一酸化ケイ素とは
一酸化ケイ素 (英: Silicon monoxide) とは、組成式がSiOで表される化合物です。
星間分子として検出でき、宇宙には酸化ケイ素として多量に存在すると考えられています。分子雲同士の衝突などによる衝撃波が生じた場所で、星間分子として見つかっています。
一般的に販売されている固体の一酸化ケイ素は、近年の研究によって、ケイ素と二酸化ケイ素の混合物だと明らかになりました。一酸化ケイ素は消防法や労働安全衛生法などの国内法規によって指定されていません。
一酸化ケイ素の使用用途
一酸化ケイ素はリチウムイオン二次電池の負極材料として注目されています。一酸化ケイ素を負極材料として用いると、従来のケイ素系負極材料であるケイ素などと比べて放電時の体積膨張率が低く、高容量の電池として繰り返し利用可能です。
一酸化ケイ素をリチウムイオン二次電池の負極材料として利用するため、一酸化ケイ素を炭素と均一に混ぜる、一酸化ケイ素を炭素でコーティングするなどの研究が進められています。
一酸化ケイ素の性質
一酸化ケイ素は気体で二原子分子として存在し、急速に冷えると茶色や黒のアモルファス固体を形成します。融点は1,702°Cで、沸点は1,880°Cです。ケイ素の酸化数は+2です。
一酸化ケイ素は、すぐにケイ素と二酸化ケイ素に不均化します。室温で空気によって容易に酸化して、材料を酸化から保護するSiO2表面層を与えます。
一酸化ケイ素の固体は黄褐色で、電気や熱の絶縁体です。固体は酸素中で燃焼します。水によって分解し、水素を放出します。温かい水酸化アルカリやフッ化水素酸に可溶です。一酸化ケイ素の燃焼熱は、ケイ素と二酸化ケイ素の平衡混合物の燃焼熱よりも200〜800カロリー高いと報告されており、一酸化ケイ素が混合物とは異なる化合物である証拠です。
一酸化ケイ素の構造
一酸化ケイ素のモル質量は44.0849g/molで、密度は2.13g/cm3です。ケイ素原子と酸素原子が1:1の割合で結合している化合物です。2016年に一酸化ケイ素はケイ素と同様の構造を取る部分と、二酸化ケイ素と同様の構造を取る部分で構成されることが明らかになりました。
ヘリウムで冷却するとアルゴンマトリックスに一酸化ケイ素がトラップされます。Si-O結合長は148.9pmであり、二酸化ケイ素の結合長に近く、一酸化炭素に見られる三重結合性は確認されません。
一酸化ケイ素の2〜4量体は、(Si-O)nと表される環状構造を有し、Si-Si結合を持っています。(Si-O)nは400〜800°Cでは数時間で、1,000〜1,440°Cでは急速に不可逆的にSiとSiO2へ不均化します。
一酸化ケイ素のその他情報
1. 一酸化ケイ素の合成法
1887年に初めてチャールズ・F・メイベリー (英: Charles F. Maybery) によって、シリカを木炭で還元するとガラス質の光沢を持つ一酸化ケイ素が形成されました。
ケイ素と二酸化ケイ素を熱すると、気体の一酸化ケイ素が生じます。原料の二酸化ケイ素は、鉱物や鉱石から分離可能です。
高温で二酸化ケイ素を一酸化炭素や水素分子で還元しても、一酸化ケイ素は得られます。
2. 一酸化ケイ素の反応
塩素分子やフッ素分子とともに一酸化ケイ素を濃縮して、光を当てると、平面状分子のOSiCl2やOSiF2と直線状分子であるOSiSが生成します。OSiCl2のSi-O結合長は149pmであり、OSiF2のSi-O結合長は148pmです。OSiSのSi-O結合長は149pmで、Si-Sは190pmです。
マイクロ波放電によって、濃縮した一酸化ケイ素と酸素原子から二酸化ケイ素が生成します。二酸化ケイ素は直線状の構造を有します。
アルミニウム、ナトリウム、パラジウム、金、銀などの共沈殿によって、さまざまな三原子分子を合成可能です。具体例として、PdSiOやAlSiOのような直線状の三原子分子だけでなく、AgSiOやAuSiOのような非直線状の三原子分子のほか、NaSiOなどの環状の三原子分子が挙げられます。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0561JGHEJP.pdf