フタル酸ジブチル

フタル酸ジブチルとは

フタル酸ジブチル (Dibutyl phthalate) とは、有機化合物の1つで、化学式C16H22O4で表されるエステル化合物です。

別名には、「ジブタン-1-イル=フタラート」「DBP」「フタル酸ジn-ブチル」「フタル酸ブチル」「フタル酸n-ブチル」「n-ブチルフタラート」「フタル酸ジブチルエステル」などの名称があります。CAS登録番号は、84-74-2です。

可塑剤として広く使用されている物質であり、接着剤や印刷インクの添加剤としても利用されています。

フタル酸ジブチルの使用用途

フタル酸ジブチルは、ポリ塩化ビニルポリスチレンおよびアクリル系樹脂の可塑剤として用いられている物質です。また、その他の用途としては、ラッカー接着剤、印刷インク、顔料、セロファン、染料の添加剤、および織物用潤滑油などが挙げられます。

合成的にも広く利用されている物質であり、フタル酸ジブチルは、角質溶解薬、殺菌薬、制瀉薬、抗寄生虫薬などの医薬品の原料です。また、化粧品に配合する香料、溶剤としても用いられています。植物成長調整剤、農薬の補助剤、醸造工程における添加剤などの用途もあります。

フタル酸ジブチルの性質

フタル酸ジブチルの基本情報

図1. フタル酸ジブチルの基本情報

フタル酸ジブチルは、分子量278.35、融点-35℃、沸点340℃であり、常温においては無色から黄色の芳香のある粘ちょう液体です。特徴的な臭気があります。密度は1.05g/mLで、アルコール、エーテルあるいはベンゼンなど様々な有機溶媒に溶解する一方、水にはほとんど溶けない物質です。水への溶解度は、10mg/L (25℃) です。

フタル酸ジブチルの種類

フタル酸ジブチルは、主に研究開発用試薬製品や工業用薬品として販売されています。試薬製品としては、25mL、100mL、500mL、1L、2.5L、4Lなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量を中心として提供されており、通常、室温で保管可能な試薬製品です。有機合成原料、高沸点溶剤、合成樹脂可塑剤などの用途で用いられます。

工業用薬品としては、主に可塑剤製品として販売されています。DBPの名前で表記されることも多く、可塑化効率、加工性に大変優れた可塑剤です。主に塗料、接着剤、ゴム製品などの用途を対象としています。

フタル酸ジブチルのその他情報

1. フタル酸ジブチルの合成

フタル酸ジブチルの合成

図2. フタル酸ジブチルの合成

フタル酸ジブチルは、n-ブタノールと無水フタル酸のエステル化反応により製造されます。

2. フタル酸ジブチルの分解

フタル酸ジブチルの加水分解 (上) とフタル酸モノブチルの構造 (下)

図3. フタル酸ジブチルの加水分解 (上) とフタル酸モノブチルの構造 (下)

フタル酸ジブチルは、加水分解によってn-ブタノールとフタル酸に分解されます。通常、生体内における主要な代謝物はフタル酸モノブチルです。

強酸化剤、強酸と反応し、 燃焼によって一酸化炭素、二酸化炭素などが生成します。保管においては、強酸、強酸化剤、強塩基との混触を避け、高温条件を避けるべきとされます。

3. フタル酸ジブチルの安全性情報

フタル酸ジブチルは、 引火点174℃であり、引火性のある物質です。そのため、消防法では、第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体に指定されています。

また、有害性として、下記の症状が確認されています。

  • アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
  • 呼吸器への刺激のおそれ
  • 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
  • 長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
  • 水生生物に非常に強い毒性

労働安全衛生法において、名称等を表示すべき危険有害物、リスクアセスメントを実施すべき危険有害物、に指定されています。PRTR法においては、第1種指定化学物質に指定されている物質です。

大気汚染防止法では有害大気汚染物質に指定されており、海洋汚染防止法では 有害液体物質に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/84-74-2.html

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