と弱塩基である水酸化亜鉛の塩ととらえることができるので、水に溶かすとpHがおよそ4の弱酸性の水溶液となります。

塩化亜鉛の粉末 (ヒューム) は有毒であり、目や皮膚、肺などに刺激性を持っています。大量に吸い込んでしまうと血液中の酸素濃度低下からなるチアノーゼを引き起こしてしまう可能性があります。そのため、取り扱う際には粉末を吸い込んだり接触したりしないように保護メガネやマスクを着用し、取り扱いに注意が必要です。

塩化亜鉛の構造

通常の塩化亜鉛無水物は、塩素が六方細密構造の直方晶系の構造、亜鉛が塩素が形成する正四面体の空孔に位置するといった構造です。しかし、過剰な塩素が存在する場合や濃度の高い溶液では、亜鉛に四面体型に塩素が配位した[ZnCl4]2-構造も見られます。

また、塩化亜鉛は28 ℃以下で水和物を形成することが知られています。28 ℃で1.5水和物、11.5 ℃で2.5水和物、6 ℃で3水和物、−30 ℃で4水和物をそれぞれ形成することが特徴です。

固体の塩化亜鉛はβ型の結晶が最も安定ですが、高温で溶融した塩化亜鉛はα、β、γのいずれの型でもないことが示されています。

塩化亜鉛のその他情報

塩化亜鉛の製法

塩化亜鉛は、金属亜鉛に塩酸を反応させることで得ることができます。この反応では、1分子の亜鉛と2分子の塩酸が反応し、1分子の塩化亜鉛と1分子の水素が発生します。工業的には、金属亜鉛と気体の塩化水素を反応させることで製造しています。

電炉ダストから精製塩化亜鉛や高純度亜鉛を得るためのリサイクル工程では、粗酸化亜鉛に塩素ガスを作用させて塩化亜鉛を生成します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0566.html

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