リン酸亜鉛とは
リン酸亜鉛とは、化学式Zn3 (PO4) 2で表される化合物であり、亜鉛のリン酸塩です。
一般に無水物と四水和物の形で取り扱われています。別名は、ビスオルトリン酸三亜鉛、ピグメントホワイト32、リン酸三亜鉛です。リン酸亜鉛は、GHS分類において、生殖毒性、特定標的臓器毒性 (反復ばく露) 、水生環境有害性が認められています。
なお、リン酸亜鉛の法規制は、無水物、四水和物とともに毒物・劇物取締法において劇物に指定されています。
リン酸亜鉛の使用用途
1. リン酸亜鉛処理
リン酸亜鉛の使用用途として、亜鉛メッキや鋼材に対するリン酸亜鉛処理が挙げられます。リン酸亜鉛処理とは、鋼材などの金属表面に金属塩の皮膜を生成させる技術です。
リン酸亜鉛処理を行うことで、錆の生成防止、塗装塗膜の剥離防止などに効果があります。他のリン酸塩を用いた処理と比較して処理温度が低く、作業性が優れているのが利点です。
塗装下地として優れた性能を持つことから、特に高い耐食性が求められる自動車の塗装など、多くの工業用途に用いられている処理方法です。
2. 顔料
リン酸亜鉛は、防錆顔料として鉛やクロム系の顔料の代替として使用されており、現在では使用量が最も多い防錆顔料です。
比較的安定な物質で、塗料化した際の貯蔵安定性がよく、他の塗料よりも高濃度で使用することが可能です。また、中和作用が働いて酸性の腐食イオンを不活性化する効果があります。
各種溶剤系塗料の他、油性塗料、水溶性塗料、エマルジョン塗料など幅広く利用されています。
リン酸亜鉛の性質
リン酸亜鉛は、分子量386.13、CAS番号 7779-90-0で表される白色、無臭の個体です。融点は900℃以上で、引火点、沸点に関する情報はありません。水およびアルコールに不溶で、希鉱酸、酢酸、アンモニア、水酸化アルカリ溶液に可溶です。
混触危険物質、危険有害反応可能性、危険有害な分解生成物に関する情報はなく、比較的安定しています。
リン酸亜鉛のその他情報
1. 安全性
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑いがあり、長期にわたる又は反復ばく露により血液系の障害が生じる恐れがあります。水生生物に非常に強い毒性があり、長期継続的影響によっても非常に強い毒性があります。
毒物及び劇物取締法において劇物に指定されています。取り扱い時は、購入した製品のSDS等の取り扱い情報の確認が必要です。
2. 応急処置
吸引、皮膚に付着した場合、眼に入った場合、飲み込んだ場合は、直ちに医師の診断および手当を受ける必要があります。漏出物は、保護具を着用し速やかに回収します。
肝傷害、分泌反応 (紅涙、流涙、流涎、鼻の分泌物) 、呼吸器症状などが発生した場合は、徴候症状の可能性が高いため特に注意が必要です。必要に応じて医師の診断を受けます。
3. 取扱方法
使用者は、保護眼鏡やゴーグルを着用し、必要に応じて保護マスクや呼吸用保護具、耐劣化性、耐透過性の保護手袋を着用します。また、大量に取り扱う際や、飛散する可能性がある場合は、保護衣、保護エプロン等を着用します。
作業場には、洗眼器と安全シャワーの設置が必要です。ばく露を防止するため、取り扱い場所の密閉化、または防爆対応の局所排気装置を設置します。
作業中は、飲食、喫煙を避け、作業後は手をよく洗います。粉じん、煙、ガス、ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないように注意が必要です。
4. 保管
破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用し、施錠して保管します。廃棄時は、関連法規ならびに地方自治体の基準に従い、許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体が処理を行っている場合には、委託して処理します。委託する場合は、処理業者等に危険性、有害性の十分な告知が必要です。
漏出時は、環境中に放出しないよう適切な処置を行います。作業者は適切な保護具を着用し、物質を密閉式容器内に掃き入れ、残留物は注意深く集め、安全な場所に移動させます。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7779-90-0.html